快傑白頭巾 第一幕 「さすらいの風、荒野を渡る」 (戯曲)

初めに
 
 以下の文章は、学校のステージでできる演劇というシチュエーションを想定して書いた、チープな演出の劇台本です。

 時代劇っぽい作りですが、中身は東映の懐かしの特撮ヒーロー「快傑ズバット」のオマージュになっています。
 
 こんなふうにしたら楽しい舞台になるだろうなと、夢想しながら書きました。

 どなたか良ければ上演してみてください。ただ、商業演劇の場合は、もしかしたら東映さんの許可が要るかもしません。(まあ、ありえない話ですけど)





時代・江戸時代中期。所・中部地方のとある国。季節・秋。



 シーン1 山



・漢方医の飛鳥五郎が、薬草を摘んでいる。



飛鳥   「お、センブリだ。これはワレモコウ……」

ナレーター「この男、名を飛鳥五郎という。医者である彼は、山中で漢方薬の原料となる薬草を採集していた」

飛鳥   「もうじき、あいつがやってくる頃だ。あいつに会うめも五年ぶりだなあ。今日は早めに切り上げるとするか」











投稿者:クロノイチ


・飛鳥、足元の寵を背負い、舞台左へ歩き出す。すると、その行く手に、ならず者の集団が立ちふさがる。総勢七名。ただし、四名は、舞台の袖でちらりと姿を見せる程度。


ならず者A「おい、この山に入ることは許さねえ、と言っておいたはずだぜ」

飛鳥   「黙れ。そんな理不尽な話が聞けるか」

ならず者B「この山はな、俺達ドクロ党のもんだ。無断で入り込んだばかりか、薬草まで盗むとは、よほど痛い目に遭いたいらしいな」

飛鳥   「勝手に決めるな。山は村人全員の宝だ。ドクロ党に譲った覚えはない」

ならず者C「じゃあ、すぐに認めさせてやるぜ。この山が、ドクロ党の所有物だってことをな!」

ならず者A「そして、きちんと泥棒の罪は償ってもらうぞ。その身体で」



・ならず者、全員出てきて、飛鳥をぐるりと取り囲む。



飛鳥   「(身構えながら)やるか。ただではやられんぞ」



・その時、どこからともなく、鍵盤ハーモニカの音。「きらきら星」のメロディ。ならず者、きょろきょろと辺りを見回す。



ならず者A「誰だ!」

ならず者B「どこだ!」

ならず者C「姿を見せろ」



・舞台右袖より、鍵盤ハーモニカを吹きながら、笠を被った浪人風の男が現れる。ならず者、気圧された様子で舞台の左に集合する。飛鳥、両者から離れた位置で状況を見守る。

謎の男  「お兄さん方。素手の人間一人を相手に七人がかりとは、ちと卑怯じゃござんせんか」

ならず者A「てめえ、何者だっ!」

謎の男  「通りがかりの風来坊。お節介なのが王に傷」

ならす者A「しゃらくせχ! 野郎ども、こいつ力らたたんじまえ!」



・ならず者、一斉に謎の男に襲いかかるが、男は鍵盤ハーモニカ片手に、それを軽く一蹴する。



ならず者A「畜生!」



・ならず者A、長ドスを抜く。



謎の声  「待ちなさい!」



・バレーボールを待った、半袖短パン姿の男が舞台左袖より登場。



短パン男 「お前遠の勝てる相手ではありません。どいていなさい」



・ならず者、「先生」「先生」と口々に言いながら、短パン男の後ろに下がる。謎の男、ヒュウウウと口笛を吹く。



飛鳥   「気をつけろ、早川! そいつは出来るぞ」



・早川と呼ばれた謎の男は、飛鳥をチラリと見る。




早川   「知ってる。──おいでなすったな。横山ジュリーさんよ」

・早川、横山という名の短パン男に対して余裕ありげな表情を浮かべる。

横山   「ほほう。早川さんとやら、この私を御存知ですかな」

早川   「(芝居がかった調子で)ああ、有名ですからね。山賊集団ドクロ党首領・鬼の権造の用心棒で、殺人毬投げの名人。──ただし、腕前は日本じゃあ二番目だ」

・横山、キッと早川を睨む。

横山   「何ですと。私より凄い毬投げ師がいるというのですか。誰ですか、それは」

・早川、ヒュウウと口笛を吹く。次いで、チッチッチと舌打ちしながら、右手の人指し指と中指を顔の前で左右に振る。そして、その指で笠を上にずらすと、親指で自分の顔を指してニカッと笑う。

早川   「俺さ」

横山   「(笑いながら)面白い。では、どちらが日本一か、勝負といきましょう」

早川   「いいだろう。俺が勝ったら、この場は引いてもらうぞ」

横山   「わかりました。ですが、私か勝った時は?」

早川   「煮るなと焼くなと好きにしろ」

横山   「潔いことですな。はっはっは」

飛鳥   「(心配そうに)早川……」

早川   「(飛鳥に鍵盤ハーモニカを渡しつつ)飛鳥、五年ぶりだな。元気にしてたか」

飛鳥   「どうしてここに?」

早川   「お前の家に行ったら、妹さんに、お前が山に行ったと聞かされてな」

飛鳥   「すまん。とんだことに巻き込んでしまった」

早川   「おいおい、謝るな。親友を──この早川健を、もっと信用したらどうだ」

横山   「(焦れたように)さあ、勝負です。まずは私から。──お前達!」



・ならず者A、B、Cが縦に並ぶ。後ろの者は腰を落として、前の者の身体をしっかりと支える。



横山   「私か全力で投げる毬の威力は、大砲並。この程度の標的なら、本気を出すまでもありません」

・横山、ならず者Aに向かって、軽くバレーボールを投げる。ならず者A、それを受け止めるが、次の瞬間、うわっと叫んで、後ろの二人もろとも弾け飛ぶ。



・早川、賞賛の口笛を吹く。横山、得意気な表情で、ボールを早川に渡す。



横山   「どうですか、早川さん。軽く投げただけであの威力。やはり日本一は私でしょう。はっはっは!」

早川   「どうかな。──おい、そこの七人、しっかり固まって並べ」



・ならず者Aの後ろにならず者B、Cが並び、残る四人がその後ろに並んで、がっちりとならず者Aを支える。

早川   「行くぜっ」



・早川、ボーリングの投球フォームで、ボールを軽く転がす。ボールがならず者Aに当たった瞬間、七人全員が吹っ飛ぶ。



ならず者達「あんぎゃあああ!」

早川   「ストライクってなもんだ」



・早川、両手を広げて、肩をすくめる。



横山   「うぬぬぬぬぬ」

早川   「どうだい、横山サン。俺は軽く毬を転がしただけだぜ。さて、日本一は誰かな。ははははは」

横山   「うぬぬ。きっとこの屈辱は晴らしてみせますよ」



・横山、ボールを拾い、ならず者を引き連れて退場。早川と飛鳥、顔を見合わせて笑う。



早川・飛鳥「あはははははは!」




 シーン2 飛鳥の家

・ちゃぶ台の周りに、左から、飛鳥の妹・みどり、飛鳥、早川の順で座っている。みどりは、お茶の支度をしている。

飛鳥   「いやあ、お前が来てくれたおかげで命拾いしたよ。しばらく会わぬ問に、ますます腕を上げたようだな」


早川   「(ふざけた調子で)わからんぞ。腕が上がったのは、毬を転がす技だけかもしれん」
飛鳥   「ははは。じゃあ、今度、俺がお前の剣の腕前を試してやる。五年間の武者修行の成果を、とくと拝見しようじゃないか」

みどり  「兄上、運動不足なんだから、無茶はいけませんよ」


飛鳥   「冗談だよ、みどり。俺に早川の相手が勤まるものか。こいつは武芸百般、あらゆる流派で免許皆伝を得た天才中の天才だ」

みどり  「(早川に向かって)まあ! そんなに凄いお方でしたの。てっきりお医者仲間だとばかり思ってましたわ」

早川   「飛鳥、俺のことぐらい、ちゃんと説明しとけよ」

飛鳥   「すまん」

みどり  「兄ったら、家ではずっと部屋に閉じ寵もりっぱなしで、私とはろくに話もしてくれませんの」

早川   「そりゃ、ひどいな。飛鳥、また一人で研究に没頭してるのか。もう少し、みどりさんにも気を追ってやれよ。たった二人きりの家族なんだから」

飛鳥   「そうだな。たまには釣りにでも連れていってやるか」

みどり  「それは兄上の趣味でしよ。──はい、お茶をどうぞ」



・みどり、早川と飛鳥にお茶を差し出す。



早川   「あ、どうも」

・早川、一口、お茶を飲む。



早川   「(ふと思いついたように)ところで、飛鳥」

飛鳥   「何だ?」

早川   「お前、どうしてドクロ党に絡まれてたんだ?」

飛鳥   「あいつら、あの山で採れるマツタケを独り占めしようと企んでいてな。山に入る者を目の敵にしてるんだ。──村の者はすっかり脅えちまって、今じゃ山に近寄ろうともしない。役人も、賄賂をもらって知らぬ顔さ」

早川   「(深刻な表情で)ううむ」

飛鳥   「だがな、俺は断じて抵抗をやめないぜ。一人でも負けやしない。あんな山賊どもに山を好き勝手にされてたまるか」

早川   「そうだ。その意気だ。なあに、戦うのはお前一人じゃない。俺がいる。俺とお前が手を組めば、ドクロ党なんか、あっという間に蹴散らせるさ」

飛鳥   「やるか!」

早川   「おう!」

・二人、立ち上がってがっちりと手を取り合う。

・数呼吸の後、みどり、パンパンと手を叩く。




みどり  「さあ、皆さん、盛り上がったところで恐縮ですけど、そろそろ夕食の支度の時間ですわ。兄上、た まには薪割りをお願いしますね。私は畑から野菜を取ってきます」

早川   「みどりさん、俺もついていっていいかな。することがないもんで」

みどり  「どうぞ。いいですよ」

飛鳥   「早川、妹に何か面白い話でもしてやってくれ」

早川   「ああ」

みどり  「旅の話を聞かせてくださいな」

早川   「はいはい」



‘早川とみどり、家を出て舞台左袖に去る。



飛鳥   「さてと、薪割りをするか」



・飛鳥も家を出ようとする。だが、突然、謎の黒覆面の侍が現れ、行く手に阻まれてしまう。思わず後ずさる飛鳥。

・黒覆面、ゆっくりと家の中に入ってくる。



飛鳥   「誰だ! ドクロ党かっ!」

黒覆面  「さあて。──公儀隠密・飛鳥五郎、だな」

飛鳥   「(ショックを受けた様子で)何? なぜ、それを」

黒覆面  「幕府の犬には消えてもらう。覚悟っ!」



・黒覆面、刀を抜いて飛鳥に切りかかる。飛鳥、家の中の調度品でうまく攻撃を防ぐ。



飛鳥   「早川あっ!来てくれっ!」

黒覆面  「まずい!」



・黒覆面、懐中から銃を取り出し、飛鳥を撃つ。うわっ、と叫んで倒れる飛鳥。黒覆面、素早く。舞台右袖に去る。

・早川とみどり、舞台左袖より登場。



早川   「急ごう。今のは銃声じゃないか?」

みどり  「早く家の中へ」



・早川とみどり、家に入りざま、倒れている飛鳥を見て、あっと叫ぶ。



早川   「飛鳥あああっ!」

みどり  「兄上っ!」



・早川とみどり、飛鳥の元へ駆け寄る。早川、飛鳥を抱き起こす。



早川   「しっかりしろ、飛鳥!」

飛鳥   「(弱々しく)やられちまった……。すまん。どうやら一緒には戦えねえみたいだ」

早川   「誰だ、誰にやられた? ドクロ党かっ?」

飛鳥   「わからん。わからんが、早川……」



・飛鳥、早川の手を掴む。早川、その手をしっかり握り返す。



早川   「何だ、飛鳥」

飛鳥   「悪い奴は許せないよなあ……」

早川   「ああ、勿論だとも」

飛鳥   「みどり……」

みどり  「はい」

飛鳥   「俺の部屋へ行って、急いであれを取ってきてくれ……。急げ」
みどり  「え? ──あ、はい」



・みどり舞台の右へ消える。そして、白い布を持って戻ってくる。

早川   「これは?」

みどり  「兄が研究していたものです。寝たきり老人に、再び立ち上がる力を与えるための特別な体力増強服 ──その試作品ですわ」

飛鳥   「そいつを身に付けると、普段の数倍の力を引き出せる……。早川、それはお前のものだ。お前なら きっと……。 ──ゲホッ!」



・飛鳥、激しく咳き込む。



飛鳥   「早川……」

早川   「(涙声で)飛鳥っ!」

飛鳥   「みどりを頼むぞ……」



・飛鳥、こと切れる。



早川   「飛鳥、飛鳥あああっ!」

みどり  「兄上えええ!」



・早川、立ち上がり、拳を握りしめる。



早川   「見ていてくれ飛鳥! お前の仇は、この早川健が絶対にとる」




 シーン3 高台の墓地



・舞台右奥に墓がある。飛鳥の墓だ。その前でみどりが手を合わせている。



みどり  「(拝みながら)兄上、早川さんはさっさとどこかへ行ってしまいました。あんな薄情な人だとは思 いませんでしたわ。──兄上。私は一人ぼっちです。この先、何を頼りに生きていけば……」

謎の声  「わしを頼るといい。がははははは!」



・舞台左袖より、品のない派手な衣装の男登場。ドクロ党首領・鬼の権造である。ならず者を数人従えている。 みどり、はっと息を呑み、立ち上がる。

みどり  「鬼の──権造!」

鬼の権造 「兄を失い、天涯孤独の身になったそうだな。さぞや寂しかろう。どうだ。わしの元に来ないか。かわいがってやるぞ」

みどり  「何を白々しい。貴方が兄を殺したのでしょう!」

鬼の権造 「はて、何のことかな」

みどり  「兄の仇!」



・みどり、懐剣を取り出して、権造に向かい走り出す。だが、ならず者達によって、あえなく取り抑えられてしまう。

みどり  「放しなさい! 放して!」

鬼の権造 「がはははは。お前のことは、前々から目を付けていたのだ。目の上のたんこぶだったお前の兄貴が死んだ今、お前を守る者はもはや誰もいない。お前はわしのものになるのだ」

みどり  「嫌っ! 誰か、助けて!」

鬼の権造 「ぬははははは。こんな辺鄙な所に誰が来るものか」

謎の声  「果たして、そうかな」



・「きらきら星」のメロディが響き渡る。舞台の右袖より、早川健登場。



鬼の権造 「貴様は誰だ!」

早川   「死神さ。悪い奴専門のな」

ならず者A「首領、こいつが早川でさあ!」

鬼の権造 「何。貴様、村を離れたのではなかったのか!」

早川   「お前さんの砦は警戒厳重で、ぶち破るのは至難の業だ。だから、お前さんが油断して、砦からしゃしゃり出てくるのを待ってたのさ」

鬼の権造 「おのれ、早川!──やれ! やっちまえ!」



・ならず者、短剣を取り出し、みどりを放り出して、早川に襲いかかる。みどり、早川の方へ駆け寄る。早川、ならず者の攻撃を軽々と受け流しながら、みどりに鍵盤ハーモニカを渡す。

早川   「みどりさん。ここから出来るだけ遠くに逃げるんだ」

みどり  「はい」



・みどり、舞台の右袖に去る。

・早川、容赦なくならず者を叩き伏せる。ならず者達、次第に立ち向かう気力をなくし、尻込みしはじめる。

鬼の権造 「(わめき声で)どうした!行け!・戦え!早川を殺せ!」



・ならず者、笛吹けど踊らず状態で、一向に動こうとしない。

早川   「鬼の権造!お前さんの手下は、もう家に帰ってもねんねしたいとさ。さあ。覚悟するんだな!」

・早川、拳法の構えを権造に見せる。



謎の声  「おおっと!覚悟するのは貴方の方ですよ。早川さん!」



・早川、振り向く。舞台右袖から、横山ジュリー登場。みどりを羽交い締めにしている。



早川   「みどりさん!」

みどり  「(苦しげに)早川さん……。ごめんなさい」

横山   「このお嬢さんの首をへし折られたくなかったら、手向かってはいけません」

早川   「卑怯なっ」

鬼の権造 「がはははは! よくやったぞ、横山。──さあ、者ども。もはや恐れることはない。早川をやっつけろ!」

・ならず者達、横にずらりと並び、短剣を振りかざしで早川に迫る。早川、じりじりと舞台の左奥に追い詰められていく。

鬼の権造 「早川!後ろは崖だ。それ以上下がると、谷底へ真っ逆さまだぞ」

早川   「くっ!」

鬼の権造 「それっ!とどめだ」



・ならず者、一斉に短剣を突き出す。


早川   「うわああっ!」



・早川、舞台左袖に消える。



みどり  「早川さあん!」



・みどり、失神する。



鬼の権造 「わはははは、落ちよった。その高さから落ちては、ひとたまりもあるまい。早川は死んだ。がはははは。さあ、その女を砦に運べ」



・横山、ぐったりとなったみどりを地面に置く。ならず者AとBがやってきて、舞台左袖へ運ぼうとする。

謎の声  「そうはさせん!」



・全身白づくめの男、舞台右袖から飛び出してくる。頭に白い野球帽、目にサングラス、口にマスクという出で立ち。立て札のような物を肩に担いだまま、鋭い蹴りを放ち、ならず者A、B、横山を襲う。

・ならず者A、B、横山、攻撃回避のため舞台の左へ。みどりは舞台右袖で気絶したまま。

・白づくめの男、舞台正面の奥にわざとらしく置かれている、踏み台の上に飛び乗る。



鬼の権造 「な、何奴!」

白装束の男「(ポーズをつけながら)はははははははは。シュバッと参上、シュバッと解決。人呼んでさすらいの正義の味方。──快傑、白頭巾!」

鬼の権造 「白頭巾だと。帽子をかぷっておるだけではないか!」

白頭巾  「黙れ!──役人に賄賂を遣い、村人を脅して山のマツタケを独占し、あまつさえ、罪もない女性を毒牙にかげようとした鬼の権造!──ゆ・る・さん! とおっ!」



・白頭巾、台から飛び降り、立て札を裏向けに立て掛ける。そこには、固く閉じられたハリセンが張り付けられており、白頭巾はそれを引き剥がして構え、戦闘態勢をとる。

・ハリセンの持ち手の部分には、ニメートルほどの長さのロープが、束ねられた状態でくくりつけられている。

鬼の権造 「しゃらくせえ! やっちまえ」



・ならず者、短剣を手に白頭巾を襲う。白頭巾、華麗な動きでハリセンを振り回す。数秒後、ならず者の動きがピタリと止まる。白頭巾が指をパヂンと鴨らすと、ならず者達は同時に倒れ伏す。



・横山、舞台左袖から、バレーボールの入った寵を引っ張ってくる。



横山   「白頭巾とやら。私がお相手しましょう」



・横山、次々とボールを投げつける。白頭巾、ことごとくレシーブ。するすると横山に近づくと、ハリセンを一閃する。──横山、崩れるように倒れる。



横山   「つ、強い……」



・横山、絶息する。



鬼の権造 「あわわわわ」



・権造、逃げようとする。白頭巾、ハリセンの根元のロープを解き、下に垂らしてユラユラと揺らす。

白頭巾  「鬼の権造、これを見ろ!」



・権造、思わず振り返って、チラリとロープの動きを見てしまう。すると、そのまま視線を逸らすことができなくなる。



鬼の権造 「な、何だ。身体が勝手に動く! わあああ!」



・権造、催眠状態に陥り、憑かれたようにロープの先を掴んで、自分の首に巻き付ける。



鬼の権造 「ぐえええ」



’白頭巾、ロープを強く引っ張る。



白頭巾  「十月十日、飛鳥五郎という男を殺したのは貴様か」

鬼の権造 「ち、違う!」

白頭巾  「貴様だな!」

鬼の権造 「違う。殺ったのはわしじゃない!」



・白頭巾、ロープを引く手にますます力を入れる。



白頭巾  「嘘をつけ!」

鬼の権造 「は、本当だ。その日、わしは、砦でマツタケ宴会をしておった」

白頭巾  「では、殺したのは誰だ!」
鬼の権造 「し、知らん!」




・白頭巾、手を緩める。権造の首から離れるロープ。権造は、ぜいぜいと苦しそうに息をしながら、ガクンと地面に膝をつく。



・白頭巾、正面を向き、サングラスを外して空を見上げる。



白頭巾  「(思い出したように)そういえば、飛鳥は銃で殺された。ドクロ党に、銃を使う奴はいない。やはり、飛鳥を殺した奴は、別にいるのか」



・権造、気力を振り絞り、帯から短刀を取り出して、背後より白頭巾に飛びかかる。



鬼の権造 「死にやがれっ!」



・白頭巾、全く動じず、振り向きざまに権造の顔ヘハリセンを打ち込む。バタリと倒れる権造。

・白頭巾、みどりの方へ駆け寄り、身体を揺さぶる。
 

白頭巾  「みどりさん。しっかりしろ」

みどり  「う、ううん」



・少しみどりの身体が動く。



白頭巾  「鬼の権造は、飛鳥の仇ではなかった。俺は、本当の仇を追いかける」



・白頭巾、踏み台の方に行き、立て札を拾い上げると、舞台右前の地面(旗立て台)に突き剌す。それには「極悪山賊集団・ドクロ党、壊滅!」と書かれている。



・白頭巾、飛鳥の墓に視線を向ける。



白頭巾  「飛鳥、しばらく待っててくれ。お前の仇は必ず俺が捜し出す」



・白頭巾、舞台右袖へ風のように去る。



・みどり、頭を振りながら、ふらふらと立ち上がる。



みどり  「今の声は何だったのかしら? 鬼の権造が兄上の仇じゃないって?──(はたと)えっ!」

・みどり、獅子累々周りの様子に仰天し、茫然と辺りを見回す。少し間をおいて、合点がいった表隋。

みどり  「早川さんだわ。早川さん、生きているんだわ。──(大声で)早川さあん! (振り向いて)早川さあ──ん!」



・みどり、飛鳥の墓に視線を移す。



みどり  「兄上、決めましたわ。私、早川さんについていきます。どこまでも、どこまでも。そして、きっと兄上の仇を!──早川さあん!」

・みどり、叫びつつ、舞台左袖に走り去る。



第一幕   幕



 全三幕です。データファイルを紛失してしまったので、十数年前に印刷した紙を見ながら、改めてキーボードで打ち直しています。なかなか地道な作業です。

 続きは気長にお待ちください。

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[ 2015/07/01 23:32 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

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