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快傑白頭巾 第三幕 「さらば戦いの日々・それから……」 (戯曲)

シーン1 畑

・二人の農民が鍬で畑を耕している。

農民A  「それにしても、わしらの殿様は日本一の名君じゃ」

農民B  「んだ。民の暮らしのことをよく考えてくださる。あの用水を作っていただいたおかげで、日照りの時も田んぼの水に困ることはのうなった」

農民A  「堤のことも忘れちゃいかん。あれを作っていただいてからというもの、どんな嵐の時も鉄砲水とは無縁じゃ」

農民B  「何よりうれしいのは、年貢が安いことじゃな」

農民A  「んだ、んだ。──なんでも、殿様はな、お忍びで民百姓の暮らしぶりを見て歩き、その経験を政治に役立てておられるそうじゃ」

農民A  「ほう」

・舞合の右袖から、鍬を担いだ妙な農民が通り掛かる。 野良着姿のくせに袴を履いているのだ。











投稿者:クロノイチ


妙な農民 「どれ、余も畑仕事に交ぜてもらえぬか」
農民A  「(怪誘そうに)誰じゃ、あんた」
農民B  「胡散臭い奴じゃな、あっちへ行きやがれ」
妙な農民 「さようか」

・妙な農民、肩を落としてとぼとぼと舞台の右袖に引き下がる。

農民A  「何じゃろな、あいつは……」
農民B  「自分のことを『余』とか言ってたのう」
農民A  「余?──(はたと)も、ももも、もしや、あれが……あのお方が……」
農民B  「(慌てた顔で)と、殿様だかっ!」
農民A  「ま、まずい。無礼な口をきいちまっただ」
農民B  「後でお咎めを受げるのはごめんじゃ」
農民A  「逃げるだ」
農民B  「んだ」

・二人の農民、パニックを起こし、慌てて舞台左袖へ走り去る。


シーン2 道

・妙な農民、鍬を下ろし、道端の石の上にだらしなく腰掛けている。

妙な農氏 「ふう。余のどこが胡散臭かったのであろう」

・舞台左袖から早川健が現れ、妙な農民の前にひざまづく。

早川   「若草城主・山口利定(やまぐち・としさだ)公でございますな」
妙な農民 「な、何を申される。余はただの百姓に過ぎぬぞ」
早川   「私は早川健と申します。公儀といささか縁のある者」
殿様   「何? 幕府の……? (きちんと座りなおして)何用があって参った?」
早川   「城代家老・鬼田刑部(きだ・ぎょうぶ)殿が、外国より大砲や鉄砲を大量に密輸しておられること、御存知でございますか?」
殿様   「な、何を申す。鬼田がそのような大それたこと、しでかすわけがない」
早川   「早速、城に戻って事実をお調べください。このような地で百姓ごっこをしておられる場合ではありませんぞ」
殿様   「百姓ごっことは何事。余は領民の暮らしをこの目で見届け、民のための善政を施そうと……」
早川   「それは、鬼田殿の受け売りでござりましょう? 鬼田殿は貴方様を体よく城外へ出し、その間を利用して思いのままに城を動かしております」

・殿様、怒って立ち上がる。

殿様   「馬鹿な。あやつは忠義の士じゃ。余は余の家臣を信じる。これ以上、鬼田を侮辱すると、ただでは済まさぬぞ」
謎の声  「殿。その上うな無礼者、拙者が斬り捨てまする」

・舞台右袖より、謎の侍登場。

殿様   「九兵衛! なぜここに?」
九兵衛  「御家老よりの御命令にて、陰から殿を警護しておりました。万一のことが起こらぬように」
早川   「そんなこと言っちゃって、実は、いつ殿様が帰り仕度に入るか、見張ってたんじゃないか? 悪事の最中に戻られちや、たまらんもんな」
九兵衛  「ふん。──そのような戯れ言、拙者が野牛九兵衛(やぎゅう・きゅうべえ)だと知った上で吐いているのかな」
早川   「若草藩剣術指南役・野牛九兵衛さんか。確か日本で二番目の剣術使いと聞いことがある」
九兵衛  「(ムッとした顔で)何? 拙者が日本一でないというのか?」
早川   「ああ、聞いた話では、そいつは凄い色男だとよ」
九兵衛  「誰だ、そいつは」
 
・早川、ヒュウウと口笛を吹く。右手人指し指と中指を顔の前で振りながら、チッチッチと舌打ちすると、親指で自分を指差す。

早川   (ニカッと笑って)どうだい、そんなにいい男かね」
九兵衛  「勝負だ、剣を抜け」

・九兵衛、剣を抜き中段に構える。早川、道端に落ちでいる小枝を指先でつまんで、数回素振り。

早川   「俺はこれで充分だぜ」
九兵衛  「たわけ! 貴様に拙者の剣が見切れるか」

・九兵衛、剣を構えたまま全く動かない。早川のみが片手でピシッ、ピシッと小枝を振っている。九兵衛、次第にぜいぜいと息を荒くしていく。

九兵衛  「(焦った様子で)う、うう。目にも止まらぬ拙者の閃光則を全部受け止めるとは」
早川   「目にも止まらんだと? しっかり見えてたさ。並の人間には貴様が止まっているように見えたかもしれんが、俺には通用せん。目に止まらんとは、こういう剣のことをいうんだ」

・早川、小枝を振り上げたところで、動作を止める。
九兵偉  「うわああ!」

・九兵衛、突然、後ろに吹っ飛ぶ。早川は全然何もしていない……ように見える。

九兵衛  「す、凄い風圧だ!」
早川   「どうだ。見えたか?」
九兵衛  「(悔しそうに)くっ……」
早川   「わかったか。これが日本一の剣ってもんだ。あっちへ行きな」
九兵衛  「くそっ! 覚えていろ」

・九兵衛、舞台右袖へ。早川、殿様に視線を移す。

早川   「(厳しい視線で)利定様。どうか鬼田殿をお調べください。そして、罪状が明らかになった時は、私に鬼田殿の処分をお任せ願いたく……」
殿様   「むむ」
早川   「このまま事が表沙汰になったなら、若草藩のお取り潰しは確実です。しかし貴方様はこの地の民にとってかけがえのないお方。できれば、お救いしたいと思っております。御協力くだされば、悪いようには致しませぬ」
殿様   「(怒って)何を言うか。ぞちは余をたぶらかして、鬼田を陥れようという腹であろう。ええい、聞く耳持たぬわ。さっさと立ち去れい!」
早川   「(残念そうに)そうですか。では、今後は私の好きなようにやらせていただきます」
  
・早川、一礼して舞台左袖へ去る。

殿様   「くそっ、何だ、あやつは」

・殿様、鍬を担ぎ、舞台右袖へ。


 シーン3 道

・みどりが舞台の右袖、東条真吾が舞台の左袖から出てくる。

東条   「どうでござった?」
みどり  「駄目です。手掛かりすら」
東条   「この辺にやって来たことは間違いないのでござるが」
みどり  「(悲しげに)早川さん、いったいどこに……」

・舞台の両袖から、多数の浪人が現れる。

浪人A  「犬が。何をこそこそ嗅ぎ回っていやがる」

・みどり、東条の後ろに隠れる。

東条   「何者だ」
浪人B  「てめえらの知ったこっちゃないぜ」

・浪人達、東条に斬りかかる。剣を抜き、応戦する東条。けれども多勢に無勢で、苦戦は避けられない。
・そこへ顔に黒い布を巻き付けた謎の男登場。

謎の男  「東条、助太刀するぞ!」

・二人の力で、たちまち、浪人達を半分ほど斬り倒す。

浪人A  「くそ! 引き上げだ!」

・残った浪人、舞台の両袖ヘバラバラに逃げ去る。

謎の男  「東条、だらしないな」

・謎の男、顔の布を取る。

東条   「神竜、神竜ではないか」
謎の男  「久し振りだな、東条」
みどり  「(東条に)この方は?」
東条   「神童伸介(じんりゅう・しんすけ)。公儀隠密最強の忍者でござる」
神竜   「よせよ。照れるじゃないか」
東条   「(みどりを手で指して)こちらはみどり殿。飛鳥殿の妹御でごさる」
神竜   「ほう。あなたが」
みどり  「ええ」
東条   「ところで、神竜、江戸にいたお主が、なぜここに?」
神竜   「飛鳥殿が殺された上に、届くはずの密書が届かない。由々しき事態だってことで、急速、俺が派遣されたんだ」
東条   「なるほど」
神竜   「飛鳥殿の死と密書の存在を江戸に伝えた後、何をしていた?」
東条   「色々あってな。──なあ、お主が手を貸してくれると助かるんだが」
神竜   「その前にそっちの事情を聞きたい」
東条   「わかった。これまでの経緯を説明するから、ついてきてくれ」
神竜   「うむ」

・二人、連れ立って、舞台の右袖へ去る。


 シーン4 城の中(牢屋)

・殿様、舞台左側にある檻の中に入れられている。その前に立っているのは、ぴかぴかの着物を着た上級武士。

ナレーター「ここは若草城の中にある牢獄。牢の前に立つ男こそ、若草藩城代家老・鬼田刑部である」

殿様   「刑部! いったいこれは何の真似だ」
鬼田   「幕府の密偵に何やら吹き込まれたみたいですな。申しわけありませんが、先手を打たせていただきました」
殿様   「余はお前を信じていたのだぞ」
鬼田   「(笑いながら)お人よしですな、殿は」
殿様   「武器を大量に密輸しているというのは、まことか?」
鬼田   「ええ」
殿様   「何のためだ?」
鬼田   「もうじきわかりますよ」

・九兵衛、舞台右袖からやってきて、鬼田の前で片膝をつく。

九兵衛  「鬼田様、武器は方永橋(ほうえいばし)の下に、無事到着したそうにござります」
殿様   「(口惜しげに)九兵衛、お前も、鬼田の仲間だとはな」
九兵衛  「拙者ほどの剣の使い手が、何ゆえこんな小藩の剣術指南役で満足しているのか、不思議ではござりませんでしたか?全ては大いなる目的のため」
鬼田   「九兵衛、口数が多いぞ」
九兵衛  「ははっ」
鬼田   「九兵衛、殿を見張っていろ。私は、武器運搬の指揮を執る」
九兵衛  「はっ」

・鬼田、舞台右袖へ。

九兵衛  「やれやれ、なぜ拙者が牢の番人などをやらねばならんのだ」

・突如、舞台左袖から早川健が現れる。

九兵衛  「やや、貴様、どうしてここに」
早川   「殿様を助けるために決まってるだろ」
九兵衛  「おのれ!」

・九兵衛、早川に斬りつける。早川は動かない。だが、九兵衛はたちまち弾き飛ばされてしまう。

九兵衛  「ぎゃっ!」

・九兵衛、気絶する。

早川   「(振り返って)お前には一生、俺の動きは見えん」

・早川、牢の扉を蹴り壊す。

殿様   「そなたは確か、早川」

・殿様、檻の外へ。

早川   「ほら、私の言った通りだったでしょう? さ、城から脱出しますよ」
殿様   「何を言う! ここは余の城じゃ。直ちに城内へ命令を発し、鬼田の一味を一掃してくれる」
早川   「今は駄目です。鬼田の一派は、完全に城内を牛耳っています。ここは一旦、城を出て作戦を考えましょう」
殿様   「そうか。(うなだれる)──まあ、どのみちここまで、事態が進展してしまった以上、余と若草藩の運命は風前の灯。そなたの好きなようにするがよい」
早川   「諦めるのはまだ早いですよ。幕府に気付かれる前に全てを闇に葬ってしまえばいいんです」
殿様   「何? そなたは幕府の者であろう?」
早川   「私はいい加減な男でしてね。──さあ、行きましょう」
殿様   「うむ」
  
 ・二人、舞台の左袖へ。


 シーン5 方永橋の近くの道。

・背景右端に、橋が見える。
・早川、舞台の左袖から出てくる。
早川   「まったく、世話の焼ける殿様だぜ。しばらくあの水車小屋に隠れていてもらおう。(方永橋を見て)さて、あそこに見えるのが例の橋か。急がねば」
叫び声  「持てい!」

・九兵衛と五人の浪人、舞台の左袖から飛び出してくる。振り向く早川。

早川   「(うんざりした様子で)また、お前か」
九兵衛  「命に代えても、橋には行かせん」

・九兵衛達、一斉に早川に襲いかかる。それに素手で立ち向かう早川。たちまち三人の浪人を倒す。業を煮やした九兵衛が早川に襲いかがらんとした時、黒い布を顔に巻き付けた神竜、舞台右袖から疾風の如く登場。閃光の剣が走り、九兵衛を斬り裂く。同時に早川、残る二人の浪人を殴り倒す。

神竜   「早川殿だな」
早川   「そうだが……」
神竜   「(大声で)おーい、みんな! 早川殿だぞ」

・みどりと東条、舞台右袖から駆け込んでくる。

みどり  「早川さん!」
東条   「早川殿!」
早川   「東条殿とみどりさん。なぜここに?」
みどり  「貴方が何も言わずに行ってしまわれたので、随分捜しましたわ」
東条   「いったい、飛鳥殿の密書にはどんなことが書かれてあったのでござるか?」
早川   「今はまだ言えない」
神竜   「なぜだ?」
早川   「(東条の方を見て)この人は?」
東条   「神竜伸介でござる。飛鳥殿の死を受けて急速派遣された、幕府最強の忍者」
早川   「そうか。さすかにいい腕をしている」
神竜   「(険しい顔で)密書の内容を言えない理由とは、何だ?」
早川   「ある人を救うため」
神竜   「答えになっていないぞ」
早川   「俺に全てを任せてほしい。飛鳥から受け継いだ仕事は、この俺が絶対にやり遂げてみせる」
神竜   「万一の時の任務の引き継ぎはどうする」
早川   「引き継ぎ? そんなもの必要ない。公儀隠密が二人も揃っていて、俺を見殺しにするつもりか?」
東条   「(静かに)わかり申した。お任せ致そう。我らは黙って貴公にお供致す」
神竜   「(咎めるように)東条!」
東条   「いいのだ」
早川   「方永橋へ行く。ついてきてくれ」

・早川、すたすたと舞台右袖へ行こうとする。
・その時、鬼田と浪人達が、何事だっ、と叫びつつ、舞台右袖から登場。

鬼田   「(惨状を見回して)やや、これはいったい。(急にキッとなって)よくもやってくれたな、幕府の隠密め! 貴様らもあの世に送ってやる!」
早川   「(突如いきりたって)おい! 鬼田っ! 今、『貴様らも』と言ったな! 『貴様らも』と……」
鬼田   「それがどうした」
早川   「飛鳥を殺したのは貴様か! 鬼田別部、許さん!」

・早川、鬼田らに殴りかかる。浪人達は刀を抜く暇もなく倒されてしまう。鬼田、それを見て慌てふためき、舞台右袖へ逃げ出す。

早川   「持てっ!」

・追い掛ける早川達。


 シーン6 道

・舞台正面奥に、またしても例の踏み台。
・早川と鬼田、舞台右袖から出てくる。早川、鬼田の後ろ襟を摑み、無理やり身体を引き寄せる。

鬼田   「ぐっ! 首が締まる」

・首を回して早川の方を向こうとする鬼田のこめかみに、早川がアイアンクロー。
・舞台右袖からゆっくり出てきて状況を見守る神竜、東条、みどり。

早川   「十月十日、飛鳥五郎という男を殺したのは貴様だな!」
鬼田   「ち、違う」
早川   「貴様だな!」

・早川、ぎりぎりと鬼田の頭に爪をくい込ませる。

鬼田   「わ、私ではない。その日、私はうどんの食べ過ぎで寝込んでいた」
早川   「じゃあ、殺したのは誰だ!」
鬼田   「わ、私達の総統……」

・唐突に早川の後ろの神竜、顔に巻き付けていた布を取り始める。

早川   「総統だと? そいつの名は?」
鬼田   「そ、それは……」

・鬼田、あらわになった神竜の顔を見つけ、恐怖に顔を歪ませる。

鬼田   「ひっ! そ、総統閣下!」

・バンと銃声が響く。

鬼田   「ぎゃあっ」

・鬼田、心臓を撃たれ、倒れる。即死状態。早川が後ろを振り向くと、神竜がピストルを握っている。

神竜   「我が組織におしゃべりはいらん」
東条   「神竜、まさか貴公が……!」
神竜   「ふふふふふ。ははははは!(高笑い)」

・東条とみどり、早川の後ろへ。

早川   「(神竜を睨んで)公儀隠密の中に敵がいるのはわかっていた。──根拠は二つある。飛鳥が密書を誰に届けるのか言わないまま死んでいったこと。みどりさんが密書を持っているのを仮面の悪太郎が知っていたこと」
神竜   「ふふん。さすがだね」
早川   「だが、そいつが全ての黒幕だとは思いもしなかったぞ。──やい、神竜! 鬼田達を操って何を企んでいた!」

・神竜、ピストルを握ったまま、余裕の笑い。

神竜   「ふはははは。聞け! 下郎ども。俺の真の名は、豊臣太郎秀継(とよとみ・たろう・ひでつぐ)」
早川   「豊臣? 豊臣家の残党か」
神竜   「そう。豊臣秀頼の曾孫だ。この俺の体内は、徳川家に対する豊臣家百年の恨みで満ち溢れている。徳川幕府を潰すことこそ、俺の最終目的」
東条   「なんてことだ」
神童   「俺は、隠密の中に潜り込み、任務で全国を飛び回りながら、幕府に不満を持つ浪人や大名を味方につけていった。そして、外国から近代兵器を大量に買いつけた今、幕府転覆のための企ては、九分通り完成したといってもいい」
早川   「飛鳥五郎を殺したのは貴様だな!」
神竜   「その通り! 最近の奴の連絡内容から、近々まずいことを嗅ぎつけられそうな予感がしたのでな。──早川。貴様が秘密主義で助かったよ。貴様ら三人を殺すだけで、もはや機密が漏れる心配はなくなる」
東条   「そうか。我らと行動を共にしたのは、その辺の状況を探るのが目的か」
早川   「おのれ!」

・早川、神竜に飛び掛かろうとする。だが、神竜の引き金を引く動作が一瞬早い。バンと銃声がして、早川、後ろへ吹き飛ばされる。そのままよろけて舞台左袖へ。

みどり  「(絶叫)早川さんっ!」
神竜   「さあて、あと二人だ」

・神竜、冷酷な笑みを浮かべ、銃口をみどりに向ける。

謎の声  「待てっ!」
神竜   「誰だっ!」

・舞台左袖からハリセンを持って白頭巾登場。しかし、衣装の胸の辺りには、血がべっとりとついている。
・白頭巾、踏み台の上へ。フラフラとしながらも、ポーズだけはしっかり決める。

白頭巾  「ははははは。シュバッと参上、シュバッと解決。人呼んでさすらいの正義の味方! ──快傑白頭巾!」
神竜   「血だ! ──噂の白頭巾の正体は早川だったのか」
白頭巾  「鬼田を使って武器を密輸させ、幕府転覆を画策し、あまつさえ、俺の親友、飛鳥五郎をも殺した豊臣秀継! 貴様だけは絶対に許さん!──とおっ!」
  
・白頭巾、踏み台から飛び降りる。
・神竜、ピストルを速射。ハリセンを振り回して防ぐ、白頭巾。

白頭巾  「ここは危ない。東条殿、みどりさんを頼む」
東条   「うむ」
白頭巾  「それから、この先の水車小屋にいる殿様を城へ……」
東条   「心得た!」
白頭巾  「もう一つ。この一件で、殿様と若草藩が公儀のお咎めを受けぬよう、何とか取り計らってくれ。幕府を救う駄賃として頼む」
東条   「相わかった!」
みどり  「早川さん! 死なないでっ」

・みどり、東条に庇われつつ、舞台左袖へ。

神竜   「貴様を倒したら、そいつらもじきに後を追わせてやる」
白頭巾  「そうはさせん!」

・白頭巾、決死の勢いで神竜に体当たりすると、神竜の身体をうまく抱き抱え、舞台右袖へよろよろと進む。神竜、ピストルを使おうともがくが、腕の位置が悪く、使えない。

白頭巾  「このまま、しばらく時間と距離を稼がせてもらうぜ」
神竜   「放せ、くたばり損ないが」
白頭巾  「はは、この態勢ではお互い、攻撃もできんな」

・二人、舞台右袖へ消える。


 シーン7 山

・白頭巾、神竜を抱き抱えたまま、舞台右袖より登場。舞台正面で遂に力尽き、倒れ込んでしまう。バッと撥ね起き、ピストルを構える神竜。

神竜   「手間を取らせやがって!」
白頭巾  「情けない奴め。日本で二番目の腕を持つ忍術使いでありながら、最後まで銃に頼るとはな」
神竜   「二番目? 公儀隠密最強の俺の他に日本一がいるというのか?」

・白頭巾、親指で自分を指す。

白頭巾  「俺さ」
神竜   「ほう。──では、貴様は俺の忍術で殺してやる。日本一の忍術でな」

・神竜、ピストルをしまい、顔に黒い布を巻く。次いで、印を結ぶと、ぶつぶつと呪文唱え出す。

神竜   「分身の術!」

・舞台左袖から、もう一人の神竜現れる。

神竜   「覚悟!」

・二人の神竜、剣を抜く。よろよろと立ち上がる白頭巾。

白頭巾  「その程度か。ならばこちらも。──出でよ、分身!」

・白頭巾がサッと腕を振ると、舞台雨袖から三人の白頭巾が出現。
・四人の白頭巾、一斉にハリセンを持って、神竜に襲いかかる。

神竜   「うわわっ!──(ハリセンがヒットして)こんなはずでは……」

・二人の神竜、バッタリと倒れる。

白頭巾  「やったぞ飛鳥! 遂に、遂にお前の仇を討ったぞ!」

・天に向かって叫んだ途端、力尽きて倒れる四人の白頭巾。
・舞台暗転


 シーン8 山Ⅱ

・舞台正面に神竜が仰向けに倒れている。
・舞台左前に立て札。血のように赤い文字が書きなぐられている。「この者、天下の大謀反人也」との文字。
・舞台右袖からみどりと東条、殿様が現れる。

みどり  「あ、あれは神竜!」
東条   「よくぞ、やってくださった早川殿」
殿様   「ところで早川殿はどこじゃ。礼を申されば」
みどり  「早川さん、銃で撃たれているのよ。早く手当てしなくては。──(居ても立ってもいられずに)早川さあん!」
東条&殿様「早川殿ぉ! 早川殿ぉ!」

・みどり、何気なく足元を見て、ぎょっとなる。

みどり  「あ!」

・東条&殿様、みどりの方を向く。

みどり  「血だわ。きっと早川さんの血。点々と続いて……」

・みどりが血の跡を辿り始めると、残る二人もそれに続く。そして、舞台左隅へ。

東条   「こ、これは……」
みどり  「(愕然と)崖……。崖で血の跡が途絶えてる」
殿様   「なんということじゃ」
東条   「(下を覗き込んで)ここから落ちたとすると……絶望でござる」
みどり  「(悲鳴にも似た声で)早川さあん……! 早川さあん!」

・空に虚しく叫びが響き渡る。
・みどり、東条の胸の中で泣く。うなだれる殿様。

ナレーター「その後、東条真吾の計らいで、今回の一件は鬼田刑部の謀叛未遂事件として片付けられ、密輸された武器も密かに処分された。若草藩主・山口利定は、幕府から何のお咎めを受けることもなく、名君として末永く民に愛されたそうである」


 シーン9 飛鳥の墓

・舞台右端に飛鳥の墓
・みどり、墓参りの道具を持って、舞台左袖から現れる。

みどり  「(驚きの表情で)まあ。もう草がぼうぼう。兄上が亡くなってから半月も経っていないのに。本当に雑草は生命力が強いわね。──(フッと表情を曇らせて)人はすぐに死んじゃうけど……」

・みどり、しばらく無言でその場に佇む。
みどり  「(ふと気付いて)あれ、お線香の匂い。誰かお参りに来たのかしら」

・みどり、墓の正面へ回る。

みどり  「こ、これは!」

・みどり、供えてあった白い布の固まりを手にとって確かめる。

みどり  「間違いないわ。これは白頭巾の衣装。早川さんが来たんだわ。早川さんが生きている……」

・みどり、白頭巾の衣装を胸に抱き締める。──その時、遠方から鍵盤ハーモニカの音が。
「きらきら星」のメロディである。

みどり  「聞こえる。あの旋律、あの音色。私を何度も助けてくれた……。──兄上ごめんなさい。また後で来ますから」

・みどり、顔を上げ、満面の笑顔。

みどり  「早川さあん!」

・みどり、舞台左袖へ駆けていく。



快傑白頭巾
            幕




*『快傑ズバット』 のオマージュ舞台劇 『快傑白頭巾』 完結しました。超チープな演出やペタペタな展開をギャグとして受け止めていただけると幸いです。

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[ 2015/07/12 00:46 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

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