第五十五幕 ぐるりのこと。

噛みしめる味わい  映画 『ぐるりのこと。』

映画 『ぐるりのこと。』 ポスター

 
 美大で知り合った翔子(木村多江)とカナオ(リリー・フランキー)はいつしか一緒に暮らしていたが、結婚式もあげてはいませんでした。

 翔子は、絵画とは無関係の、小さな出版社で編集者。カナオは、靴修理屋に。

 そんなカナオの前に、テレビ局に勤める夏目先輩(木村祐一)が現れ、カナオの画力を見込んで、カナオに法廷画家の職を斡旋するのでした。

 諸井(八嶋智人)にほおっておかれて、右も左も分からない初日のカナオに、他局ながらも、安田(柄本明)がなにかとカナオの面倒をみてくれて、ようやく、なんとか、法廷画家、カナオの初日が始まりました。

 どんなことがあっても、決めたことはきちんとこなさないと気が済まない翔子。

 その場の気分のありようで、融通無碍にことを処したいカナオ。

 二人の性格は必ずしも一致していません。

 カナオの優柔不断さに業を煮やした翔子は、別れる、と言い出したりもします。

 収入の乏しいカナオを、翔子の母(倍賞美津子)も、兄(寺島進)も兄嫁(安藤玉恵)も、決して快く思ってはいませんでしたが、翔子に赤ちゃんも出来たことから、不動産屋で、羽振りのよい、妹思いの兄は、多額の祝いの金を差し出すのでした。

 しかし、生まれてきた赤ちゃんは、すぐに、その幼い命を失いました。

 初めての子供を失った翔子は自分を責め、次第に、心を病んでいきます。

 兄の薦めで、引っ越しをする翔子でしたが、ささいなことにも怯えて反応する翔子の鬱さは、誰の目にも明らかになっていくのでした。

 「連続幼女誘拐殺人事件」。「オウム地下鉄サリン事件」。「音羽幼女殺害事件」。「池田小児童殺傷事件」。

 カナオが法廷画家として立ち会った事件を通して、病んでいく日本の社会の姿も垣間見られます。

 敏感に欺瞞を感じ取り、いたたまれなく、会社を辞めた翔子は、心療内科に通院するのでした。

 この映画は、夫婦が、苦悩を味わいながらも、やがて、明るい日々を取り戻す、二人の強靱な絆を描いています。

 苦悩と苦痛の末に得た明るさと喜びは、夫婦二人だけが、確かな実感として体得しえたものでしょう。

 映画は決して詳しく翔子の回復する過程を説明するものではありません。

 「どうして私と一緒にいるの?」

 「好きだから、一緒にいたいと思っているよ。」

 カナオの、決して翔子を離さない決意と、たまらず翔子が逃げ込んだ庵がいつしか翔子の心を癒したことなのでしょう。


 二人だけの、噛みしめた味わいが滲み出る、映画「ぐるりのこと。」、捨てがたい作品です。




投稿者: 今井 政幸 


『ぐるりのこと。』 公式サイト



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この映画も見応ぇありそぅですね
自分とダブるトコロも多そぅw
[ 2008/06/12 23:24 ] [ 編集 ]

味わい深いです。
風呂場での二人のじゃれあいシーンは、わたし、好きです。
[ 2008/06/12 23:31 ] [ 編集 ]

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