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第二十四幕 パンズ・ラビリンス

現実を直視させる迷宮  映画「パンズ・ラビリンス」

 この映画の舞台は1944年。スペインのとある山奥、ビダル大尉率いるフランコ軍が、反政府ゲリラと交戦しています。

 母親カルメンが、ビダル大尉と再婚し、父親の居場所で出産するため、 少女オフェリアも交戦最前線の山奥にやってきます。

 スペインでは、1936年、フランコ将軍が共和国に対しクーデターを起こしました。

 ヘミングウェイの参加などで知られるように、各国から、共和国の人民戦線政府を支援するため、反フランコ軍事政権に立ち上がった人たちが、義勇軍として参加します。

 しかし、ヒットラー、ムッソリーニの支援を受けたフランコ軍は戦闘を優位にすすめ、1939年3月、スペイン全土を制圧し、勝利宣言します。

 1939年9月には、ドイツ軍がポーランドに侵攻して、もう、第二次大戦が始まってしまう、そんな時代です。

 映画は、フランコ軍に制圧されたとはいえ、まだ、スペイン各地で、フランコ軍とゲリラとの戦いが続行中のスペインのとある山奥、という設定です。

 この映画の監督は、ギジェルモ・デル・トロ。メキシコ人です。

 メキシコは、フランコに追われたスペイン共和国政府が亡命した国でもあります。

 メキシコは、1945年8月、フランコ政権のスペインと国交を断絶しました。メキシコがスペインと国交を再開したのは1977年。そんな国の監督でもあります。

 ファンタジーの装いを持つこの映画が直面する舞台は、ですから、同国人が互いに争う、殺伐とした、内戦の最前線真っ直中です。

 ゲリラと見間違えられたら、即座に有無もを言わさず射殺されてしまう、それが、この山奥の日常です。

 少女オフェリアは、実は、地下にある、魔法の王国の王女モアナの生まれ変わりでした。

 地上にあこがれたモアナは、遂に、地下から地上に達することは出来たのですが、地下に戻ることはかなわず、死んでしまいました。

 しかし、モアナの霊は残りました。モアナの霊が移り宿った少女、それがオフェリアです。

 ビダル大尉の陣営地に辿り着く寸前、読書好きのオフェリアは、偶然、道に落ちてた石の片眼を拾い、そばにあった像に嵌めてみます。

 像に眼が嵌められたことから、姿を変えた使者が現れ、オフェリアを、こっそり、地下の王国に続く迷宮に誘います。

 オフェリアは、王国への入り口に佇むパンから、自分が地下の魔法の王国の王女モアナであること、地下への道が開ける満月の日が迫っていること、その日までに果たしておかねばならない三つの試練を達成しなければ、地下の王国にはいけない、ことを教わるのです。

 映画は、オフェリアの試練達成の様子と平行して、フランコ軍による、容赦ない、ゲリラ狩りの有様が、仲間の居所を聞き出すための拷問シーンなど、リアルさを増して語られます。

 映画が描こうとしてるのは、実は、地下王国のファンタジーより、このゲリラ狩りの方です。

 第二次大戦中、スペインは、再三のヒットラーの呼びかけにも応じず、中立、非戦闘を貫きます。

 これは、スペインが食糧難の危機にあり、英仏からの食料援助協定を結んでいたからでした。

 映画の中でも、配給手帳をもとに、フランコ軍が農民たちに食料を配給するシーンが出てきます。食料を配給出来るフランコ軍はゲリラより勝ってる、との誇示です。

 しかし、押され気味のゲリラも、伝えられる第二次大戦を優勢に転じた連合軍から勇気を得て、ビダル大尉の兵と拮抗するほどの力をつけます。

 ゲリラが手強く反抗するなか、オフェリアは、母カルメンの命より、お腹の中にいる、きっと男の子であるに違いないと信じて疑わない赤ちゃんだけを大事にする義父ビダル大尉から逃れること、地下の王国に辿りつくことを念じます。

 しかし、そんなオフェリアに与えられた試練は、何事も、パンが言うがままになす、パンへの服従、盲従だったのです。

 フランコの死によって、フランコ体制が崩れたのは、1975年です。この映画で、ゲリラがビダル大尉と戦ってたのは1944年。

 それ以後も、第二次大戦後も、スペインは、反共フランコ政権の支配下にありました。

 
 オフェリアが望んだ、魔法の地下王国。

 オフェリアが果たして辿り着けたかどうかは、映画を見てのお楽しみ。

 
 期せずして、昨年、アカデミー賞外国映画部門で、「善き人のためのソナタ」と賞を競い合っただけの、同等・同様な、痛烈な体制批判の作品です。



投稿者: 今井 政幸


「パンズ・ラビリンス」公式サイト






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個人的には今年のベスト!

ファンタジーが苦手なおれでも、観れました。
[ 2007/10/12 19:34 ] [ 編集 ]

個人的には今年のベスト!

いまのところ、わたしの今年のベストは、「善き人のためのソナタ」です。救いのある映画で、ほっとしました。
[ 2007/10/13 09:49 ] [ 編集 ]

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