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第六十九幕 おくりびと

凛とした清々しさ   映画 『おくりびと』

おくりびと_ポスター

 突然楽団が解散となり、職を失ったチェリストの小林大悟(本木雅弘)は、田舎の山形に戻って仕事を捜します。


「年齢問わず、高給保証!」「旅のお手伝い。NKエージェント!!」

 社長の佐々木生栄(山崎努)の面接で、採用が決まります。

 しかし、募集の文章は誤植でした。

 大悟のついた仕事は納棺師でした。

 納棺師は、死者の体を清め、死者の表情を安らかにし、死装束を着せ、メイクをほどこし、遺体を棺の中におさめる作業を行うのです。

 思わず、身を引いてしまう大悟に、佐々木は、現金を押しつけます。

 つい高給につられてしまう大悟でした。


 右も左も分からない大悟に、佐々木が仕事を教えます。

 遺族の主人(山田辰夫)が遅刻の二人に怒りをぶちまける中、佐々木の手慣れた納棺師の作業が始まります。

 メイクの作業で佐々木の手が止まりました。

 「本人が使ってた口紅を持ってきて下さい。」

 妻に先立たれた主人に、佐々木の声は耳に入りません。

 子供が、口紅のある場所を知っていました。

 佐々木が口紅を遺体にさすと、表情がまるで変わります。

 大悟の心中の納棺師へのわだかまりが、次第に消えてゆくのでした。


  本木雅弘が 藤原 新也 の 『メメント・モリ』* に触発されて、映画化の企画を持ちこんだというこの作品は、逝く死者への畏怖と、死者の尊厳への敬重に満ちています。

 妻(広末涼子)や鶴の湯の友人(杉本哲也)からのいわれなき職業差別に苦悩しながらも、大悟がこなす、鶴の湯のツヤ子(吉行和子)への納棺の儀と、鶴の湯の常連(笹野高史)のツヤ子への鄭重な哀悼は、逝く人たちへの慈愛に満ちていて、胸をうちます。


 暴走族の若い死。女化粧で送られる息子。

 もはや一言も語ることの無い人たちの心情をおもんばかっての納棺師の所作は凛とした清々しい荘厳さをも感じさせます。

 家庭を捨て失踪した父親(峰岸徹)と大悟を結ぶ石文のエピソード。

 それは、河原の石を、心が荒れている時には、ごつごつとした石を選び、心が穏やかな時には、丸く、角のない石をと、その時々の自分の気持ちを石の形に託し相手におくる、互いが、互いの気持ちを石から読み解き、心を通じあわせるというものでした。

 石文の、相手の気持ちを正しく読み解く思いの大切さは、大悟に父親の元にと諭すNKエージェントの事務員(余貴美子)の悲痛な願いの具現となって、大悟の心を動かします。


 逝く人たちに等しく慈愛を注ぐ映画 『おくりびと』 、わたしたちに大切なものを教えてくれる作品です。



*編集部・注:ラテン語で 「死を想え」 「死を忘れるな」 の意。 詳しくは → Memento mori


投稿者: 今井 政幸 


『おくりびと』 公式サイト



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映画雑誌もんたが選んだ映画ワーストテン2008

ワーストテン
1位 『おくりびと』 滝田洋二郎監督
2位 『少林少女』 本広克行監督
3位 『ザ・マジックアワー』 三谷幸喜監督
3位 『私は貝になりたい』 福澤克雄監督
5位 『トウキョウソナタ』 黒沢清監督
6位 『アキレスと亀』 北野武監督
6位 『七夜待〈ななよまち〉』 河瀬直美監督
8位 『歩いても 歩いても』 是枝裕和監督
8位 『クライマーズ・ハイ』 原田眞人監督
10位 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』 若松孝二監督
[ 2009/03/21 16:18 ] [ 編集 ]

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