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下男日記 (3) 下男の階段登り

窓の無い穴倉のような下男部屋


 下男生活初日。鬱で昼夜逆転の生活を送っていた私が昨夜、最後に時間を確認したのは午前四時であった。


 そして、けたたましく目覚まし時計が鳴ったのは午前六時半である。眠い。ものすごく眠い。

 しかしそんなわがままは許されない。なんと言え現在の私の立場は下男である。

 眠い目をこすりフロントへ。聞いていたように確かに今朝、チェックアウトのお客様は少ない。二組五名様だ。

 そして今夜の宿泊の予定は?と聞くと、北海道からの修学旅行生、220名だと言う。

 なるほど、それで今日の仕事に間に合うように急に呼ばれたのか。と納得しチェックアウトされたお客様の部屋の掃除に走る。

 
 掃除が終わるとBさんに呼ばれる。今日の修学旅行用のシーツを運ぶのを手伝って欲しいとの事だ。

 Bさんの後を追い、穴蔵横のボイラー室へ。

 ここで簡単に建物の構造について説明しておこう。吉野の建物の造りは 「吉野建て(よしのだて)」 と呼ばれ、国内でも珍しい、道路に面する玄関が三階である。

 そこから地下へ地下へと下り、一階と呼ばれるフロアは一般に地下二階となる。

 そして私の住む穴蔵は更に地下へと降りる地下四階に相当するフロアだ。

 ちなみにBさんはもう一つ下の地下五階の部分に住んでいる。

 少々ややこしいが、ここは吉野建てのルールで話を進めよう。要するに四階建ての旅館の地下二階にボイラー室が存在すると理解いただければ幸いである。

 
 そして私がBさんに命じられた仕事は、地下二階から階段で二階まで220人分のシーツと掛けカバーと枕カバーを運ぶのを手伝ってくれ、との事だ。

 四ヶ月間、寝たきりの私としては自信が無かったが、何しろ下男初日の身分である。断れる筈もなくBさんと二人、息を切らせながら運ぶ。

 三十分程度かかったろうか。ようやく運び終わった頃には腰が痛み、膝が笑っていた。

 いや、爆笑に近い状態だ。

 
 その後、細かな掃除や洗い物を済ませ、ようやく昼だ。食事が用意されているも今まで二日で一食だった身体である。ましてや階段往復の直後だ。おのずと胸から熱い物が込み上げてくる。

 Bさんには「食が細いんですぅ~」とか言ってごまかしながら、お味噌汁だけいただいて昼休みに入る。

 
 昼休み後の午後二時半。昨日まで忙しかったのであろう、今日の修学旅行に備えて休養を取っていた従業員が続々と集まって来た。

 皆で十名足らずだろうか。ふと見ると、私はその中に一人の小柄な男性を認めた。

 年の頃は五十代前半だろうか。五分刈りの頭に口は少し尖り、姿勢は悪く上目使いにこちらを見ている。


下男だ!まごうことなきこの人は下男だ!


 この人に赤いマントを着せ、黄金の冠を被せたらさぞかし似合うだろうと想像する。

 私は彼を秘かに心の中で 「ひょっとこマン」 と名付けた。

 
 下男は、他人の悪口を言わなければ生きていけない。卑屈でなければ生きていく資格がない。のである。

 それにしても見事な下男っぷりだ。彼を見ていると何故か映画 『ノートルダムのせむし男』 を思い出す。


 せむし男が恋をするのは許されるが、下男に恋は許されるのだろうか?



編集部・注: 画像はNaoさんの生活する 「穴蔵」 のような窓の無い下男部屋。(板の間・約6畳)白い壁に点在する染みは、強烈な湿気によるカビ。




投稿者: Nao

[編集長-ひとこと]

 よいぞ。よいではないか。

 この 「下男生活」 なんだか、つげ 義春 的な匂いがプンプンと漂ってきた。

 これからも、読者の方々と一緒に期待していきたい!



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まさか…

梶本とかいう名字じゃないだろな?カジモド?
[ 2008/12/05 18:02 ] [ 編集 ]

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