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第十一幕 ゾディアック

恐怖の向こう側 映画「ゾディアック」

 この映画で出色な凝縮した場面は、キャスリーン・ジョンズがゾディアックに襲われた後のシーンでしょう。

 10ヶ月の赤ん坊と共に、親切さに騙されて乗せられた、走ってる車から放り出される。
 救いを求めるために車道でトラックを止めたものの、近づいてくる人が自分を助けてくれる人なのか、襲う人なのか判別つかない。
 キャスリーンは、ただ、言葉にならない言葉を発して喚くだけ。

 「ゾディアック事件」がいかに被害者に甚大な傷をおわせたかが一目で解る、すぐれた表象シーンです。

 謎めいた暗号と共に新聞社に送りつけられたゾディアックの犯行声明。
 新聞社に風刺漫画家として勤務するローバート・グレイスミスの原作をもとに「セブン」の監督デビット・フィンチャーが映画化したこの作品は、事実に拘るあまり、ときには、いくども、タクシー襲撃現場が映し出されたりして、テンポを欠いてはいるものの、姿が見えない犯人を突きとめようとする刑事や記者や原作者の真摯な姿は画面から伝わります。
 
 しかし、その真摯な姿は、時として、犯人を挑発し、自らが犯人のターゲットにもされてしまい、脅迫状を送りつけられる事件記者ポール・エイプリー。
 
 グレイスミスの家にかけられてくる無言電話。

 いっこうに進展しない捜査に業を煮やしたエイプリーは、司法省に捜査に参加させろとの手紙を幾度も書き、断られ、酒とドラッグに溺れてくはめに。

 犯人を追うあまりに、コラムに実名を公表し、テレビにも出演した、家族の安全にまったく配慮がないグレイスミスは、家族から見放され、離婚へと。


 事実にもとづいたこの映画がスクリーンに映し出したものは、栄光ではありません。
 
 事件から外された敏腕刑事。

 一流新聞社を去り、三流新聞社へと墜ちた事件記者。

 家族から見放された風刺漫画家。

 彼らが味わった挫折と苦悩。そして恐怖。貴重な彼らの体験こそがこの映画が映し出したものです。

 「この映画を見た誰かが、あるいは本を読んだ誰かが、暗号文を解読してゾディアックの言葉を解明し、その名前と所在を我々に告げてくれることを、私は今でも期待してる」。

 安全に対し、あまりにも無頓着なグレイスミスが唯一恐怖を実感する、とある情報提供者の家でのエピソードは、スクリーンを見てるだけのわれわれにも、恐怖の向こう側に横たわる虚無の暗黒をしっかと伝え、フィンチャーの腕前が一流であることをまざまざと見せつける一作です。




投稿者: 今井 政幸


「ゾディアック」公式サイト

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酒鬼薔薇の事件

ゾディアック事件は、例の神戸の事件を起こした少年(今は青年になっているが)が、信奉者だということで、有名ですね。
[ 2007/07/03 12:49 ] [ 編集 ]

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