
光の奇跡と やさい 嬢"
20ΧΧ年。
女性への暴行による凄惨な事件が後を絶たなくなった日本で、政府は、「異常性行為対象のメディア規制」と称し、極めてノーマルな性的シーン以外の出版、上映、その他不特定多数に向けての性的行為の露出を厳しく取り締まっていた... 特に、出版物と映像の規制は厳しかった。本や映像のソフトを所持しているだけでも50万円の罰金。制作者には3年以内の刑が下された。
しかし、あたしの回りでは、実に多くの仲間が姿を消していた。あたしも、うかうかしてらんない。
あたしは、現在はDVDやビデオやフィルムの密売で生計を立てている。
メールが来た。
「おいしいケーキ出来たよ!取りに来て!15日の夜6時がいいな♪」
やった。「おいしい」んだったら、100万は確実だ。危険に身を晒して100万は安い気もするけど、1回仕事すれば、3ヶ月は暮らせる。
さぁ仕事だ。
あたしが、危険スレスレのところで仕事をしているのには訳がある。あたしは昔、この手の仕事をしていた。女優だった。
たまたま、変な監督に引っ掛けられたのだ。人前で股を開こうが、あえいでる顔が超アップになろう
が、人前で演技するのがメチャクチャ快感で、すっかりハマってしまったのだ。
でもあたしが出演したDVDはほとんど処分されているはずだ。
あたしは、あるか無いかの可能性にかけて、それを、取り戻す。
夜6時。色褪せた高層マンションの一室のインターホンを押す。
あたしの顔を確認してから、ドアが開いた。
「ちィーす」
「マグさん、おひさ」
DVDを流してくれるマグさんは、昔、マグナム広田という名前で男優をしていた。
マグさんも、いつ訪れるか分からない夜明けを目指して、あたしと活動している。
世の中には、腐るほどお金があるマニアもいて、あたしたちは、そういう人に向けてソフトを流すのだ。マグさんは、どっからかソフトを集めて来る。
「マーグさん、はーやく」
「はいはい、今日のは過去最高だよ」
マグさんは押し入れの箱からDVDを出した。
「これ、キリちゃんが出たやつ」
「うそ」
「ホントだ。パッケージはもう無いけど、中身は正真正銘だ。キリちゃんが家で見れるように、客に渡すのは3日後にしといたけど、大丈夫?」
「うん、いいよ。ありがとう。つーか嘘みたい」
マグさんにお礼を言って、あたしはマンションを出た。
嬉しい。嬉しい。こんな日は何を飲もう。考えるのも束の間、コンビニで安いビールを買って、小走りで家に帰った。
家で缶ビールを片手に、マグさんから貰ったDVDを見た。画面のあたしは、これでもかというほどメチャクチャだった。
へぇー、あたしこんなことしてたんだ。ニヤニヤしながら色々思い出したけど、自分の10年前が不意に恥ずかしくなった。
18日。マグさんが書いてくれた地図を頼りに、雨の降る中を目的地へと向かった。
何か嫌な気配がする。
あたしは、傘をたたみ、気配から逃れようとデパートに入った。さすがにこんな所で手出しはしないだろう。
「キリちゃん」
どっかで聞いた声だ。
「久しぶりだね。元気?」
昔、現場で会った女優のクミだ。何でこんなとこで?こいつ何年か前に結婚して足洗ったとか言ってなかったっけ?
「キリちゃん、今なにかマズい物持ってるよね?」
はっ、とした。
何か分からないけど、こいつが寝返ったのは確かだ。どういうこと?
「キリちゃん、あたしの旦那が今近くにいんのよ。旦那がさすがに女子トイレに入るわけ、いかないじゃん?」
クミはあたしの腕を掴んだ。
「放せ」
意外にしっかりしたクミの腕を振り払い、傘でクミを殴った。
「いってぇ」
頭を抱えるクミ。回りがざわつき始めたのが味気ない映像のように目に映る。
あたしは、土砂降りの中を、ひたすら駅に向かって逃げた。
とりあえず遠くに行かなければ。あたしは、乗り換えを繰り返し、落ち着いたところで、マグさんに電話をした。しかし、何度かけても通じない。
電車も終電になり、終夜営業のマックで、ポテトを食べたり、うたた寝をしながら一夜を明かした。マグさんが心配だった。
夜 明けと共にマグさんのアパートへ向かう。なにか、嫌なことになってなければいいが…。
あたしの希望は無惨に打ち砕かれた。あっさりと開いたドアの向こうの、殺風景な部屋は少し、荒れていた。パソコンの配線も切断されていた。
あたしもここにいたらマズイ。自分の家に戻っても、きっと捕まるだけだ。
逃げなきゃ。
何処へ?
遠くへ。
疲れ果てた頭で、なんとなく電車に乗った。揺れる車内の中、いつしか眠りに落ちていた。
子供の頃、あたしは親戚のおじや従兄弟たちによく好かれていた。あたしも、彼らが大好きだった。大人はやさしい。大人は賢い。
あたしも早く大人になるんだ。
実の母は、そんなあたしを見て、罵った。
「この子ったら、子供の癖して、妙にませてるよね。きっと男をたぶらかすようになるよ」
たぶらかす?どういう意味?国語辞典をひいてみた。やっぱりよくわからない。あたしだれもだましてないよ。
おかあさんなんで?なんで?なんで?
あたしは涙で目が覚めた。金輪際会いたくない女を思い出して目が覚めるとは、どういうことだ。
そして、車窓からは海が見えた。嬉しくなって、降りてみた。
海の近くの民宿に泊まることにした。
「珍しいね、女性ひとりで」
と言われたが、
「久しぶりの休みだからね」
と答えておいた。
新鮮な魚介類と素朴なご飯は、ことのほか美味しかった。
波の音が聞こえる。あたしは、何処へ帰るんだろう。
翌朝、朝食をとった後、宿を後にした。
ぶらぶらと、あてどなく歩く。松林を抜けると、また海が見えた。
そこは人気の無い絶壁だった。波がうねる。しぶきをあげる。なんか生きてるみたい。いや、生きてるのか。
なんか人間ってバカみたい。もう吸い込まれてもいいか。断崖の下を除くと、笑いが漏れる。
「キリコさん」
振り返ると、クミと男が立っていた。
「疲れちゃった。アンタ、逃げるの早いんだもん」
「疲れた」は、こっちのセリフだ。何をぬけぬけと。
「キリコさん」
男が言う。
「あなたは、妻の昔の友達だ。今、こちらに来てくれれば、悪いようにはしない」
「アンタが今やってる下らなくて危ない仕事より、ずっと収入もあるよ」
クミが近づいて来た。
「来るな!」
あたしは叫んだ。
「アンタが業界を何と思ってたか分かんないし、そんなのアンタの勝手だよ。だけど、あたしは自分が認められて、世間が何と言おうと自分を出せた世界を潰すのは絶対に嫌だ」
「そんなわがまま言ってるのはキリコさんぐらいなもんですよ。広田に色々やってあげたら、広田も死ぬ前に吐いたんですよ」
クミの旦那が無表情を少し崩した。
「マグさん…」
「まぁキリコさんからも、色々お聞きしないといけませんからねぇ」
マグさんが死んだ。何も考えられないのに、スローモーションでクミと旦那が襲いかかってきた。
「いやぁあ!」
ありったけの罵声を浴びせながらもみ合いになった。
岩壁の先端の柵をあっさりあたしは超えた。
「あたしたち」だなんて言いたくない。こいつらとは一緒に死にたくない!
クミと旦那は空中分解した。ざまぁみろ。金と権力なんか墓場じゃ通用しないぜ。
クミが一番最初に岩に叩きつけられた。次に旦那が頭を割った。
あたしは、更に下に落ちた。幾千もの白波があたしを待ち受ける。
「キリちゃん、ごめんな」
マグさんの声がした。
「マグさん、痛かったよね?あたしがドジ踏んだのかもしれないよ。あたしこそ、ごめん」
「キリちゃん、好きだよ」
マグさんの声が、あたしを包んだ。
「マグさん、あたしも」
あたしは、そう言った。
世界 が
真っ白 に なっ た
投稿者: やさい
[編集長-ひとこと]
『ポルノスター』
なんか、ぞくぞく、する言葉だ。
ちなみに、僕にとっての永遠のポルノスターは
冴島 奈緒 だったが、彼女が自称していた『3000年型の淫売サイボーグ』 とは、うらはらに撮影では一切本番行為はしてなかった。
で、海外のスターはどうよ?と聞かれたら...
トレーシー・ローズ と答えることにしている。(笑)
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面白い小説ですね、感動しました。
面白すぎて最後まで一気に読みました、次回の作品が待ち遠しいですね。
ちょいと、やさいさん。
今回の、いいじゃないですか。すごく。
近未来の設定が秀逸だし、ラストもいい。
いやー、一気に読んでしまった。
すばらしい。
設定はすごいおもしろい!ワクワクした!みごとなやさい風近未来SFですね。
が、正直クライマックスからオチが強引かなと。
連載は大変だと思いますが気力があれば前編後編にわけてみては?
フィクションでもノンフィクションでも楽しみにしてますYO!
第16回
〜赤ちゃんが降ってきた〜
は、日常の実話でしたが、私は今までのやさいさんの作品の中で一番面白く、引き込まれて、ほのぼの読めましたよ!!三拍子も揃っていましたよ。
この作品に限らず、やさいさんの日常生活を綴った文章は、大抵面白く読めましたよ!!。
>ありふれた日常
って言えるかどうかわかりませんが、
>日常を淡々と綴っても面白い
ですよ。エッセイイストもいいかも・・・
>セイラさま
冴島さんはバンド好きの女優さんですね〜!ライブレビューを書いてる雑誌も見たことありますが…現在も何か活動されてるのでしょうか??
>雑草Zさま
ご感想ありがとうございます。そうなんですよ〜、如何に設定の矛盾を埋めるかが難しいです。かといって逆にありふれた日常を淡々と綴っても面白い、というのはまだ浮かばないんです。設定、文章、情報の3点が今のところ、自分の重要課題ですね!
昔、少年ジャンプ連載のギャグマンがで、
「ハイスクール!奇面組」っての。。。知らないだろーなー。。。
まあ、そんでもって、主人公の妹が「一堂霧」っていうだな!!
愛称は「霧ちゃん」だべ!!(爆)
>宮崎の勉さま
ベティ・ペイジは永遠のピンナップ・スターです。
かっこいいポルノスター作りたかったんです。
冴島奈緒さんは、『宝島』誌上で人生相談のコーナーを持ってましたね。私は、就職の相談をしてしまいましたが、ボツでした。
また、長尺ですねぇ・・(小説としては、ショートショートでしょうけど・)。
面白くて一気に読めましたよ。
設定には結構無理があったけど・・・TVのサスペンスドラマなんてもっと無理あるし・・・
編集長、トレーシー・ローズって16歳なのに年齢詐称して全米を席巻した超巨乳で超スレンダーな娘じゃないか、!
実年齢が発覚してからは、ポルノ業界から追い出されてらしいけど、あんな身体の16歳は掟破りだ。
って、こんなこと知ってる俺はオヤジだな。
ちなみに、俺のポルノスターは桜木ルイとジンジャー・リンなり。
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