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アゴ A GO GO (ショート・ストーリー)

Long long ago あるところに大層アゴの長い男がいました。


 男のあだ名は 「チョーチン」 です。「長いアゴ(Chin)」 もじってつけられた名前で、男はそれをとても気に入っていました。


 男は大した取り柄もなく、無職でしたが、目立つアゴのおかげで村の人気者だったのです。

 ところがある日、男に思いがけない不幸が訪れました。なんと男の家の隣に、男よりもさらに長いアゴを持った老人が引っ越してきたのです。

「ま、負けた……」
 
 男はうなだれました。

 自慢のアゴも、氷柱のように伸びた老人のアゴにはさすがに見劣りします。











投稿者:クロノイチ





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[ 2019/11/20 15:42 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

BARの片隅で (詩)

冷えきった体を彷徨う夜の街

BARの重い扉を開けると

暖かい笑顔のマスターが出迎える


停まり木に座り 「ホット・ラム」 とオーダーする

「ダークで?」


マイヤーズに手を伸ばすマスターに

「いや、今夜は白いので」


ヤカンに火を着けロンリコを注いでくれる

やがて湯気がともる銀色の取手がついたタンブラーが運ばれ

俺は一息をつく


木のぬくもりのするBARの片隅で














投稿者:Nao

(初出:2008/02/17 )





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[ 2019/11/18 18:09 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(11)

明晰夢 その3 (ショート・ストーリー)

夢のコラボ


 我が街には時々ヒーローがやってくる。

 
 数年前からのことなのだが、あたしの住む街にこのところ頻繁に凶悪な怪獣が出現するようになった。だいたい一週間に一度は異なる怪獣が現れて大暴れする。
 
 自衛隊も歯が立たない怪獣ばかりだ。当然避難勧告も出た。でも誰も避難せずに、束の間の平和を楽しんでいる。
 
 ヒーローがやって来て、たちどころに退治してくれるとわかっているからだ。

 
 ヒーローは、カッコいいマスクの細マッチョな銀色の巨人で、人間の味方である。我々をいかなる怪獣の脅威からも守ってくれる神のような存在だ。











投稿者:クロノイチ





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[ 2019/11/14 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(1)

ツッコミどころ多数 (ショート・ストーリー)

弟の好きな特撮戦隊ヒーロー番組が先週最終回を迎えた。
 
 
 と、思ったら今週また似たりよったりの新番組が始まる。どんなヒーローか知らないが、どうせあたしには見分けが付かないレベル。


 内容もきっとワンパターンである。
 
 弟はよく飽きずに見続けられるものだ。
 
 そんなことを弟に言ったら、「歳とったんだよ」 と笑われた。 いやいや、あんたが幼稚なんだよ。

「まあ、第一話だけ付き合って見てくれ。事前の情報じゃ、今年のはちょっと色合いが違うそうだぜ」

「焦げ茶色とか橙色とか出てくるの?」

「そういう意味の色合いじゃないけどな。ま、色物ってことだ」











投稿者:クロノイチ





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[ 2019/11/09 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

松竹梅 (ショート・ストーリー)

俺の家にはスライムが住み着いている。


 スライムといっても、粘液状のおどろおどろしい人食いスライムではない。姿形はドラゴンクエストのスライムに瓜二つである。


 しかも青い。なかなか愉快な表情をしていて、人懐こく、悪さもしないので、敢えてどこにも通報しないで家に置いてやっている。

 ちなみに名前は、ドラゴンクエストのモンスターに似ていることから、「ドラクエのモンスター」を略して 「ドラエモン」 とした。

 青い体色にピッタリのネーミングである。

ちょっと危ない名前だが、「えもん」 がカタカナということに免じて許していただきたいと思う。












投稿者:クロノイチ





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[ 2019/11/06 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

明晰夢 その2 (ショート・ストーリー)

真っ暗だ。


 ── わかってる。これは夢だ。


 あたしの夢は、いつも真っ暗な空間に一人ぼっちの状態から始まる。
 

 弟が言っていた。これは明晰夢なのだと。 

 夢の中で 「これは夢だ」 と気付けば、あとは自分の意志次第で自由に夢の内容を作り替えることができると。

 でも、あたしの場合、今まで一度だって思い通りの夢を見られた試しがない。
 
 
 いつまでも真っ暗なところにいるのも嫌なので、こう念じてみる。

「光あれ!」












投稿者:クロノイチ





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[ 2019/11/03 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(3)

仮装現実 (ショート・ストーリー)

テレビを見ていた弟が不意にあたしに訊ねてきた。


「なあ、ハロウィンって何だ?」


「あんた、あたしにはすぐ 『検索しろ』 っていうくせに、自分には甘いのね」

「まあ、そう言うな。今、手元にスマホがないんだ。あのカボチャのお化けがハロウィンなのか?」
 
 弟が画面に映ったぬいぐるみを指差す。

「馬鹿ね。あれはジャック・オー・ランタンっていうの」

「ジャック・オランウータン? サルなのか?」
 
 ボケているのかマジなのか悩む。











投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/30 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(4)

回転寿司 (ショート・ストーリー)

姉ちゃんが悔しがっていた。


 町の商店街でくじ引きキャンペーンがあったのだが、よりによって一等が当たってしまったのだという。

 
 一等なのになぜ悔しがらなければならないのか。それは、このくじが当たりの等級に応じて、買い物をした金額の何割かが現金で還ってくるタイプのものだったからだ。

 一等はなんと十割が還元される。つまり買った商品がタダになるということ。なのに姉ちゃんは、肉屋でしゃぶしゃぶ用の牛もも肉と豚こま切れ肉とで迷った末に豚こま切れ肉を買い、トンカツとコロッケとで悩んだ挙句にコロッケを選んでしまったのだ。

 これは俺でも悔しい。 姉ちゃん、気持ちはわかるよ。











投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/28 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

おやつ (ショート・ストーリー)

戸棚に賞味期限切れ直後のお茶菓子があったので、弟の部屋に 「おやつ」 として持っていく。


 大丈夫。 弟ならばたとえ賞味期限を一週間過ぎていたとしても、お腹をこわすことなどない。


「ヤツよ」
 
 あたしはわざと嫌そうにそう言うと、おやつの皿をお盆ごと手渡した。
 
 弟が 「おやつのことはヤツと呼べ」 としつこいもんで、まあ、そのくらいならいいかと思いながらも、言いなりになるのも癪に障るんで、ついこんな感じに。

「サンキュ。ヤツも随分と丸くなったもんだな」
 
 ただのまんじゅうである。











投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/26 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

天狗の酒盛り (ショート・ストーリー)

とある山奥。 天を衝くような檜の大木の上で、大天狗が大勢のカラス天狗達と酒盛りをしていた。


「ささ、大天狗様」

「うむ」

「どうぞ。もう一杯」

「うむ」

 大天狗はカラス天狗達から注がれる酒を次から次へと飲み干していく。
 
 そのうち、すっかり酔いが回った大天狗は、威厳も何もなく与太話に興じ始めた。

「わしは 『大天狗様』 と呼ばれるのはもう飽き飽きしておるのじゃ。かといって人間みたいに他に本名があるわけでもなし。何かわしに相応しい呼び名はないかのう」













投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/24 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

オシドリ夫婦 (ショート・ストーリー)

最近、近所の山田さんの奥さんの姿を見ない。

 
 通りがかりに山田さんちの庭を覗くと、雑草が生い茂っていて手入れされている様子がなかった。


 旦那さんは、出勤する姿をよく見かけるので引っ越したわけではない。となると、奥さんに何かあったのだろう。

 不思議と地元の事情に詳しい弟に訊ねてみた。

「ねえ、四つ角の山田さんの奥さん、どうかしたのかな?」

「あれ、知らなかったん? あの人、家、出てったってよ」

「ええっ! どうして?」











投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/22 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

悪魔が来りて・・・ (ショート・ストーリー)

臨時収入が入ったので、ちょっと高級なお惣菜を買おうと思って近所のデパ地下に行った。

 あれ?


 なぜか弟がついて来る。

「どうしたのよ」

「こないだ、宿題手伝ってもらったし、メシでもおごってやろうと思ってな」

 ありえない。この弟に限っては。絶対に何か魂胆があるはずである。

「別に気を遣わなくたっていいわよ」

「そう言わずにおごらせてくれ。こっちの気が済まないんだ」

 怪しすぎる。だが狙いが今一つはっきりしない。

あたしは敢えて火中の栗を拾ってみることにした。











投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/20 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

生徒会長選挙 (ショート・ストーリー)

ちょっとだけ昔の話をしよう。

 
 俺は、かつて生徒会長選挙に立候補したことがある。忘れもしない一年生の二学期。


 誕生日が四月一日という超早生まれの俺は、史上最年少生徒会長を誕生させようという面白がりの友人たちによってたかって説得され、強引に出馬させられた。

 そこには学校生活を良くしようとか、行事を成功させようといったポリシーや目標は何一つない。

 あるのは、面白くさえあればそれでいいという無責任なスタンスだけだった。












投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/18 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

一生のお願い (ショート・ストーリー)

いきなり、弟が土下座してきて言った。


「頼む、姉ちゃん。一生のお願いだから」

 
 またか、と思う。あたしの身の回りには、このフレーズを使う者がやたらと多い。弟もその一人である。
 
 しかも、頼みごとがあるたびに口癖のようにそれを発するのだ。うっとうしいことこの上ない。

 そもそも 「一生のお願い」 とは何なのか。

 よく考えると日本語になっていないと思う。












投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/16 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

バザー (ショート・ストーリー)

今日は、弟の学校の学園祭の日である。

 
 学校のどこかには弟の下手くそな作品が飾られているはずだが、あいにく、あたしはそんなもの見たいともなんとも思わない。

 
 あたしは脇目もふらずに 「不用品バザー会場」 に飛び込み、お値打ち品を買いあさった。

 ブランド物のゴージャスな洋食器セットが三百円。果物の缶詰の特大詰め合わせが百五十円。サラダ油のジャンボペットボトル、五十円。それと、ドラゴンの形をした卓上型ライターが十円。

 この竜ライター、ちょっと古いけど太陽に向かって吠えそうな感じでなかなかカッコいい。













投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/14 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

コウジョウの月 (ショート・ストーリー)

弟がなぜか不貞腐れていた。


「明日から、『学力向上がんばろう月間』だとよ」

 
  ああ、それで気分が滅入っているのか。

「この機会にせいぜい頑張ることね」

「そりゃ、まあ、課題をやらなきゃ家に帰さないってんだから、やるけどさ」

 何やら含みのある物言いである。














投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/12 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

残照 (短歌)

照りつける 日差しが熱い 半ズボン

愛しき季節 また夏が去る








*台風の北上に伴ってというか、10月に入ってからの気温が30度越え。

 照りつける太陽が、半ズボンからはみ出している足首をチリチリと焼き付ける。

 夏が大好きな僕にとって、過ぎ去っていった夏が、もう一度やってきた気分。

 しっかし、その再度訪れた夏もまた去っていく、、、、  ああ、早く夏が来ないかなぁ、、、 来年の夏が待ち遠しい。


*タイトルの 「残照」 について

 大辞泉(小学館)には、日が沈んでからも雲などに照り映えて残っている光。夕日の光。残光。 類語 「余光(よこう)」 と掲載されている。

 また、日照時間の関係から、春・秋に現れることが多いといい、俳句の季語でも歳時記に正式に掲載されてはいないけれど、初秋の季語として使う人も多いらしい。

 
 僕は、初秋のイメージで 「残照」 とつけたのでは無くて、ニュアンスとしては 「余光」 に近い。夏が去った後に、また短いながらも夏がやってきたという感覚。。

 そして、副編集長のNaoさんが亡くなってから7年が経っても、彼の残した文章や詩が読者の皆さんに読み継がれている事実を重ね合わせてしまう。

 彼の闘病や禁煙日記などを、僕が10年以上続けている禁煙生活が破綻しそうになったら読み返していますし、迷作 『下男日記』 も何度も読み返して感慨にふけっている。(笑)

 雑誌の専門図書館 「大宅壮一文庫」 の運営でで有名な作家・評論家 大宅壮一 の長男で詩人の 大宅歩 がラグビーの負傷がもとで脳障害を起こして闘病中(33歳で死去) にノートに詩・文を残した 『ある永遠の序奏 詩と反逆と死』 を素材とした映画の題名が 『残照』(河崎義祐監督、三浦友和主演) ということも付け加えておく。












投稿者:庵祖兄





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[ 2019/10/10 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(15)

蒸気機関車に乗って上機嫌 (ショート・ストーリー)

なっちゃいない。全然なっちゃいない。 なんだ。このチラシは。

 
 俺は市合併十周年記念イベントのチラシを見て、心からがっかりした。


「蒸気機関車に乗って上機嫌で帰ろう」

 まず、このタイトルがダメだ。

 うまく語呂を合わせているつもりかもしれないが、言葉のテンポも悪いし、何よりも 「乗る」 ことより 「帰る」 ことが本当の目的みたいな印象を受けてしまう。


 すぐ下の小ネタが生きているだけに、なおさら残念である。












投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/08 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(5)

菓子の貸し (ショート・ストーリー)

弟は家に帰ってくるなり、死にそうな声でこう言った。


「腹、減った。姉ちゃん、なんか食べるもの、ないか?」

 
 結構ひもじそうである。部活動でエネルギーを使い果たしたのだろうか。

「あ、ちょっと待ってて」

 冷蔵庫と食品戸棚を調べてみる。

 ── あら、珍しくなんにもないわね。












投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/04 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(2)

明晰夢 その1 (ショート・ストーリー)

これは夢だ。 それははっきりしている。


 その割にはどこもかしこもやけにリアルなのだが、まあ、きっと話に聞く明晰夢というやつだろう。

 
 そうでないとおかしい。なんでこの俺が、カブトムシみたいな赤茶色のヨロイを着て、青白い光を放つ両刃の剣を振り回さなきゃならないんだ。

 それも頭にツノの生えたでっかいイノシシ相手に。

 
 夜、布団に入って普通に目覚めたらいきなりこうなっていた。











投稿者:クロノイチ





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[ 2019/10/01 23:00 ] Menu:05 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(3)