FC2ブログ


















第23回 エッチなパンツでお送りする『幻の豚骨ラーメン』

闇に見え隠れする やさい 嬢 の 目
闇に見え隠れする やさい 嬢 の 目


 寒い。クソ寒い。歯がガチガチしてきた。

 ホントにあのクソ台の前に3時間も座っていた俺はバかだ。気付いたら、もう500円しかポケットには無い。

 しかも俺は今、無性にラーメンを食いたい。あの油たっぷりの、コッテコテの豚骨。

だけど豚骨が500円で食えるかっつーの。安い店で醤油か塩だな。ビールも飲めねぇ。

 あぁ、寒い寒い。タバコ吸お。

 どうでもいい女と会った喫茶店で取ってきた紙マッチで火をつけた。

 ふぅー、うめー。

  ちっくしょ、ラーメン屋がここらにあればなぁ。

 溜め息と煙を吐き出した。

 「ん?!」 煙の向こう側に屋台が見える。いや、俺の吐いた煙は屋台の鍋から出ている蒸気じゃないのか?

「いらっしゃい!」

 おぉ、いいねぇ。ホッとするこの空間。

「お客さん、何にする?」

「豚…いや、今日は醤油で」

「お客さん、ホントは豚骨にしたいんでしょ」

「何で分かったんすか?いや、そりゃそうだけど、俺、今日、500円しか持ってないんスよ」

「いいの、いいの。お客さんで今日はもうしまうから。サービスしとくよ。豚骨だね?」

「はぁ…すいません」

 俺はラッキーだ。あのパチンコ屋のクソ台のこともこれで帳消しになる気がしてきた。

「はい、おまちどう!」

 これだよ、これ!立ち上る湯気にチャーシュー5枚。くそっ、嬉しいぜ!恥ずかしいが顔がニヤけるのが自分でも分かる。

「おじちゃん、いいなぁ」

 斜め下を見たら、おかっぱ頭のガキがいた。

 今時この頭はねぇだろ。どういうセンスしてんだ、親。

「おじちゃん、お腹すいた」

 はい?なんだこのガキは。俺だってなけなしの500円払ってこれ食ってるんだっつーの。

「母ちゃんにラーメン作ってもらえ」

「お母さん、いない」

 ニヤけていた俺の顔が、一気にへの字にゆがんだ。

 マジかよ。最近は幼児虐待とか、やっぱ多いのか。

 仕方ねぇな。

「大将、子供用の茶碗とかあります?」

「はいよ」

 こうしてこの座敷わらしみたいなガキは、俺のラーメンを半分近く食いやがった。

「ごちそうさま。また来るよ」

「ありがとうございます。でも、あなたが最後のお客さんなんですよ。もう、この商売もきつくてねぇ」

「そうなんすか。おいしかったのに」

「まぁ、またいつか再開しますよ」

「ホントっすか?!いや、見かけたら絶対行きますよ!こんなに絶妙な豚骨、初めてです」

「ありがとうございます。また、その時は寄って下さいね。お待ちしております」

 うーん、実に美味かった。あのガキさえいなければ、俺は全部あの豚骨を食えたのに。

 空気が凍りそうで、星がきれいだ。

「あっ」

 俺はふっと後ろを振り返った。さっきまでのいい気分が何処かに吹き飛んだ。

 あいつだ!さっきの座敷わらし!!

「おじちゃん、寒い」

「そりゃ冬だからだ」

 なんでこんなガキに俺は付きまとわれてんだ、と思ったその時。

「おじちゃん、寒いよ。おうち泊めて」

 はぁ―――?!

 ダメだ、今日はもうダメだ。明日になったらとっとと警察に突き出してやる。

「あ―――疲れた!今日だけだからな!!」

 なんでこんなガキのお守りをしてるのか。訳が分からん。

 しかし、気付いたら深い眠りに落ちていた。

 お、すげぇ。豚骨の匂いが部屋に充満している。へ、夢でもラーメンか。こりゃいいや。

「お待ちどうさま」

 目が覚めた。豚骨ラーメンが俺の部屋の小さなテーブルの上に置かれていた。しかも屋台のおっさんじゃない。

 目の前にいるのは、俺好みの、俺好みの、美女だ。

「お母さん出てきたよー」

 なんだ座敷わらし。「出てきた」ってどういうことだよ。

「この度は、娘がお世話になりまして…」

「…はぁ。ってか、お前、ちゃんと母ちゃんいるじゃねぇか」

「うん。だけどねー」

 美女がいきなり、着ていた服を脱いだ。体に無数のアザが出来ていた。

「実はウチの夫、DVがひどいんです。あの、毎日豚骨ラーメン作りますから、…どうかここに置いて下さいっ!!」

 美女のラーメンは絶妙な美味さだった。

「…まぁ、あんたが良きゃ、…いいよ」

「ありがとうございます」

 美女のうなじが見えた。もうダメだ。ラーメンの比じゃねぇ。そう思ったら堪らなくなった。

 奥の部屋に連れこんで、美女とセックスをした。来る日も来る日も。

「…妊娠、したみたい」

「産んでくれよ!俺の子を!」

「…あの、5つ子みたい」

 ぶはぁっっ。豚骨スープが口から吹き出た。

「が…ガンバるわ…」

 チャーシューの歯ごたえに肉の生々しさを感じた途端に味が分からなくなった。

 子供が生まれた。こいつらはよく食う。あっという間に、貯金が底をついた。俺のチャーシューが減る。

 5枚が4枚、4枚が3枚、チャーシューが1枚になった時、俺は言った。

「…もう、俺、限界だよ」

 美女の妻は優しく微笑んだ。

「大丈夫よ。私に任せておいて」

 何故か今日のラーメンを食ったら、猛烈な眠気がきた。


 目が覚めた。

 気が付けば俺はロープでぐるぐる巻きに縛られ、身動きが出来ない。

 ギャーギャー泣きわめく俺の子供たち。うるさい。うるさい。助けてくれ!

「大丈夫よ。痛くないようにするから」

 天使の微笑みが悪魔に変わった。


「あなた~~~!!」

「おぅ、久しぶり!いい素材が入ったかね」

「うふふ、もちろん。あなた、これでまたお店を再開できるわね」

「あぁ。んで、あんた、また子供作っちゃったの?ダーメじゃない!」

「だってぇ、良かったんだもん。アレが」

「ったく、お前にゃ参るよ」

「でも、おかげで『幻の豚骨ラーメン』の味が出せるんでしょう?」

 ふふっ、と美女は笑った。


 今頃、俺はスープの中だ。




投稿者: やさい



[人気blogランキング] ←クリック投票に協力して下さいませっ!
関連記事




人気ブログランキングへ にほんブログ村 その他趣味ブログ 多趣味へ ←クリック投票に協力して下さいませっ!


コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する



やさいさんの小説は、中々面白かったですよ。
これを読むと、ラーメンが食いたくなった、チャーシューメンは止めて、野菜味噌ラーメンにしますか。
[ 2008/07/01 21:43 ] [ 編集 ]

>キムチネコさま
わーい♪ありがとうございまーす!!何故か「1杯のかけそば」からこんな展開になりました!!
最近は中華料理屋で読む週間誌の小説「下町ロケット」が面白いと思います。フィクションは2回目ですが、書いてて感情移入しちゃうのが自分でも面白いです!!
[ 2008/07/02 00:13 ] [ 編集 ]

おお、ブラックが入っててなかなかですな。最後の、どんでん返しの展開もいいね。
ということで、ポチ!
[ 2008/07/02 12:32 ] [ 編集 ]

ラーメンを…

食った男は『先に豚骨になった男』の夢を見たのだろうか?
[ 2008/07/02 20:23 ] [ 編集 ]

>山口さま
ありがとうございます♪
原案は「一杯のかけそば」と童話のゴッタ煮です!
[ 2008/07/03 14:00 ] [ 編集 ]

>ぐっちゃん
ご飯食べてますか?!「幻のラーメン」には要注意ですよ!(笑)
[ 2008/07/03 14:05 ] [ 編集 ]

…はっ!
酔っ払ったらいつの間にか読んでた!

良いものは良い。

傑作!!!
[ 2008/07/03 21:28 ] [ 編集 ]

おはよぅござぃます!
元気にしてますか?

やさぃさんのオリジナル小説だったのですね
読み始めてフィクションなのかノンフィクションなのか
んん?と思っている間に終り近くになり
やっと理解した次第であります!

読み終ぇた後、
阿刀田高先生の『食卓はいつもミステリー』を
思ぃ出しました

また来週も楽しみにしています!
[ 2008/07/05 09:30 ] [ 編集 ]

(・・)/
俺を食わんで

[ 2008/07/06 16:04 ] [ 編集 ]

>SINさま
あ、ありがとうございます~涙、涙。中華料理屋で一気に書きました…が、食ったものはチャーハンだった気がします(笑)。
[ 2008/07/07 10:19 ] [ 編集 ]

>LoveSupplyさま
おはようございます♪体は疲れても心は元気よ、なんつって。
ここまでいい意味でLoveさまを騙せたのなら本望です!Loveさま料理得意そうですね!幻の何か美味いモン作って下さい
[ 2008/07/07 10:27 ] [ 編集 ]

>まっちゃん
まっちゃんのぉ~、クチビルぅ~は美味そうじゃのぉ~、ゲヘへ~♪(野菜おやじ)
[ 2008/07/07 10:32 ] [ 編集 ]



・)






サッ


。。

[ 2008/07/07 14:25 ] [ 編集 ]

>まっちゃん
照れてる~♪かわいいのだ~♪
[ 2008/07/09 06:40 ] [ 編集 ]





(・)


可愛い言われた







[ 2008/07/09 17:56 ] [ 編集 ]

>まっちゃん
まっちゃんの可愛い口が開いてる~
ワシは口開けて飲んでる~
[ 2008/07/09 21:29 ] [ 編集 ]

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://anthony3b.blog108.fc2.com/tb.php/1259-a9b8b9a7