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陰画の自画像 (ショート・ストーリー)

蒸気機関車はちょうど鉄橋を跨ぎかけていて、

 街は血塗られた雲と中空に突き立つ煙突の群との熱い抱擁を見上げながら寝そべっている。

 
 少年はしきりに髪を梳りながら、デッキでそれを、ぼんやりと眺めていた。

 デッキの下には、蛇行してきた河があり、蒸気機関車はふいに停車し、少年は、ふいに 「飛ぼう!」 と思った。

 水が幾重ものソファーに変わるまで待ちきれずに、少年は飛んだ。

 手をバタつかせながら。

 
 操り人形にも似た足取りで少年は空を歩む。

 その肩や頭や腰のあたりにキラめいているのは、あれは、蚕糸ででもあるのかも知れない。

 やがて流れのない水面に靴が沈み、腰から胸へと水は駆け上り、頭の毛先まで、ズッポリと少年は埋没した。

 それっきり、少年は、セピア色をした影法師。

 
 フィルム最後のひとこまが切れてしまうと再び、蒸気機関車は無人のまま蠕動運動を開始した。










投稿者: 英泉

(初出:2005/06/18 )

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[ 2015/01/08 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(1)

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旧ブログでの初回掲載時には、こんなコメントをいただいておりました。


Anthony 2005/6/19 0:27

 フト、宮沢賢治を思い出しました。


愚憂恥 2005/6/19 7:34

 やはりプロですね。

[ 2015/04/02 23:32 ] [ 編集 ]

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