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下男日記 (9) 下男の立ちつくし

吉野山周辺ナリ

下男の仕事は大まかに分けて洗い場、部屋掃除、布団敷き、そしてシーツ類の洗濯がある。


 とりわけ地下三階から地上二階へとシーツや浴衣を持って運ぶ地獄の階段登りが一番の苦痛である。

 が、その後のプレス室の仕事は、椅子に座ってシーツをプレス器に挟み、じっと見ているだけ、という足腰が疲れきっている下男達にとっては魅力ある、一番の人気スポットだ!

 
 当然、下男新入りの私に、そんな素敵な仕事が回ってくるはずもなく、今日も女中に混ざって配膳だ。

 この仕事でうんざりするのが、女中達が大声で喋る、女将さんの悪口と仕事の文句だ。

 聞いているだけで肩が凝る。

 
今日のお客様は、某県のお寺さんと檀家さん。高野山から吉野山への旅行の打ち上げだ。
 

 宴会は始めからハイテンションだ。例によってビールやお酒や焼酎を配する。

 そこに、たまたま厨房から言われたのだろう。ひょっとこマンが大量のかぶら蒸しを乗せたワゴンを、慣れぬ手つきでオロオロと運んで来た。

 それを宴客様に配しようとすると、お椀に蓋が無い。

 
 それを見た女中の中でも、とりわけ口の悪いM子が、ひょっとこマンに 「アンタ何やってんのよ!蓋が付いてないじゃん!アンタ馬鹿じゃない?かぶら蒸しに蓋をするなんて常識じゃん!あったま悪いわねー!知らないんだったら邪魔しないでくれる。こっちは忙しいんだからさぁ」

 これには私もムカッとした。

 彼は運んでくれと言われたから、運んで来ただけだ。

 
 すると 「そんなこと!俺にわかるはずないやろーっ!」

 ひょっとこマンが、吠えた。 あの卑屈なひょっとこマンが、大声で吠えた。

 大広間の宴席のお客様が 「ギョッ」 として振り向かれた。

 肩で息をしつつ、ひょっとこマンは去って行った。

 
 残されたM子は「なーにを興奮してるの、バーカね。私は何も言ってないのにね。そう思わない?」

 他人の悪口を言った後に 「そう思わない?」 と、付け加えるのが程度の低い連中の特徴だ。

 つまらん。


 結果、M子は私とのバトルの末、この三日後に、この旅館を辞めた。

 
 その日の夜。お女将さんから「nao君、悪いけどお寺さんと檀家さんの二次会がラウンジであるから手伝ってくれない?」との事。


 下男の私に断れるはずもなく、夜の八時過ぎにラウンジへと。

 くたくたに疲れきった足腰にムチ打って、直立不動のギャルソン仕事だ。否、過酷さ故に近衛兵か、とも考える。

 
 とにかくキツイ。銀盆を前に、ただ立つだけだ。

 チンコは勃たないのに、身体は直立不動である。

 
 ラウンジでのカラオケは時を追い、盛り上がる。

 直立不動の私がふと見ると、天井のクルクル回る七色のカクテルライトに反射して、お坊さんの頭がキラキラ光るのを見て吹き出しそうになる。

 イカン!絶対に笑っては駄目だ!

 そう自分で自分に言い聞かせる。

 
 しかし、適度な緊張感は笑いを覚醒させる。

 覚醒モードに突入だ。

 何とかして笑いをまぎらわせようと視線を変えると、残り二人のお坊さんの頭もキラ光りして乱反射状態だ。

 
 私の腹筋は、すでに臨界点を超えている。

 頬の肉も、ヒクヒク引きつってきた。

 
 限界だ。

 もう限界だ。

 そう自分で判断した私は、トイレに走る。

 便器に向かって笑いを吹き出した。

 
 何とか笑いを鎮め、カラオケが終わったのが夜の十一時だ。

 その後、お客様を送り出しテーブルの片付けをし、女将さんと二人で深夜にパーテーション(仕切り)とテーブルを元に戻す。

 戻しながら女将さんは、女中の悪口を言っていた。

 下男の私は、どっちもどっちだ、と思った。

 
 
 明日も六時前に起きよう。

 それが、下男の宿命なのだから ・ ・ ・




投稿者: Nao

[編集長-ひとこと]

 ひょっとこマンのその後の動向も気にかかるが、Naoさんの勃起不全が続く(インポなわけだが)チンコの具合が気にかかる~!(笑)


 今回も長文でしたが、一気に読めたました。次回も、期待しております。



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TAKAです

面白く拝読させて頂きました。といっても、当のNaoさんは日常の勤務に大変な訳ですから、笑ってはいけないのですが。ただ、少し解らない部分がありました。

1.まず、女中の"M子女史"の言動に切れた"ひょっとこマン氏"が、大声で吠えて出ていった。という部分の後…「結局、M子は、私とのバトルの末…」と記されてましたが、その間に、また一難あったという事ですか?それとも

ひょっとこマン氏=Nao氏

なんでしょうか?

2.ラウンジ内では、お坊さん達はどのようなフォーメーションで座っておられたのでしょうか?それによって反射の仕方が変わると思いますので………………まぁ、そんなもんはどうでもエエか。

3.女将さんと女中さん、ホンマは仲がいい?

結局、笑える部分も無ければ、やりにくいですからね。頑張って下さい。お疲れ様でした。
[ 2009/01/07 23:14 ] [ 編集 ]

やはり


naoさんとM子のバトルが最も気になる部分ですね。

>「そう思わない?」

に反応したのでしょうか?
[ 2009/01/08 00:01 ] [ 編集 ]

おはようございます!

お疲れ様です。
トイレに行くまでこらえていたとは流石プロ?ですね。
でも不平不満や悪口は聞くに耐えないですよね…
私はこれから出発です。

P!P!(^^ゞ
[ 2009/01/08 05:58 ] [ 編集 ]

ご苦労様です。
大変なお仕事ですが頑張って下さい。
いつかはいいことがある!と信じて仕事に耐えて下さい。
僕も仕事は辛いですが、若い時のように暴走しないように耐えて頑張ってます。
お互いに頑張りましょう(^○^)

[ 2009/01/08 21:13 ] [ 編集 ]

僕が、葛餅にきな粉をまぶしているとM子が来て「なーにグズグズしてんのよ!まったく何をやらせても遅いんだから!ちょっとTさん代わってよ!この人にやらせているとこっちは仕事になんないんだからさぁ!」と、食材の前で髪の毛をかきあげながら唾を飛ばして言うので「何を言っておるのだ、君は。あんた皆から陰でアホだと言われているのを知らんのだろ。信じられん、まったく。君は親からどんな教育を受けて来たのだ?」と言うと、その後、インターホンで女将さんに、腰をグネッたから明日帰る、と嘘を言って辞めていきました。
[ 2009/01/09 19:03 ] [ 編集 ]

naoさん、バトルの内容有難う御座います

 
 面白く読ませて戴きました。
いつもあまり言い返されてなかったM子嬢が、
思いがけないnaoさんのカウンターパンチ
一発に沈んだ・・・ってとこですね。
1R TKO

>インターホンで女将さんに・・・

ってどういうやめ方なんでしょう?・・当てつけの積りなら本当に情けない。 
[ 2009/01/11 20:51 ] [ 編集 ]

嬢と言っても五十過ぎのオバハンです。
大体、寮付きの仕事に来る奴らは(僕も含めてw)女なら手抜いてナンボ。男なら馬、舟、自転車、パチンコが多いです。
派遣村の奴らなんて大っ嫌いだー!
[ 2009/01/12 00:36 ] [ 編集 ]

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