これは、宮沢賢治のマイナーな短編童話であります。
わたくしは、子供の頃から大の氷河ファンでありました。
氷河地形であります、U字谷、カール、フィヨルド、モレーン、氷河湖、迷子石 などの映像を見たり、言葉を聞いたりすると、全身がゾクゾクとしたものです。(笑)
国内最大の氷河 三ノ窓雪渓十数年前から、日本にも氷河があるのではないか?と、しきりにささやかれておりました。
が、なんと、つい最近、「国内初の氷河」 が確認されたのです!
このニュースには、鳥肌が立つくらい驚きました。
いゃー、感激しましたね。 北アルプスの剱岳(つるぎだけ、2999メートル)の東側にある雪渓の下の氷の塊が氷河と確認されたのです。
この氷にポールを立て、GPSを使って氷の動きを測定した結果、なんと、1ヶ月に30センチも動いていることが確認されました。
測定器の小型化が進んで、現場に持ち込んで精密に測定することが可能になったからだそうです。
このあたりにある3ヵ所の雪渓が氷河と確認されたそうですが、中でも最大のものが 「三ノ窓雪渓」 と呼ばれているもので、全長が1200メートル、氷の厚さが20~30メートルにも達するというからすごいです。
エゾナキウサギ 蝦夷啼(鳴)兎「氷河ねずみ」 ではなくてエゾナキウサギです。(笑)
氷河ねずみは、賢治のイマジネーションが作りだした動物であります。実際にはいません。
でも、モデルにしたのが、このエゾナキウサギだと思われます。
ウサギの仲間ですが、見た目は、ほとんどハムスター、ネズミですね。
エゾナキウサギは、約1万2000年前の氷河期に北方ロシアからやって来て、北海道の大雪山系や日高山系の高山に棲みつきました。まさに、氷河ねずみのイメージにピッタリです。
前置きが長くなりました。さて、やっと 『氷河鼠の毛皮』 であります。
「このおはなしは、ずゐぶん北の方の寒いところからきれぎれに風に吹きとばされて来たのです」 の書き出しで始まる、賢治にしては珍しくスリリングな展開のサスペンス風な童話になっています。
イーハトヴの町から12月26日の夜8時に出発する、ベーリング市行きの列車。真冬のイーハトーブは吹雪いていてかなり寒い。そこからさらに寒い極北の地へと向かう列車。乗り合わせた登場人物がユニークだ。
太った赤ら顔の紳士は、高価な毛皮をたくさん着ている。それに金の指輪して、ピストルまでもっている。
葉巻をくわえた役人や絹糸のにせ毛皮を着た紳士。赤ひげの男。薄着の船乗りらしい寡黙な若者、さらにスパイまで 登場します。
乗り合わせた乗客の会話で物語は進んでいく。。。。
「何せ向うは寒いだろうね」 「どうだろう、わしの防寒の設備は大丈夫だろうか」 「さあ、まあイーハトヴの冬の着物の上に、ラッコ裏の内外套ね、海狸(ビィーバー)の中外套ね、黒狐表裏の外外套ね」 「それから氷河鼠の頸(くび)のところの毛皮だけでこさえた上着ね」 「大丈夫です。しかし氷河鼠の頸のところの毛皮はぜい沢ですな」 「四百五十疋(ひき)分だ。どうだろう。こんなことで大丈夫だろうか」。。。。
「ひとりで出掛けて黒狐を九百疋(ひき)とつて見せるなんて下らないかけをしたもんさ」 。。。。
毛皮をとるために大量に殺される動物たち。なんとも、当時は動物受難の時代でした。
ベーリング市に近づいた時、突然列車は、ピストルを持ち、覆面をしたシロクマのテロリストに襲われるのです。
テロリストたちは、「毛皮をとるために大量動物を殺すとはけしからん、無法なことだ!」 と糾弾します。
そこで、薄着(毛皮を着ていない)の若者がテロリストに毅然として立ち向かい、この難局を切り抜ける、という展開。
ラストで、薄着の若者がテロリストに言い放った言葉に、賢治の思いが込められていますね。
「おい、熊ども。きさまらのしたことは尤もだ。けれどもなおれたちだつて仕方ない。生きてゐるにはきものも着なけあいけないんだ。おまへたちが魚をとるやうなもんだぜ。けれどもあんまり無法なことはこれから気を付けるやうに云ふから今度はゆるして呉れ。ちよつと汽車が動いたらおれの捕虜にしたこの男は返すから」。。。。
狩る者と、狩られる者。搾取する者と、搾取される者、『ななめとこ山の熊』、『注文の多い料理店』 に通じるものがありますね。
人間は、他者の犠牲の上に生きている。おごるな!と、いうことなんでしょうねー。。。
マイナーな短編童話ですが、名作だと思います。
投稿者: 霧島