幻三郎旅日記 第二話 「決闘! 二十四 対 一」 その2 (小説)

深い霧に覆われた小さな草原。


 既に草花はほとんど踏みしだかれ、背の高いものは皆無である。所々で黒っぽい土が剥き出しになってさえいる。

 
 弥陀ヶ原幻三郎は、忍び装束姿の二十四人の男にぐるりと取り囲まれていた。男達は、いずれも衛士という名に相応しい屈強の者ばかりである。

 その囲みは、幻三郎を中心として、半径五間の完全な円を描いていた。幻三郎が一歩動けば、囲みも動き、常に同じ状態を保ち続ける。

 
 衛士達は無言だった。表情もない。

 幻三郎は確かに 『天敵』 と名乗り、岬護幽一郎を殺したと宣言した。それでも衛士達は、動揺や憎悪を顔に出すことは一切しない。

 殺気もなく剣を構え、幻三郎を取り囲んだきりである。斬り掛かる様子を全く見せないのだ。












投稿者:クロノイチ





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[ 2017/03/27 23:31 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

幻三郎旅日記 第二話 「決闘! 二十四 対 一」 その1 (小説)

弥陀ヶ原幻三郎の行く所、必ず闘いの風が吹き荒れる。


 長年の兵法修行の過程で、あまたの武芸者の命を奪ってきた幻三郎には、彼を仇として付け狙う大勢の敵がいた。


 彼の剣名を伝え聞いて、腕試しにやってくる命知らずも後を絶たない。それゆえ彼は、全国どこにいようと、闘いを挑んでくる相手には不自由しなかった。

 
 時は元和四年(西暦一六一八年)、夏。大坂夏の陣において豊臣家が滅亡してから、三年が過ぎている。江戸幕府の統治の下、日本に長い泰平の時代が訪れつつあった。

 それでもなお、幻三郎の周囲では、常に戦国の時代の血生臭い風が、相も変わらず吹き続けているのである。












投稿者:クロノイチ





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[ 2017/03/21 16:17 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)