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別館 第六幕 『スター・トレック』 は、落ちそう(落下)で落ちない映画で、これ、わたすは面白いと思ったにゃ。

スター・トレック_ポスター


映画 『スタートレック』 は、上下位置というか、重力というか、「落ちる」 を意識させる映画ですた。


 子供の時のカークは、免許もないのに(たぶん)、叔父さんか誰かの車を運転しまくって、あげくの果てに、お巡りに追跡され、それを振り払うのに、車は落ちて(落下)しまうんだよね。


 平原に出てくる峡谷。ここで、スポックの母は、地割れた地面に堕ちていく。

 ところが、カークは、落ちていかない。


 落下するのと落下しないのとの差、みたいのが随所に散りばめられている。



 敵戦艦内での決闘で(なんで、敵船とはいえシップ内で、手すりすらない、危なっかしい通路がわざわざくまれているのだ?)落下しない。

 ネロが、バルカン星に放つブラックホール生成液注入のためのドリルに無事着陸する。(なんで、ドリルに近づくために、スカイハイをやる必要があるのだ?)


 落とす、という幾重にも組まれた試練(?)を無事カークだけがクリアする。


スポックの持つ 「理論」。

 理論は、科学だから、万人、誰でもが同じように結果に辿り着くことなのだが、落ちる者と落ちないカークと「差」は、万人誰でも同じではないから(スカイハイの失敗があるように)、決して同じ結果を導かない。


 カークが、どうして、勲章までもらって、キャプテンになれたかというと、この落ちない才能(?)が確かにあったことなのだけど、この、論理ではなく(だから学者なんかの、理詰めで証明されるような理論ではなく)、才能だってことをさりげなく言ってる。(とわたすは確信するのだが)


 このカークの優位性を、わたすたちに明らかにしてくれる映画 『スタートレック』 は、とても面白うございますた。




投稿者: 今井 政幸 


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別館 第五幕 映画 『ディア・ドクター』 は微妙...

ディア・ドクター _ポスター


 これって、金鉱(真理の深遠な実体)を掘り当てたというより、金鉱から出た砂金を見つけたってとこじゃないかすら。


 お話は、僻地の無医村の村に村長に乞われ、やってきた医師・鶴瓶が、実は、ニセ医者だったというもの。

 なんで、鶴瓶が医師のまねごとをするのかの警察の問いに、薬販売業者の香山は、人は誰しも、具合の悪い人をみたらなんとかしてやろうとするものだと説明する。

 すかす、答えにはなっていない。


 本物の(というかインターだからまだ本物じゃないのか)研修に来た医師瑛太は、僻地で、村人のために孤軍奮闘する鶴瓶の姿に心打たれ鶴瓶に心酔する。

 師匠 鶴瓶と研修医 瑛太との関係は、補助線として、黒澤『赤ひげ』 を持ってくれば、この映画とぴったり重ね合わさる。


 『赤ひげ』 での見習い医師・加山が心酔した赤ひげ・三船は本物の医者だった。

 すかす、監督は、鶴瓶をニセ医者とした。

 
 『赤ひげ』 が脱構築化され、本物の医師とはなにか、が映画で問われていることではない。


 街の大病院の医師が正直に村人達に教えるように、医師(本物の)でも、実務では、肺が止まったら慌てふためき、判断を誤り、処置は正しく行えず、患者は死んでしまう。

 しかし、鶴瓶が正しく処置したおかげで患者は無事だったと(実は、鶴瓶ではなく、看護士・余がすべて判断したことではあるのだが)。

 ニセ医者は本物の医師以上の仕事をこなし、患者は救われていた。

 
 その村の平和を破ったのは、鶴瓶が患者・八千草の持つ家庭の事情に深く立ち入ってしまったからなのだが、人を救う人類愛とか、ニューマニズムはいきおい、人のすべてを救わねばならないとする使命を負う。

 が、家庭の事情を深く知れば知るほど、他人がどうにも立ち入り出来ない、親子でも利害(?)が対立する解決不可能の領域の板挟みにあう。


 鶴瓶の遁走は、ニセ医師さ故に患者・八千草を救えない無能さからではなく、善意が立ち入ることの出来ない領域の前に立たされた、板挟みにあったヒューマニズムの苦悶・苦闘だったろう。

 
 娘を気遣う母、母を按じる娘。

 両者の狭間に立たされた善意は脆くも崩れ去った。

 母の気持ちも、娘の気持ち双方十分理解できるからこそにっちもさっちも立ちゆきいかなくなった人間の善意性。



 軽く 『赤ひげ』 を凌駕する、善意(ヒューマニズム)の前に立ちはだかり、横たわる板挟みの無間地獄の実体。


 西川 美和 監督は、せっかくの本物の金鉱を発掘し損ねたかもかもねん。




投稿者: 今井 政幸 


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第七十幕 マンマ・ミーア!

マンマ・ミーア!_ポスター


『マンマ・ミーア!』 いかった、いかった。


 この物語、花嫁ソフィの女友達三人組とか、ててなし子ソフィの父親らしきのが3人いたり、母親は3人組で唄を歌ってたりして、3という数字に纏られていて、この3は、うまく 「正・反・合」 にはまっているんだよね。

 三人よれば文殊の知恵とか、東方の賢人三博士のときの3。

 この3は、音楽劇が煽る、ディオニュソス的扇情・扇動感情と、アポロン的、かつての恋は、もう取り戻せないという分別の理知との狭間の中で、ソフイ(=知恵)が、その閉塞的状況を打開するという見事な構成となって、3の持つ表象(=イメージ)を結実してくれている。

 
 うんまいなぁ。この作者。

 ソフィがててなし子となったのは、男女の気持ちの行き違いがあったことだけんど、それは、彼らが、時代の子、フラワー・チルドレンでもあったからなのだ。

 だから、この物語は、かつての愛と平和と反戦を叫んで、ヒッピーをやったりした若者たちのその後の様子を描いてもいるのさ。

 長髪やマリファナやフリー・セックスに興じた若者達も、いまは、ててなしとはいえ子もいて、社会の一員となっておとなしく、つつましくやっている。

 すかす、その胸の奥には、かつて燃え狂った恋の炎がいまなおくすぶっていて、結婚が目前に迫ったソフィは、どうしても、自分の父親が誰かを知りたくて、盗み見た母親の日記から父親らしき3人を知り、自分の結婚式に呼んだとき、その恋が一気に噴き出るお話なのだ。


 「3」 は、男と、女と、男女を結びつけ引き離す「神」 の関係の3でもあることが、エンディングクレジットの後に示唆されるのだけんど、この映画(というか、このミュージカル)、知的構成が見事!




投稿者: 今井 政幸 


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第六十九幕 おくりびと

凛とした清々しさ   映画 『おくりびと』

おくりびと_ポスター

 突然楽団が解散となり、職を失ったチェリストの小林大悟(本木雅弘)は、田舎の山形に戻って仕事を捜します。


「年齢問わず、高給保証!」「旅のお手伝い。NKエージェント!!」

 社長の佐々木生栄(山崎努)の面接で、採用が決まります。

 しかし、募集の文章は誤植でした。

 大悟のついた仕事は納棺師でした。

 納棺師は、死者の体を清め、死者の表情を安らかにし、死装束を着せ、メイクをほどこし、遺体を棺の中におさめる作業を行うのです。

 思わず、身を引いてしまう大悟に、佐々木は、現金を押しつけます。

 つい高給につられてしまう大悟でした。


 右も左も分からない大悟に、佐々木が仕事を教えます。

 遺族の主人(山田辰夫)が遅刻の二人に怒りをぶちまける中、佐々木の手慣れた納棺師の作業が始まります。

 メイクの作業で佐々木の手が止まりました。

 「本人が使ってた口紅を持ってきて下さい。」

 妻に先立たれた主人に、佐々木の声は耳に入りません。

 子供が、口紅のある場所を知っていました。

 佐々木が口紅を遺体にさすと、表情がまるで変わります。

 大悟の心中の納棺師へのわだかまりが、次第に消えてゆくのでした。


  本木雅弘が 藤原 新也 の 『メメント・モリ』* に触発されて、映画化の企画を持ちこんだというこの作品は、逝く死者への畏怖と、死者の尊厳への敬重に満ちています。

 妻(広末涼子)や鶴の湯の友人(杉本哲也)からのいわれなき職業差別に苦悩しながらも、大悟がこなす、鶴の湯のツヤ子(吉行和子)への納棺の儀と、鶴の湯の常連(笹野高史)のツヤ子への鄭重な哀悼は、逝く人たちへの慈愛に満ちていて、胸をうちます。


 暴走族の若い死。女化粧で送られる息子。

 もはや一言も語ることの無い人たちの心情をおもんばかっての納棺師の所作は凛とした清々しい荘厳さをも感じさせます。

 家庭を捨て失踪した父親(峰岸徹)と大悟を結ぶ石文のエピソード。

 それは、河原の石を、心が荒れている時には、ごつごつとした石を選び、心が穏やかな時には、丸く、角のない石をと、その時々の自分の気持ちを石の形に託し相手におくる、互いが、互いの気持ちを石から読み解き、心を通じあわせるというものでした。

 石文の、相手の気持ちを正しく読み解く思いの大切さは、大悟に父親の元にと諭すNKエージェントの事務員(余貴美子)の悲痛な願いの具現となって、大悟の心を動かします。


 逝く人たちに等しく慈愛を注ぐ映画 『おくりびと』 、わたしたちに大切なものを教えてくれる作品です。



*編集部・注:ラテン語で 「死を想え」 「死を忘れるな」 の意。 詳しくは → Memento mori


投稿者: 今井 政幸 


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第六十八幕 ウォンテッド

 ロシアの監督がハリウッドに吹き込んだ新しい息吹  映画 『ウォンテッド』

ウォンテッド_ポスター


『ナイト・ウォッチ』 『デイ・ウォッチ』 のロシアの監督、ティムール・ベクマンベトフの作品です。


 無理難題をふっかける上司に何一つ言い返せない、うだつのあがらないウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)が、気を静めるための鎮静剤を求めてレジに向かったとき、真横に現れたのは、美女のフォックス(アンジェリーナ・ジョリー)でした。

 訝るウェスリーが、フォックスを気にしながら立ち去ろうとしたとき、物陰からクロス(トーマス・クレッチマン)が現れ、いきなり銃撃戦が始まります。

 秘密の暗殺組織「フラニティ」。
 
 フォックスはその一員でした。

 機織り機で織られた布の糸の目が教えるとある人物名。

 その人物名こそ、世界に災いをもたらす張本人で、フラニティは、織布が教える災厄者を暗殺する秘密結社です。

 かつて、クロスもフラニティの一員でした。

 しかし、クロスはフラニティを裏切り、フラニティの仲間を次々と殺戮していました。


 クロスからの銃撃を交わしたフォックスがウェスリーを連れ込んだのはフラニティの本部で、フラニティの指導者スローン(モーガン・フリーマン)からウェスリーは、離ればなれになっていた父が、クロスの手によって殺されたと知らされます。

 フラニティの暗殺者たちは、特殊能力の持ち主で、ウェスリーも父から特殊能力を継いでいました。

 スローンは、ウェスリーに、フラニティの一員となって、父の仇をとるよう強く勧めます。

 父の形見の銃を渡されながらも、弱気な自分が暗殺者になれないとするウェスリーは、スローンの申し出を断るのですが、同棲中の彼女を同僚に寝取られるほどの冴えないウェスリーは、悪態をつく上司に、ついには切れて、フラニティの門をくぐるのでした。

 しかし、そこで、待ち構えていたのは、暗殺者となるための特訓で、容赦のないフラニティの訓練に、ウェスリーは打ちのめされます。

傷 を負っても治癒される回復風呂に、幾度も、浸けられながら、ウェスリーは、次第に、弾道を意のままにねじ曲げられる超能力を開花させます。


 ウェスリーがなんとか一人前の暗殺者となった中、偶然、ウェスリーはクロスと遭遇します。

 その場に応援に駆けつけたフラニティは、一員の命をクロスに奪われ、痛手を負いますが、クロスが発射した銃弾に、これまで、決してクロスが残すことのなかった貴重な手がかりがありました。

 クロスが使った銃弾は、銃弾職人ペクワースキー(テレンス・スタンプ)の手によるものでした。

 スローンよりクロス殺害の指示を受けて、ウェスリーはペクワクスキーの手配で、駅でクロスを待ち受けます。

 ウェスリーが列車の中にクロスの姿を見つけ、列車に飛び乗った時、フォックスは、スローンより、ウェスリー殺害を指示を受け、駅にやってきていました。

 ウェスリーが、スローンより殺害の指示を受けたクロスは、実は、ウェスリーの・・・・。


 米ソ冷戦体制下をイメージさせる、光と闇との二大勢力の葛藤を描いた、『ナイト・ウォッチ』 『デイ・ウォッチ』 の監督、ティムール・ベクマンベトフが、その斬新な映像感覚を駆使して作ったこの映画は、ある意味、 『ナイト・ウォッチ』 シリーズの3作目になった気がする、とする作品です。


 『デイ・ウォッチ』 のラストで、一度は閉ざされた、超能力者の息子の再来がウェスリーを意味するとしたら、気弱なウェスリーが一流の暗殺者へと変わる成長譚は、光と闇の双方を壊滅し、観客を挑発し、変身を促す、ラジカルな映画となっています。

 美貌のアンジェリーナ・ジョリーの妖しい容姿に惹かれ、誘われたわたしたちが見たものは、映画冒頭での、おどおどしたジェームズ・マカヴォイが、ラスト、さも、当然かのごとく、自信に満ちあふれ、殺人をなし遂げた現場でした。

 作品全編を覆う、異次元的な映像ショットは、わたしたちの感性を体感的に刺激し挑発します。

 自己変革へと。


 スリリングなカーアクションが魅せる、新しい息吹のアクションムービー、 『ウォンテッド』 を堪能あれ。




投稿者: 今井 政幸 


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第六十七幕 セックス・アンド・ザ・シティ

遂に結婚!の映画バージョン   映画 『セックス・アンド・ザ・シティ』

セックス・アンド・ザ・シティ_ポスター

6シーズン続いたアメリカ人気テレビ番組「セックス・アンド・ザ・シティ」が映画になりました。

「20代の女性が大勢ニューヨークにやって来る。お目当ては2つの「L」。レーベル(ブランド)とラブ(愛)だ。20年前、私も同じだった。ブランドを見抜く力をつけて愛を追求するの。 本物の愛を見抜くのは楽じゃない。」

 コラムニストのキャリー・ブラッドショー(サラ・ジェシカ・パーカー)のお馴染みのナレーションで始まる今回のお話は本物の愛。

 キャリーは、長年、つかず離れずを繰り返していたミスター・ビッグ(クリス・ノース)と同居しようと物件を探していました。

 場所で選んだ33件目の物件も、キャリーには気に入りません。

 それなら、値段ははりますが、と業者が案内したペントハウスには、光が射し込んで溢れていました。

 即座に買うことに決めた二人ですが、ビッグのお金で払ってもらうことに抵抗と不安を抱いたキャリーが、気持ちをビッグに打ち明けると、ビッグから、結婚したいのか、と問われ、なりゆきで、二人は結婚することに。

 この話を聞いて、「ヴォーグ」誌の編集者イニド・フリック(キャンデス・バーゲン)が乗ったことから、キャリーの花嫁衣装は、大々的に「ヴォーグ」誌に特集され、結婚式の招待客の数も、当初の75人から200人以上へとふくれあがります。

「僕は君とだけ結婚できれば、式場は市役所で十分なんだ。」

 と、すで2回の結婚を失敗しているビッグの心がぐらつきます。

 ロサンジェルスで年下の恋人スミス・ジェロド(ジェイソン・ルイス)と暮らし、恋人のエージェントをしているサマンサ・ジョーンズ(キム・キャトラル)、デブではげてるけれど弁護士の理想の旦那ハリー・ゴールデンブラッド(エヴァン・ハンドラー)と幸福な家庭を築いているシャーロット・ヨーク(クリスティン・テイヴィス)、そして、夫スティーブ・ブレディと半年以上もセックスのないミランダ・ホッブス(シンシア・ニクソン)は、みな、キャリーの結婚を祝福し、結婚式の前夜祭になりました。

 サマンサの機知に富んだスピーチが場を盛り上げます。

 そんなところに、一回の浮気でミランダに愛想をつかされたスティーブが、ミランダを呼び出してきて欲しいとやってきます。

 しかし、夫の、たった一度の浮気でも許せないミランダは、激高しスティーブをその場から追い返し、自分の激情を、なだめるビッグに、「結婚なんてするもんじゃない」と心情吐露するのでした。

 結婚式当日、式場の図書館で、キャリーの親友スタンフォード・ブラッチ(ウィリー・ガーソン)とウエディング・プランナーのアンソニー・マランティーノ(マリオ・カントーネ)が、遅い二人の到着を待つ中、渋滞で遅れたウェディング姿のキャリーらがやってきます。

 しかし、ビッグの姿はいっこうにどこにも、・・・。

 4者4様の女性の生き方と、女性の友情を見事に描き出してヒットしたテレビ番組の映画化は、ブランドを見抜く目に自信を持つキャリーが、結婚をめぐって、苦悩する心情を巧みに描きます。

 いっこうに現れないビッグに、心をずたずたにされたキャリーを友達の3人が支えます。

 キャリーも、大晦日、子供をスティーブに連れ出され一人侘びしく過ごすミランダを励まします。

 キャリーが一人で部屋の片付けが出来ないことから雇った秘書ルイーズ(ジェニファー・ハドソン)がキャリーの守護天使となって物語を意外な展開へと導くのですが、ルイーズもまた、恋に破れ、新たなL(愛)を求め、セントルイスからニューヨークにやって来た一人でした。

 5番街のティファニー。サックス・フィフス・アベニュー。ブライアントパーク。ミート・パッキング地区。ダイアン・フォン・ファステンバーグのブティック。ソーホーのマーサー・ホテル。パークアベニュー。ブルックリン・ブリッジ。

 ニューヨークの街中と、4人を彩る、パトリシア・フィールドのまばゆい多彩なファッションは、やがて、ブランドに惑わされず、本物の愛をしっかと見出すキャリーの精神的成長を促すのでした。


 キャリーが、遂に結婚!の、映画「セックス・アンド・ザ・シティ」を見逃す手はありません。




投稿者: 今井 政幸 


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第六十六幕 落下の王国

飛翔への夢      映画 『落下の王国』

映画 『落下の王国』 ポスター

原題が THE FALL のこの映画は、1981年のブルガリア映画 『YO HO HO』 から着想を得ています。

 『YO HO HO』 は、背骨を折って入院している俳優が、同じ病院に入院している10歳の少年と友達になり、少年を使って自殺するための毒を手に入れようとするが、少年に友情を感じたことから、俳優は人生を信じる気持ちを取り戻す、というお話の映画です。

 ターセム・シン 監督は、この設定をベースに、落下(THE FALL)を描きます。

 『落下の王国』 の俳優ロイ・ウォーカー(リー・ペイス)はスタントマンでした。

 彼は、映画(といっても、この映画の時代設定は1915年、無声映画の頃のお話です。)の撮影で、橋から飛び降りるシーンで、大怪我をして病院に担ぎ込まれました。

 みかん農園で、みかんをもぎ取ろうとして木から落ちた5歳の女の子アレクサンドリア(カティンカ・アンタルー)が、彼女に優しくしてくれる看護師エヴリン(ジャスティン・ワデル)に、メッセージを書いた手紙を、二階の窓から、投げ落としたとした時、手紙は、エヴリンに届かず、ロイのベッドにと落ちてきました。

 手紙を探してロイの病室へとやってきたアレクサンドリアは、ロイから手紙を取り返して立ち去ろうとしますが、ロイが呼び止めます。

「君の名前は、アレクサンドリア?」

「そうよ。」

「アレキサンダー大王にちなんだ名だね。」 「僕は、ロイ。」

「・・・」

「こっちにおいで。アレキサンダー大王の話をしてあげよう。」


 映画の主役シンクレア(ダニエル・カルタジローン)に恋人を奪われたこともあって、ロイは、つま先の感覚すら無くなったこの大怪我の状態の中で、自殺を考えてもいました。

 自殺の方法は、薬錠を大量に飲み込むこと。

 偶然まいこんだアレクサンドリアは、身動きの出来ないロイにとって、格好の手足でもありました。

 ロイが話してくれるアレキサンダー大王のお話に聞き入るアレクサンドリアでしたが、しかし、そのお話は、アレクサンドリアには好きになりません。

 「明日、別の話をしてあげる。愛と復讐の叙事詩だ。叙事詩って分かる?」

 翌日、物語を聞こうと、ロイの病室にやってくるアレクサンドレアがいました。

「じゃ、目を閉じて。」 「何か見える?」

「ううん」

「目をこすってごらん。星が見えるよ。」

 目をこすったアレクサンドリアの瞼の裏に、満天の星空が広がりました。・・・


 総統オウディアス(=シンクレア)に復讐を誓う、黒山賊(=ロイ)、ルイジ(=ロイの俳優仲間:ロビン・スミス)、インド人(=オレンジ農園の使用人:ジートゥー・ヴァーマー)、チャールズ・ダーウィン(=病院職員:レオ・ビル)、オッダ・ベンガ(=氷配達員:マーカス・ヴェズリー)の5人は、総統に怒りをかったことで閉じこめられた珊瑚礁の小さな島から脱出し、霊者(=オレンジ農園の使用人:ジュリアン・ブリーチ)に出会い、霊者の卓越した霊能力に救われながら、出会ったエヴリン姫(=看護師エヴリン)に黒山賊は恋に落ちるという、ロイの語る、愛と復讐の叙事詩は、ロケ地を各国の世界遺産として、ターセム監督の前作 『セル』 同様、コスチューム・デザインに 石岡 瑛子 を迎えての美がわたしたちを挑発します。

 なつかしい無声映画の数々の落下シーンで閉めくられるこの映画は、観客の笑いをとるために危険も省みず、体を張って命がけなシーンに挑戦したスタントマンたちに捧げられたオマージュでもあります。

 わたしたちが、息をのみ、スクリーンに目を釘付けにした、落下の名シーンは、落ちることと同時に、希少な蝶を求めて手を伸ばした猿のウォレスの姿にも似て、映画の中に、夢と希望を追い求めた、飛翔への夢でもありましょう。

 世界は美しく、生きてくだけの価値がある。

 ロイに言われるがままに、調剤室に忍び込んで、モルヒネの瓶を取ろうと足を滑らせ、棚から落ち、頭を強打した、アレクサンドリアのひたむきさは、やがて、自殺だけを考えていたロイの心を変えていくのでした。


 飛翔を夢見る落下たちの物語。映画「落下の王国」、ブラボーな一作です。




投稿者: 今井 政幸 


『落下の王国』 公式サイト




ターセム・シン 監督の初長編作品 『ザ・セル』 も見逃さずにチェックだ!





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第六十五幕 12人の怒れる男

裁きの彼方に現れる慈悲   映画 『12人の怒れる男』

映画 『12人の怒れる男』 ポスター

ロシアのとある殺人事件の裁判のお話です。元ロシア軍将校が殺害されました。

 容疑者として逮捕されたのが、チェチェン人の少年です。

 年は、チェチェンの戦乱で両親を失い、殺害された将校に養われていました。

 「殺してやる!」、という少年が養父に投げつけた言葉を、近所の者が聞いていました。

 少年が慌てて家を飛び出していく姿が目撃されていました。少年は大金を所持して家に戻って来たとき、逮捕されました。

 3日間に渡る審議が終わりました。検察は、最高刑の終身刑を求刑。

 市民の中から無差別に選ばれた12人の陪審員は、評決をくだすため別室へと案内されるのでした。

 あのシドニー・ルメットの名作 『12人の怒れる男 12 Angry Men』 の設定を借りたこの作品は、設定の大枠を名作になぞってるとはいえ、リメイクではありません。

 評決は、12人、全員一致で決まります。

 改造中の裁判所は、学校を間がりしているので、陪審員たちは、学校の体育館に並べられたテーブルの席につき評決をとることになりました。

 すでに、3日間の審議で、陪審員らの評決は固まっていました。

 市民の義務とはいえ、それなりに気ぜわしい彼らは、さっさと評決して帰宅したがってます。

 挙手で評決することにしました。

 議長役となった陪審員2( ニキータ・ミハルコフ 、この映画の監督です。)が挙手を数えます。

 有罪としたのは、12人中、11人でした。

 反対した陪審員1(セルゲイ・マコヴェツキイ)に、他の者たちが詰め寄ります。

 なぜ。証拠も揃っている。犯人はあの少年に間違いない。なのにどうして無罪とするのか。

 陪審員2は答えます。

 いま、有罪と決まったら、少年は一生刑務所の中なのですよ。あの少年にとって一生のことを、話し合いもせず、挙手だけで決めていいんですか? まず、話し合いましょうよ。せめて、本当にあの少年が殺人犯に間違いないのか。

 次に、陪審員2は自分の身の上を語り出します。

 彼は貧しい研究者で、妻の働きで、新型のダイオード開発をしていました。妻に支えられた苦しい生活の中から、ようやく、彼は新製品を生み出します。

 画期的なものでした。彼は、この特許を、ロシアの会社に売り込みます。彼は、自国の会社に自分の開発したものを買って欲しかったのです。

 ところが、どの会社も手を出しません。開発品が売れないため、貧しさは極限に達し、彼の研究を支えた妻は彼のもとを去っていきました。

 彼は精神がすさび、わけもなく他人にくってかかって喧嘩をうり、他人が激怒のあまり自分を殺してくれることすら願っていました。

 たまたま乗った列車で、いつものように酒に溺れ、周囲に喚き当たり散らしていたとき、それを見ていた女の子が母親に尋ねます。

 あの人、大丈夫かしら。母が娘にさとします、なんでもないのよ。あの人はただ寂しいだけなのよ。

 この母娘と出会ったことで、陪審員2は母と結婚し、ダイオードの開発品も他国(日本だ!)に売れ、いまでは、会社の社長にまでなったと。

「合理的な疑い」。

 少年が犯人であることに、理にかなった疑いがあるなら、一同で話し合わなければならない、とアメリカ・ハーバードで学んだ陪審員6(ユーリ・ストアノフ)が説明します。

 すると、陪審員12(ロマン・マディアノフ)が、殺害現場に金を持って戻って来た少年の行動に疑問があると言い出します。殺人犯が、わざわざ犯行現場に金を持って戻ってくるはずはない、と。

 かくして、あの名作をなぞった筋書きで、次第に、少年を犯人とする犯行への疑問点が次々に洗い出されてくるのですが、この映画は、原作の持つ、合理的な殺人事件の謎解きから次第に外れ、被告を裁くという使命を与えられた12人の陪審員が、母娘の慈悲に救われた一人の研究者によって、裁くことの重要・重大な使命を教えられ、裁くより、人にはより暖かくあるべきとする、法をないがしろにするような思想にまで達する凄みを持っています。

 ロシア国内では決して大きな声では語れないチェチェン問題を通底音として、現代ロシアの抱えてる諸問題の解決を願うべく、監督は、慈悲を説きます。

 法は大事だが、法より慈悲が大事とするこの映画は、わたしたちに、既成の考え方の放棄を迫りもします。


 人が人を裁くことの意味を丁寧に教え諭す、映画「12人の怒れる男」を堪能あれ。




投稿者: 今井 政幸 


『12人の怒れる男』 公式サイト



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第六十四幕 コレラの時代の愛

純愛の放つ異様で芳醇な芳香    映画 『コレラの時代の愛』

『コレラの時代の愛』ポスター

 南米コロンビアの港街カタルヘナ。医師のフベナル・ウルビーノ(ベンジャミン・ブラット)が、木の上に逃げたオウムを捕まえようとして、転落する。

 優れたコレラ医師であり、街の名士であった彼の死は、教会の鐘の響きで町中に告げられる。

 鐘の音でフベナルの死を知るフロンティーノ・アリーサ(ハビエル・バルデム)にとって、コレラ医師は、彼が若くして恋したフェルミーナ(ジョヴァンナ・メッツォジョルノ)の夫だった。

 51年9ヶ月と4日。

 フロンティーノは、この間、結婚したフェルミーナの夫の死をひたすら待っていた。

 1879年。電信局見習いでいたまだ10代のフロンティーノは電信の配達を命じられる。

 電報の配達先、最近、街にやってきたばかりラバ商人ロレンソ(ジョン・レグイザモ)の娘がフェルミーナだった。

 フロンティーノはフェルミーナに一目惚れ。得意の詩を配したラブレターをフェルミーナに送り続ける。

 やがて、フェルミーナもそれに応えて、二人の文通が続き、フロンティーノは、フェルミーナに求婚し、フェルミーナは求婚を受諾する。

 しかし、これを知ったロレンソは激怒する。無教養なロレンソは、母親を亡くした娘を金持ちの名家に嫁がせることだけを願ってわざわざ港町に越してきたからだった。

 電信局見習いとの結婚を認めないロレンソは、フェルミーナと共に、街を立ち去る。

 あきらめきれないフロンティーノは、彼らの転居先を見つけ、ひそかに、愛の電信をフェルミーナに送り続け、フェルミーナの帰還を待ち続ける。

 時が流れ、やがて、フェルミーナが街に戻って来たとき、フェルミーナからフォロンティーノへの思いは消えていた。

 コレラの蔓延する港街で、フェルミーナにコレラの疑いがかかった時、名医師フナベルが招請されたことから、フナベルはフェルミーナを見初め、やがて、フナベルは求婚するのだった。

 フロンティーノとの文通のやりとりのように、熱にうかれた愛をフェルミーナはフナベルに感じないながらも、父ロレンソの諸手をあげての賛同に後押しされ、しぶしぶながらもフェルミーナはフナベルとの結婚を承諾する。

 二人の結婚を知った、傷心をフロンティーノを見かねて母トランシト(フェルナンダ・モンテネグロ)は、亡き夫の弟でカリブ河川運輸会社を経営するドン・レオ(ヘクター・エリゾンド)に息子の就職を斡旋する。

 事情を聞いたドンは、川奥の勤務先を決め、フロンティーノは、船で勤務地に向かうが、船内で、唐突に、女性に船室に引き込まれ、初体験を経験する。

 自責の念を感じたフロンティーノは街に舞い戻るが、王冠を戴く女神フェルミーナは、パリへと新婚旅行に起った後だった。

 ひょんなことから、その後も、女性経験を重ねるフロンティーノは丹念に女性遍歴をノートに記録するのだった。

 622人。フロンティーノが女性との関係を重ねた時、フェルミーナの夫が死んだ。

 葬式の日、フロンティーノは、フェルミーナに結婚を申し込む。

 フェルミーナは、不謹慎なフロンティーノに激怒するが、フロンティーノのフェルミーナへの思いは募る一方だった。そして、・・・。

 フェルミーナに一目惚れしたフロンティーノのとる果敢な求愛行動は、フェルミーナが文通に応じるとはいえ、異様な、ストーカーまがいなうす気味悪さが付きまといます。

 フロンティーノ役は、10代を演じるウナクス・ウガルデから『ノーカントリー』の殺し屋ハビエル・バルデムへと変わります。

 フェルミーナへの思いを断ち切れないながらも、女性から言い寄られるだけではなく、平気で、自ら、女性に言い寄っていくフロンティーノ。

 数多くの女性との交渉が、次第に、フロンティーノに理想の、追い求めるべき女性像を明確にしていきます。

 それは、やはり、彼にとって、フェルミーナ以外の誰でもありません。

 この世で巡り逢うただ一人の女性との出会い。あたかも、約束されていたかのような運命的な出会い。

 その愛を成就することが、フロンティーノにとってこの世に生きてきた証でした。

 この世には愛がなければならない。非現実ともとれる夢のような愛の尊さの願いは、ですから、ついぞ、フェルミーナの父ロレンソにも、夫のフナベルにも理解されることはありませんでした。

 純愛の熱にうかされたフロンティーノだけが、フェルミーナに愛の必要さを説きます。

 裕福な恵まれた環境で、しかし、本当に幸福な人生だったかを問うフェルミーナにも、最後まで、愛を説き続けるフロンティーノにも、51年9ヶ月と4日は必要不可欠な時間でした。

 この時を経て、ようやく、愛の意味を知り得た二人の充足感がわたしたちの胸を詰まらせます。

 純愛の放つ異様で芳醇な芳香。映画「コレラの時代の愛」を堪能あれ。




投稿者: 今井 政幸 


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第六十三幕 ダークナイト

善悪のジレンマをこえて   映画 『ダークナイト』

映画 『ダークナイト』 ポスター

クリストファー・ノーラン監督によるバットマンシリーズの二作目です。

 悪のはびこる街、ゴッサム・シティ。

 映画は、冒頭、銀行強盗で幕をあけます。

 手際よく銀行に押し入り、金庫の金を収奪する強盗グループ。しかし、彼らの間に異変が起きます。

 「仲間の数が減ったらそれだけ分け前が増える。」 主犯者からひそかに吹き込まれていたこのささやきで、犯人達は次々に仲間を殺していきます。

 最後に生き残った、マスクをとった男が、ジョーカー(ヒース・レジャー)でした。

 そんな悪の街に、新任の地方検事ハービー・デント(アーロン・エッカート)が着任します。

 彼は、かつてバットマン(クリスチャン・ベール)の恋人レイチェル・ドーズ(マギー・ギレンホール)と組んで、マフィア撲滅に意欲を燃やします。

 バットマンとジム・ゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)は、ひそかに、紙幣につけた印から、マフィアが利用するマネーロンダリングの銀行を突き止め、マフィアの資金を絶ちます。

 バットマンにいきり立つマフィアの前に現れたのがジョーカーでした。

 マフィアの全資金の半分を条件に、バットマンを殺す、と宣言するのですが、ジョーカーのもくろみは、正義を標榜する高潔の人間を否定し、彼らにもきっとあるはずの、醜い汚れた悪の心を目覚めさせようとするものでした。

 正体を明かさなければ、毎日市民を殺す。

 ジョーカーは、市長や検事や警察らを標的とした殺人予告で、バットマンを追い詰めていきます。

 巨大企業の会長ブルース・ウィンことバットマンが、正体をあかそうとした記者会見で、バットマンと名乗り出たのは地方検事ハービーでした。

 捕らえられたハービーが護送されるなか、ジョーカーは、護送車を急襲します。

 が、現れたバットマンがハービーの前に立ちはだかります。

 あえなくジョーカーが正義の軍門にくだるやに見えるのですが、それは、周到に張り巡らされたジョーカーの罠のほんの始まりでした。・・・・。


 両親を犯罪で失い、悪の撲滅ため立ち上がったバットマンの悪を憎むかたくなな姿勢は、逆に、より巨大な悪をよびよせるのでした。

 そんなジレンマをすでに承知し、執事のアルフレッド(マイケル・ケイン)は忠告してきましたし、巨悪と戦うために、アンフェアな行為にはしるバットマンのあり方を元恋人のレイチェルはきびしく糾弾します。

 技術開発でバットマンをサポートするルーシャス・フォックス(モーガン・フリーマン)ですら、ジョーカーの居場所を割り出すための、市内の全通信網の傍受を諫めます。

 バットマンは、正義の人の行為として許されざる一線を越えてまで、ジョーカーに立ち向かいます。

 暗黒の騎士、ダークナイト。

 バットマンが得た称号は、正義をまっとうしながらも、ハービーの得る称号、ホワイトナイト(光の騎士)ほどに輝かしいものではありません。

 「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ. 怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。」

 ホワイトナイトとダークナイト。

 ジョーカーの仕掛けた罠が、善悪のジレンマをわたしたちに突きつけるとき、バットマンの新たな決意がはじまります。

 ヒース・レジャーの熱演が光る、映画『ダークナイト』。 渋い作品です。




投稿者: 今井 政幸 


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第六十二幕 崖の上のポニョ

生命讃歌の交響詩ファンタジー   映画 『崖の上のポニョ』

映画 『崖の上のポニョ』 ポスター

 とある海底で、ポニョ(声:奈良柚莉愛)の父・フジモト(声:所ジョージ)がウバザメ号の先端でクラゲの増殖をしています。

 増殖して、海面へと上昇するクラゲに乗って、ポニョはこっそりウバザメ号から出て行きました。 家出したポニョが辿り着いた先は、船が行き交う海辺の小さな町でした。

 いきなり、海底をさらう底引き網に巻き込まれたポニョは、ガラス瓶に吸い込まれます。頭から瓶の中に入って身動きできないポニョを、山の上の家から海辺に降りてきた5歳の男の子の宗介(声:土井洋輝)が見つけます。

 ポニョを金魚と思いこんだ宗介は、瓶を割り、バケツに水道水を汲んで、ポニョを水の中に入れます。 ポニョは生きていました。

 宗介に助けられたことを知ったポニョは、割れたガラスで怪我をした、宗介の指から出てる血をぺろりと舐めてあげました。

 すると、すぐに血は止まってしまうのでした。

 ポニョの家出を知って、慌てたフジモトが連れ戻しにやってきます。 フジモトはかつて人間でした。

 地上に上がることが出来るフジモトは、宗介を車に乗せ出勤する宗介の母リサ(声:山口智子)の前に近づいてきますが、地上では耐えず水を蒔いてないとならないフジモトの山水姿を訝ったリサに誤解され、相手にされません。

 リサの勤める老人ホームと隣接する保育園にやってきた宗介は、ポニョを持ったまま保育園に入ることも出来ず、やむなく、リサの勤める老人ホームの車椅子に乗った老母、トキ(声:吉行和子)、ヨシエ(声:奈良岡朋子)、カヨ(声:左時江)にポニョを見せにいきますが、トキの、「そんなの、早く帰してあげないと津波がやってくるよ」という言葉に驚いて、海辺に降りていきます。

 そんな宗介とポニョの姿は、フジモトの知れるところとなり、すぐさま、ポニョは、フジモトの手に取り返されてしまいました。

 海底のサンゴ塔に、ポニョを押し込めたフジモトは、精製している生命の水が、井戸いっぱいに溜まるのを楽しみにひとりごち、出かけて行きます。

 そんな中、姉ポニョの、宗介に会いたいとする一途な思いを知った妹達(声:矢野顕子)は、団結して、ポニョの脱出を手助けします。

 そんな妹たちの行動が成功して、ポニョはサンゴ塔からの脱出に成功。 ポニョの脱出は嵐を呼び、大きな魚となった妹たちの上に乗り、宗介の父・耕一(声:長島一茂)の船の横を、走り抜けて行くのでした。

 ポニョの目覚めた魔法は、月を地球に近づけ、海水の水面を上げ、高潮は海辺の町をすっぽり飲み込んでしまいます。

 大慌てのフジモトは、妻である海の大母・グランマンマーレ(声:天海祐希)に救いを求めるのですが、・・・。

 「はじまり」というタイトルで幕を開け、序章部分を持つこの映画は、ポニョが宗介のもとへと向かう嵐の場面にワグナーのワルキューレの騎行を思わす旋律が流れることからも窺い知れる音楽劇に近しい作劇となっています。

 ちなみに、ポニョの本名は「ブリュンヒルデ」で、これは、ワグナーの「ワルキューレ」の乙女たちの長女の名でもあります。

 序章に続いての、フジモトのクラゲ増殖場面で、久石譲の音楽は、豊かな生命あふれる海底の豊穣さをメロディで奏でます。

 ですから、この映画は、一種の交響詩とも呼ぶことの出来る音楽ファンタジーの下に構成されています。

 交響詩をアニメ化したこの映画は、豊穣さから一転して、家出のポニョが迷い込む、人間の手によって汚された、ゴミだらけの海にわたしたちを誘います。

 次いで、足腰の立たない、車椅子に乗せられたままの老人ホームの人達。 ポニョのあこがれた人間の世界は、決して、明るい希望にあふれたものではありません。

 しかし、ポニョを救った宗介を求めて、再度、脱出するポニョの魔法によって、世界は一転します。

 生命の水の効き目か、高波が水没させた町の海底では、ボトリオレピス、ディプノリンクスといったデボン紀の魚たちで満たされるのでした。

 老人ホームへと向かったリサを捜しに、ポンポン船で老人ホームに向かう宗介とポニョが出会う、赤ちゃんを抱えた若夫婦の妻(声:柊瑠美)は、丁寧に、女の子となったポニョに、赤ちゃんが食べるのは、スープやサンドイッチではなくお母さんのおっぱいで、それは、お母さんがスープを飲んだり、サンドイッチを食べることで、栄養あるおっぱいが出ると教えます。

 魚と人との不自然な出会いは、リサが向かう通勤路にある、修理ドックに入るための船と、通行道路が交差する場で、わざわざ一度下へと下がる道路であることにより不自然さ無く象徴されていきます。

 嵐の中での、この下降道路の場面は、海の中の豊穣さが、地表に栄養をもたらす契機を意味することでしょうか。

 
 交響詩ファンタジーは、ラスト、コーラスを伴った讃歌となって祝福します。

 それは、宮崎駿が、次世代を担う子供達に託した希望の讃歌かも知れません。




投稿者: 今井 政幸 


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第六十一幕 ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!

アクション映画へのオマージュ 映画 『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』

アクション映画へのオマージュ 映画

 警官にあこがれ、カンタベリー大学政治学科、社会学科を主席で卒業したニコラス・エンジェル(サイモン・ベッグ)は、ロンドンで、犯人検挙率ナンバーワンのスーパー警官だった。

 が、そんな彼の飛び抜けた活躍は周囲から疎まれるだけだった。

 ニコラスは、突然、呼び出されて、配置転換を言い渡される。仕事に熱心な彼からは、恋人も去っていった。

 彼の左遷先は、イギリス一安全な田舎の村サンドフォード。

 サンドフォードは、幾度もビレッジ・オブ・ザ・イヤー(国内最優秀の村)を受賞している程の、事件がまったく起こらない村だった。

 出勤前夜、村についたニコラスは、宿舎代わりのホテルに入ったものの、とりあえず外に出てパブに。

 そこでは、子供達が大勢たむろし、未成年ながら平気で飲酒。

 酔いつぶれてた客は、飲酒運転で帰宅しようとする始末だった。

 さっそく、ニコラスは、彼らをしょっぴいて、署につれていき、規定通り、写真を撮り、指紋をとり、牢に入れ、それなりの仕事をこなして、ようやく宿に。

 朝、ニコラスが、出勤して、牢をまわってみると、牢の中はすべてもぬけの空。しかも、泥酔の飲酒運転者は、今日から相棒となる警官ダニー・バターマン(ニック・フロスト)だった。

 驚くニコラスに、署長のフランク・バターマン(ジム・ブロードベント)が諭す。

 こののどかな平和な村で、杓子定規に仕事をこなすと前任者のようにノイローゼになると。

 法はそれなりにきっちり守られなければならないとニコラスは反論するが、幾度ものビレッジ・オブ・ザ・イヤーの受賞を誇りとする署長は、決して譲らない。

 が、この平和な田舎町に、突如、不穏な事件が頻発する。

 交通事故、火災爆発、落下物による死。

 これらのなんら脈絡のない事故死に、ニコラスが不審を抱いたやさき、彼の目の前で、花屋の女主人に、鋏が突きさり死亡する。

 犯人を目撃したニコラスは必死で追うが、すんでのところで、逃げ延びられてしまう。

 一連の事件を殺人事件と見抜いたニコラスは、署内の刑事に協力を仰ぐが、もとより、平和な村で、しゃかりきに働くニコラスを快く思っていないアンディ・カートライト(レイフ・スポール)、アンディ・ウェインライト(パディ・コンシダイン)刑事らは、ニコラスに、自分で調べろと冷たく突き放すのだった。

 この言葉が引き金となって、村の新聞を丹念に読み調べたニコラスは、ついに、地元スーパー・マーケット経営者サイモン・スキナー(ディモシー・ダルトン)が犯人とにらみ、逮捕に向かうが、サイモンからは、なにひとつ、犯人と断定する証拠は見つからなかった。

 落胆するニコラス。

 署長は、そんなニコラスに、ひとまず、じっくり休養するよう、宿へと帰す。

 ニコラスが宿に戻った時、そこには、・・・・。

 『ハートブルー』『バッドボーイ2バッド』『フレンヒ・コネクション』『L.A.コンフィデンシャル』『ダーティ・ハリー』『ポリスストーリー』『スーパーコップス』『デスペラート』『わらの犬』『リーサル・ウェポン』等々。

 過去の数々の秀作からインスピレーションを受け、監督のエドーガー・ライトと主演のサイモン・ペッグが、脚本を書きました。

 どこかで見たようなシーンが、たしかに、てんこもりですが、この作品は、そんな過去の秀作を踏襲したがゆえに、見事に、ヒーロー映画を再現してくれました。

 ヒーロー映画とは、いかなる困難にも果敢に立ち向かい、最後には、勝利を得る克己の映画を言います。

 『駅馬車』を代表とする、かつての西部劇は、こんな、男の中の男、ヒーロー達が活躍していました。
わたしたちは、そんな映画たちを通して、ヒーローとはどうあるべきかを学びもしました。

 映画をまったく見ない、生真面目でなにかと周囲と軋轢を起こすニコラスに、警官たるもののありようを、相棒ダニーが、自分のDVDコレクションの中からセレクトして、ニコラスに映画を見せます。

 ニコラスが、自信と希望と生きる道を失った時、彼に勇気を与え、やる気を再び起こさせたのは、その時ダニーと一緒に見た映画たちでした。

 この映画は、過去のアクション映画へのオマージュと共に、わたしたちに、人生の指針と生きる勇気を与えてくれる映画そのものに対するリスペクトでもありましょう。

 
 悩みのすべてをふっとばし、みなぎる力を与えてくれる映画「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」、お見事です。




投稿者: 今井 政幸 


『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』 公式サイト



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第六十幕 告発のとき

アメリカの良心     映画 『告発のとき』


映画 『告発のとき』 ポスター


実話に基づいた物語です。

 ハンク(トミー・リー・ジョーンズ)のもとに、軍隊から、息子のマイク(ジョナサン・タッカー)が失踪したとの報が届きます。

 ハンクは、引退はしたものの、かつては軍警察に従事し、マイクの兄も戦死した、軍人一家でのマイクの失踪事件でした。

 マイクの部隊はイラク戦争に従軍していましたが、すでに無事みな帰還していました。

 マイクの失踪は、平和なアメリカ内で起こりました。

 ひとり、軍に向かったハンクは、マイクの宿舎を見せてもらいますが、別段、失踪の手がかりらしきものはなにもありません。

 が、ハンクは、かつての軍警察での仕事の要領から、マイクの携帯電話を見つけ、持ち出し禁止ながらも、うまく隠し持って帰ります。

携帯には、ムービー・データが残されていました。しかし、データの破損がひどく、内容はまったく判別できません。

 軍での捜査がいっこうに進展しないことから、ハンクは警察に失踪届を出します。

 が、警察は、軍内部での失踪事件は管轄外として、担当の女刑事エミリー(シャーリーズ・セロン)はハンクをまったくとりあいません。

 それでなくとも、エミリーは、署長との仲により刑事に出世出来たと同僚から疑われ、なにかと、仲間たちから無理難題な仕事を押しつけられ、ハンクを受け付ける前ででも、夫の異常な動物いじめを取り締まって欲しいと長々訴える女性に、根気よく、動物虐待では警察は捜査に乗り出せないと一生懸命説明したあげくに、妻から、悪態をつかれたばかりだったからでした。

 そんなエミリーは、シングルマザーで、彼女にはデヴィッドという男の子がいました。

 ベッドでデヴィッドを寝かしつけたとき、エミリーはふと、ハンクが思う子への想いを感じ取ります。エミリーはハンクから、マイクのクレジットカードの使用明細の調査協力を求められていました。

 マイクの焼死体が発見されたことから、事態は一変します。

 マイクの死体は、バラバラに切り刻まれ、焼かれ、発見が遅れたことから、すでに肉片は野犬らに食いちぎられた状態でした。

 しかも、発見場所が、軍管轄の土地だったことから、それを知った地元の警察はそうそうに引き上げ、なんとか現場を見たいとするハンクがエミリーを伴って現場を検証したとき、せっかくの現場に残された手がかりは、軍の捜査関係者らによって、さんざんに踏み荒らされ、ほとんどなにも残っていません。

 しかし、ハンクは、殺人は、まず、警察管轄の、路上で行われ、死体が、軍管轄の地まで引きずり運ばれ、そこで、バラバラにされ、焼かれたことを見抜きます。

 警察管轄区域内での犯行。

 エミリーは、ハンクと組み、互いに協力し合って不可解な焼死事件の謎を突き止めていきます。

 そして、そこで判明した、事件の全貌は、・・・・。


 PTSD。

 戦場での体験が、マイクらを狂わせました。

 この映画は、戦場での異様さを教える映画ではありますが、そんな戦場に息子たちを追いやり、戦場が耐えきれないマイクの苦悩を理解せず、ついには息子を死に至らしめたハンク自身にも責任を問う映画です。

 ハンクがエミリーの息子のデヴィッドを寝かすため、ダビデ王の話をします。

 エラの谷で、イスラエル軍は、ペリシテ人と対峙しました。

 ペリシテ人側には、巨人ゴリアテがいて、イスラエル軍を挑発しますが、巨人ゴリアテを怖れたイスラエル軍は、誰一人、ゴリアテに挑もうとしません。

 そんな中で、羊飼いの少年ダビデが、石を持ち、ゴリアテに挑みます。

 ダビデが投石機で放った石は、ゴリアテの額に当たり、ゴリアテを倒します。

 王は、どうして、子供に過ぎないダビデを、巨人ゴリアテと戦わせたのか。

 素朴なデヴィッドの質問でした。


 デヴィッドの名は、ダビデ王から由来する名でもあり、映画「告発のとき」の原題IN THE VALLEY OF ELAH(エラの谷で)は、ダビデがゴリアテと戦った谷の名からとられています。

 誰が、子供達を戦場に送り込んでいるのか。

 二人の息子をも軍隊で失ったハンクの妻ジョーン(スーザン・サランドン)は、静かに、黙って、しかし屈することなく、涙します。

 ハンクがラストに掲げる、国家の危機を意味する、逆さの国旗。

 アメリカが犯した罪を認めて、許しを乞うかのような映画「告発のとき」は、最後の最後に残されたアメリカの良心ともいえるでしょうか。




投稿者: 今井 政幸 


『告発のとき』 公式サイト




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第五十九幕 イースタン・プロミス

荘厳な社会劇   映画 『イースタン・プロミス』

『イースタン・プロミス』 ポスター


 なじみの客が、気持ちよく髭をあたってもらってるところに、ちょっと約束の時間に遅れて、甥っ子がやってきます。

 床屋の主人は、甥の気の弱さをなじりながらも、打ち合わせ通り、甥に剃刀を握らすと、甥は、剃刀を客の喉に突き刺し、・・・。

 のっけから、こんな調子で始まる、ヴァイオレンス全開のギャング映画です。

 舞台はロンドン。「イースタン・プロミス」とは、イギリスにおける東欧組織による人身売買契約のことです。

 イギリスの娼婦のうち、8割が、東欧から連れてこられた女性たちといわれます。

 この映画は、そんな実態をえぐります。脚本が、映画「堕天使のパスポート」のスティーヴ・ナイトです。

 クリスマスをひかえたある夜、助けを求めて少女が薬屋に逃げ込みます。

 彼女は妊娠していました。

 病院に担ぎ込まれた少女の腕には、いくつもの注射の跡がありました。

 なんとか、赤ちゃんの命は助かり出産出来ましたが、母胎は持ちませんでした。

 身元不明の母親の手がかりをと、看護士アンナ(ナオミ・ワッツ)は、少女が持っていた日記をこっそり病院から持ち出します。

 日記に書かれていた文字はロシア語でした。

 ロシア人の父を持つハーフのアンナですが、ロシア語は読めません。

 母ヘレン(シニード・キューザック)との二人暮らしの家に出入りしている、元KGBだという伯父ステパン(イエジー・スコリモフスキー)が、病院から持ち出した少女の日記に目をとめましたが、病院からの日記の持ち出しをなじられたアンナは、すぐさま、伯父から日記を奪い返します。

 日記には、「トランスシベリアン」というロシア・レストランの名刺が挟まれていました。

 アンナは、レストランに出向き、オーナーのセミオン(アーミン・ミューラー=スタール)に、死んだ少女の心当たりを問いますが、いっこうに、手がかりはありません。

 困ったアンナに、セミオンは、日記の翻訳をアンナに申し出ます。

 アンナが独自で少女の身元を調べている間、伯父ステパンが日記を盗み読みしていました。

 少女の名は、タチアナ。

 貧しいロシアでの境遇から、金回りの良さの評判に惹かれロンドンにやってきて娼婦になりました。

 妊娠はレイプ同然の性行為での結果でした。

 ステパンは、タチアナの身元調べには危険が伴うと、深入りせぬようアンナに忠告します。

 ステパンの予感は当たりました。日記のコピーを読んだセミオンはいきなりアンナの病院に押しかけ、タチアナの身寄りの住所を教えるかわりに、日記を手渡すようアンナに迫るのでした。

 取引の場に、アンナは、母ヘレンとステパンを立ち会わせます。

 やって来たのは、セミオンの運転手のニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)でした。

 彼は、アンナが乗る、父のバイクに興味を持ったりして、すでにアンナとは面識がありました。が、元KGBあがりの、ギャングを許せない、いきりたつステパンは、怒りのあまり、ニコライに唾を吐きかけるのでした。

 日記を手に入れ、処分したセミオンは、秘密を知ってるステパンの始末をニコライに命じます。

 職務に忠実なニコライは、ステパンのアパートを探し出し、・・・。


 『堕天使のパスポート』で、クルド移民たちらの直面する、臓器移植売買の実態をあばいた脚本のスティーヴ・ナイトが、東欧からの人身売買「イースタン・プロミス」と、ロシア・マフィアシンジケート「法の泥棒(ヴォリ・ヴ・ザコネ)」を題材にした作品です。

 『堕天使のパスポート』でのオドレイ・トトゥの純粋な正義感が、ナオミ・ワッツのアンナにも投影されています。

 いわくつきのニコライが、アンナの無垢な正義感を真正面から受け止めて映画は終わります。

 激情的で理性の欠いた、セミオンの息子のキリル(ヴァンサン・カッセル)を手玉に取る、ニコライが見せる、頭の回転の鋭さと、肝っ玉の太さと、頂上に駆け上がろうとする野心さは、シェークスピア劇に通じる世界観でもあります。

 アンナ同様、ニコライにも持たせた正義感が、幾分、マフィア像の生々しさを弱めもしていますが、容赦なく殺人を犯していく非道なマフィアのあり方は、見るものを十分に押し黙らせ画面から目を離させません。


 噴出するヴァイオレンスに躊躇して、今年前半の収穫作品を見逃すことのなきよう。

 映画「イースタン・プロミス」をご堪能あれ。



投稿者: 今井 政幸 


『イースタン・プロミス』 公式サイト



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第五十八幕 西の魔女が死んだ


魅せる魔女修行    映画 『西の魔女が死んだ』

『西の魔女が死んだ』 ポスター


「魔女が倒れた。もう、だめみたい」と、ママ(りょう)。 
 
 中学三年生のまい(高橋真悠)とママは、車で、倒れた、田舎のおばあちゃん(サチ・パーカー)の元へと向かいます。

 車の外では、ぽつぽつ雨が。

 だんだん雨は強くなってくる。

 「ワイパー!」

 「ああ、雨が降っているのね」

 まいは、ポケットからハンカチを取り出し、ママに渡しました。

 西の魔女とは、田舎のおばあちゃんのこと。

 ママは真面目な顔で、「あの人は、本物の魔女よ」と、まいに打ち明け、以後、二人だけのとき、おばあちゃんを「西の魔女」と呼んでいる。

 まいは、二年前、西の魔女のもとで暮らしたことがありました。

 中学校に行くのが嫌になり、「わたしはもう学校へは行かない。あそこは私に苦痛を与える場でしかないの」と登校拒否宣言をした、扱いにくい子のまいを、観念したママが、空気のいい田舎のおばあちゃんのところで、ゆっくりさせることに決めたからでした。

 まいは、小さい頃からおばあちゃんが大好きだった。

 「おばあちゃん、大好き」と、事あるごとに、まいは、連発し、「アイ・ノウ」と、おばあちゃんは応えるのでした。

 にやりと笑いながら、まいたちを出迎えたおばあちゃんは、実は、魔女でした。

 魔女といっても、黒い服を着て、箒(ほうき)に乗ったりするのでなく、身体を癒す草木に対する知識や、荒々しい自然と共存する知恵、予想される困難をかわしたり、耐え抜く力、それに、特殊な能力、予知能力を持っていました。

 「おばあちゃん、わたしもがんばったら、その超能力が持てるようになるかしら」

 「そうね、まいは生まれつきそういう力があるわけではないので、相当努力しなければなりませんよ」

 「わたし、がんばる」

 こうして、まいの魔女修行が始まりました。

 しかし、まいの心を乱す存在がありました。向かいの家のゲンジ(木村祐一)です。

 ゲンジの不躾さに、まいは我慢なりません。

 しかも、おばあちゃんが、ゲンジをかばいだてするのでいっそう腹が立ちます。

 おばあちゃんから、不安に思っていた死後のことを聞いて安堵し、順調に行っていた魔女修行も、まいのお気に入りの場所、まいのサンクチュアリにゲンジが不意に侵入したことから、とうとう、まいは、爆発します。

 ゲンジへの怒りがおさまらないまいは、とうとう、おばあちゃんにろくに最後の挨拶もできませんでした。

 梨木 香歩 のベストセラーを映画化したこの作品は、ほぼ忠実に原作を映像化しています。

 人間関係に病んだまいは、自然あふれる田舎で気力を回復し、家庭の事情もあって、新天地で無事学校生活を送ります。

 ときとして、おばあちゃんの考えは、実のママでさえも押し潰されるくらいの精神的圧迫感を与え、未熟なまいはなお、おばあちゃんの慈愛に満ちた思いやりを疎ましく思い反発するのですが、最後の最後、おばあちゃんが、自分にあてたメッセージに接したとき、その過ちに気づきます。

 この最後の最後が、原作の、そして、映画の、核心です。

 おばあちゃんの、心の底からの愛に胸打たれます。

 映画「西の魔女が死んだ」の衝撃を体験あれ。




投稿者: 今井 政幸 


『西の魔女が死んだ』 公式サイト




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第五十七幕 ザ・マジック・アワー

It's Only A Paper Moon. But・・・  映画『ザ・マジック・アワー』

映画『ザ・マジック・アワー』ポスター


ここは港街・守加護(すかご)。

 街を牛耳っているギャングのボス手塩幸之助(西田敏行)の愛人高千穂マリ(深津絵里)に手を出した「赤い靴」の支配人・備後登(妻夫木聡)。

 マリと備後の二人が、港ホテルの一室でねんごろのところに、二人の関係を知った手塩の腹心・黒川裕美(寺島進)らが押しかけてくるところから映画は始まります。

 手塩の前に引き出された備後は、マリのとりなしもあって、伝説の殺し屋デラ富樫(?)を手塩に引き合わすことを条件にその場は救われます。
 
 が、命惜しさに、出まかせで、デラ富樫の知っていると答えてた備後にデラ富樫を探し出す当てはなく、むなしく時はただ過ぎていき、約束の期日が迫ったとき、窮地に立たされた備後に閃いたのは、デラ富樫の替え玉を用意することでした。

 かくして、備後は、映画撮影所から、売れない俳優・村田大樹(佐藤浩一)を、撮影と偽って、首尾良く連れ出し、台本なしのぶっつけ本番とばかりに、村田を手塩に引き合わせます。

 手塩が、伝説の殺し屋・デラ富樫にぜがひでも会いたかったのは、デラ富樫が、街で対立する対抗勢力のもう一方のボス江洞潤(香川照之)に雇われ、手塩の命を狙ったからでした。

 事務所にはその時の弾痕の跡が生々しく残っていました。

 映画の撮影と信じて疑わない村田は、本物のギャングの手塩の前で、余裕で演技を繰り広げますが、事情を知った備後は真っ青でした。

 かくて、スクリーンにアップで映しだされる自分の姿にあこがれる村田と、うすうすなにかおかしいと感じてる村田のマネージャー長谷川謙十郎(小日向文世)と、本物のギャングたちと、備後の嘘がばれないよう備後をサポートする「赤い靴」の従業員・鹿間隆(伊吹吾郎)、鹿間夏子(綾瀬はるか)、港ホテルの女主人マダム蘭子(戸田恵子)たちとが繰り広げる、誤解が誤解を呼ぶこの騒動は、・・・。

 マジックアワーとは、日没後の、「太陽は沈み切っていながら、まだ辺りが残光に照らされている、ほんのわずかな、しかし最も美しい時間帯」を指す映画用語です。かつて見た映画「暗黒街の用心棒」のニコ(谷原章介)にあこがれて映画俳優となった村田が、見事な夕焼け空をバックに説明します。
 
 まるで、セットのように見える、Y字路にたつ、港ホテルから始まるこの映画は、虚虚実実、うそとまことが、入り乱れます。
 
 そんな物語の中、マリが手塩に所望され、クラブ「赤い靴」で歌うシーンで、マリは、三日月のセットに腰掛けて歌を唄います。
 
 この三日月のセットが意味するものがこの映画の主題です。


 Say it's only a paper moon
 
 Sailing over a cardboard sea

 But it wouldn't be make believe
 
 If you believed in me

 
 ボール紙に書いた海の上に浮かぶ紙の月でも、あなたが僕を信じてくれるなら本物になる


 映画「ペーパームーン」でおなじみの唄の内容そのままに、映画作りを支える製作スタッフらが結集して、ギャングや殺し屋に立ち向かった時、嘘から姿をあらわす本物。

 ビリー・ワルダー風に、三谷幸喜がコメディで綴ってわたし達をいざなった作り物のような港街での物語「ザ・マジックアワー」。

 良質な作品です。




投稿者: 今井 政幸 


『ザ・マジック・アワー』 公式サイト



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第五十六幕 JUNO/ジュノ

ジュノが見つける真の愛     映画『JUNO/ジュノ』

映画 『JUNO/ジュノ』


季節は秋。始まりは椅子だった。

 バンド仲間のポーリー(マイケル・セラ)との一回のセックスで妊娠してしまったジュノ(エレン・ペイジ)はまだ16歳の高校生。

 親に知れずに堕胎が出来るクリニックで中絶しようとしますが、病院前で、中絶反対運動をやってる同級生の、「赤ちゃん、おびえているわ。痛みも感じるし、ツメも生えてるのよ」の言葉が効いてか、堕胎を止めました。

 真っ先に妊娠を打ち明け、相談相手になってくれてる親友リア(オリヴィア・サルビー)と一緒に、ペットの里親募集欄と並んで出ている、情報誌の養子縁組欄で、裕福なカップル、マーク(ジェイソン・ベイトマン)とヴァネッサ(ジェニファー・ガーナー)を見つけ出し、父マック(J・K・シモンズ)、継母ブレン(アリソン・ジャネイ)に、事情を説明します。

 娘の打ち明ける重大発表が、ヤクでも、退学処分でもないことに安堵する親たちは、申し分ないジュノの提案に賛同します。

 さっそく、高級住宅地にあるマーク夫妻の家を訪れるジュノと父。

 養子提供の代償に多額な金額を要求されるやもと考えてもいたマーク夫妻は、ジュノの、高校生の自分には生まれてくる子供に満足な養育を与えることは出来ない、という率直な説明を聞いて安堵。

 かくて、養子縁組は無事成立します。

 冬が来て、ジュノのお腹は順調に大きくなって、超音波検査で、はっきりと赤ちゃんの画像が映し出される程に。

 ジュノは、すぐに、写真を手に、マーク夫妻を訪ねます。ヴァネッサは留守でした。

 すでに、養子縁組時に、レスポールで盛り上がったジュノとマークは、意見の対立するホラー映画で盛り上がり、そこに帰ってきたヴァネッサが訝るほどに、ジュノとマークと接近していて、そんなジュノの内心を見透かしたかのように、継母ブレンは、「世の中には、ルールがある」とジュノをたしなめるのでした。

 春が来て、ポーリーが、女の子を、プロム(学年の最後に催されるフォーマルなダンスパーティ)に誘ったと聞いて、ジュノはポーリーに怒りをぶちまけますが、ジュノのお腹の子の父親が自分でありながら、蚊帳の外に置かれていたポーリーは、逆に、ジュノにくってかかります。

 さらに、ポーリーが、好意を寄せてると解釈してたマークは妻と別れるとまで言い出して。

 マーク夫妻の離婚の危機を知って、ジュノが父マックに問います。

 「ふたりの人間は永遠に一緒にいられるの?」

 父マックも、ジュノの実母とは離婚しています。父は答えます。

 「何より大事なのは、ありのままのお前を愛する人を見つけること」。

 夏が来て、ジュノは、・・・。


 映画プロデューサーが、ネットサーフィン中に彼女のブログを見つけ、その面白さに夢中になって、シナリオを発注したディアブロ・コディの始めての脚本が、アカデミー賞をとりました。

 シニカルなブラックジョークで味付けされた鋭い人間批判は、同時に、ジュノの幸せを願う暖かな優しい目を持っています。

 ウディ・アレンを思わす知的ジョークは、人生の機微を的確に見通して小気味よく、なお、幾層も多重に知恵が積み重なっていて奥深いです。

 
 キュートなエレン・ペイジに、ころっとやられる映画「JUNO/ジュノ」を堪能あれ。




投稿者: 今井 政幸 


『JUNO/ジュノ』 公式サイト



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第五十五幕 ぐるりのこと。

噛みしめる味わい  映画 『ぐるりのこと。』

映画 『ぐるりのこと。』 ポスター

 
 美大で知り合った翔子(木村多江)とカナオ(リリー・フランキー)はいつしか一緒に暮らしていたが、結婚式もあげてはいませんでした。

 翔子は、絵画とは無関係の、小さな出版社で編集者。カナオは、靴修理屋に。

 そんなカナオの前に、テレビ局に勤める夏目先輩(木村祐一)が現れ、カナオの画力を見込んで、カナオに法廷画家の職を斡旋するのでした。

 諸井(八嶋智人)にほおっておかれて、右も左も分からない初日のカナオに、他局ながらも、安田(柄本明)がなにかとカナオの面倒をみてくれて、ようやく、なんとか、法廷画家、カナオの初日が始まりました。

 どんなことがあっても、決めたことはきちんとこなさないと気が済まない翔子。

 その場の気分のありようで、融通無碍にことを処したいカナオ。

 二人の性格は必ずしも一致していません。

 カナオの優柔不断さに業を煮やした翔子は、別れる、と言い出したりもします。

 収入の乏しいカナオを、翔子の母(倍賞美津子)も、兄(寺島進)も兄嫁(安藤玉恵)も、決して快く思ってはいませんでしたが、翔子に赤ちゃんも出来たことから、不動産屋で、羽振りのよい、妹思いの兄は、多額の祝いの金を差し出すのでした。

 しかし、生まれてきた赤ちゃんは、すぐに、その幼い命を失いました。

 初めての子供を失った翔子は自分を責め、次第に、心を病んでいきます。

 兄の薦めで、引っ越しをする翔子でしたが、ささいなことにも怯えて反応する翔子の鬱さは、誰の目にも明らかになっていくのでした。

 「連続幼女誘拐殺人事件」。「オウム地下鉄サリン事件」。「音羽幼女殺害事件」。「池田小児童殺傷事件」。

 カナオが法廷画家として立ち会った事件を通して、病んでいく日本の社会の姿も垣間見られます。

 敏感に欺瞞を感じ取り、いたたまれなく、会社を辞めた翔子は、心療内科に通院するのでした。

 この映画は、夫婦が、苦悩を味わいながらも、やがて、明るい日々を取り戻す、二人の強靱な絆を描いています。

 苦悩と苦痛の末に得た明るさと喜びは、夫婦二人だけが、確かな実感として体得しえたものでしょう。

 映画は決して詳しく翔子の回復する過程を説明するものではありません。

 「どうして私と一緒にいるの?」

 「好きだから、一緒にいたいと思っているよ。」

 カナオの、決して翔子を離さない決意と、たまらず翔子が逃げ込んだ庵がいつしか翔子の心を癒したことなのでしょう。


 二人だけの、噛みしめた味わいが滲み出る、映画「ぐるりのこと。」、捨てがたい作品です。




投稿者: 今井 政幸 


『ぐるりのこと。』 公式サイト



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第五十四幕 メタルマクベス

ヘヴィメタ・サウンドが吠える   ゲキXシネ『メタルマクベス』


メタルマクベス


 ゲキXシネ「メタルマクベス」は、2006年に公演の、劇団☆新感線の舞台「メタルマクベス」の映像化作品です。脚色は宮藤官九郎。

 2206年。荒野と化した東京は、いくさが繰り返されていました。

 いくさで勝利を収めたESP王国の将軍ランダムスター(内野聖陽)は、親友エクスプローラー(橋本じゅん)と共に、城へと帰る途中、三人の魔女に逢います。

 魔女達は、ランダムスターに、彼がいずれは王位につくことを、エクスプローラーには、王にはならないが、王を生み出すことを告げるのでした。

 おなじみシェークスピアの『マクベス』を脚色したこの「メタルマクベス」は、魔女達が、ランダムスターに、予言めいた曲が入っている、1980年代に活躍したヘヴィ・メタルバンド「メタルマクベス」のCDを手渡したことから、舞台は、2206年の「マクベス」になぞったESP王国の物語と、1980年代の、メタルバンド「メタルマクベス」のメジャーデビューの様子とが交互に進行していきます。

 メタルバンド「メタルマクベス」は、その実力でファンをつかみ、メジャーデビューを果たそうとしていました。

 メタルマクベスを売り出すべくプロダクションもつきますが、その元社長(レスポール王:上条恒彦)は息子、元きよし(レスポールJr.:森山未來)を演歌歌手として売り出すべく、メタルマクベスは、そのバックバンドとしての地位に甘んじなければなりませんでした。

 そんなメタルマクベスを、メタルバンドとして売り出すべくローズ(ランダムスター夫人、林B:松たか子)がマクベス内野(ランダムスター:内野聖陽)に言い寄るのでした。

 かくして、メタルマクベスは、メジャーデビューを果たし、CDも発売の運びとなるですが、その後の路線の行き違いから、マクベス内野は、メタルを良く思わないパンク・グループに取り込み、バンクォー橋本(エクスプローラー:橋本じゅん)を追い落とすのでした。 

 宮藤官九郎が仕掛けたこの二重構造によって、舞台にはヘヴィメタ・サウンドが充満し、レスポール王を暗殺するランダムスターの野心が激情となってほとばしります。

 『マクベス』をヘヴィメタ・サウンンドで彩る大胆なこのアイデアに、わたしたちの心は否が応でも躍ります。

 くわえて、魔女達の予言が的中したが故に、王殺害後、新たな王の誕生との予言におびえ、遂には、夫婦共に破滅を迎える『マクベス』の物語が、バンクォー橋本を亡き者とした後の、グループの衰退と、その衰退をもたらした原因が、マクベス内野とローズの、(才能の)小さな者が大きな者をめざしたがゆえに迎えた破綻として補足説明されます。

 メタルバンド「メタルマクベス」の曲目に、わたしたちもシャウトせずにはいられない、ゲキXシネ「メタルマクベス」。

 これにのれなきゃ、損かも!




投稿者: 今井 政幸 


『メタルマクベス』公式サイト




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第五十三幕 光州5・18

笑顔が消えた婚礼写真    映画 『光州5・18』

 1980年。前年・10月、パク・チョンヒ大統領が暗殺された韓国では、同・12月にチョン・ド・ファンがクーデタで軍部を掌握したとはいえ、3月には、ソウルの春と呼ばれる、民主化のムードが各大学に高まっていた。

 が、5月17日。チョン・ド・ファン国軍保安司令官が権力を掌握し、全国に非常戒厳令を敷きます。さらに、空挺特別部隊を各大学に進駐させ、学生達の暴動にそなえるのでした。緑濃い、のどかな田園風景の広がる光州。チョンナム大学もまた、戒厳令の軍隊に囲まれました。

 そんな緊迫感とは無関係に、カン・ミヌ(キム・サンギョン)は、高校生で、ソウル大学をめざす、親が死に、二人だけでいる、弟ジヌ(イ・ジュンキ)と教会で一緒してる、お目当てのパク・シネ(イ・ヨウォン)と念願の、3人デートが叶い、映画館で、共に映画を楽しんでいました。

 映画も佳境に入ったとき、館内に催涙ガスが流れ込み、扉を開けて、逃げまどう学生が入ってきます。映画館の外では、異変が起きていました。チョン・ド・ファン辞任を連呼する学生たちに対し、軍は、情け容赦なく襲いかかっていたのでした。

 軍にこん棒で滅多打ちされる学生たちは血まみれ。逃げまどう学生たちすらも、しつこく軍隊に追われるのでした。慌ててその場から立ち去ろうとする市民の流れに押され、はみ出たシネも、学生と間違われ、しつこく戒厳軍に追い狙われてしまう程でした。

 翌日、ジヌが高校に行ってみると、親しい友人の机の上に、弔いの花があったのでした。

 この映画は、当時、暴徒として弾圧、射殺されながらも、実は、怒りに燃え立ち上がった、光州市民たちの、軍隊と戦った、光州事件の記録です。

 過去にあった、悲惨な出来事を忘れまいとする強固な意志が、映画を支えます。荒削りの、決して緻密に構成されつくしたとはいえないがさつな作りのこの映画が、それでも、われわれの目を離さないのは、理不尽な作戦によって命を奪われた人たちへの哀悼と、賞賛と、反省が窺えるからでもありましょう。

 みんなの笑顔で溢れた記念写真と、花嫁の笑顔が消えた、死後結婚写真。対比する二枚の写真が静かにわれわれにさとす、過去の物語は、重く心にのしかかるのでした。




投稿者: 今井 政幸 





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