そらいけ! タンパンマン 前編 (ショート・ストーリー)

 以前、アンパンマンのパロディとして、ゾウキンマンとフキンちゃんというキャラを考えましたが、なんとなくストーリーが作れそうな気がしたので、今回考えてみました。
 
 ただ、まだ構想がうまくまとまりきっていません。


 人物描写や状況描写もほとんど皆無ですが、台詞回しだけでも楽しんでいただけたら幸いです。




 今日も今日とて我らがヒーロー・タンパンマンは、毛脛剥き出しの短パン姿。短パンそのものの頭をヒラヒラさせながら、二人の友達と一緒に空中パトロールをしていた。

 ちなみにその友達とは、鉄板焼きの鉄板そのものの頭を持つ、テッパンマンと、フライパンそのものの頭を持つフライパンマンである。

 なんでこのような妙ちきりんな連中が生まれたのかは定かではない。しかし、少なくとも、やなせたかし氏と無関係なのは確かである。


「いい天気だねえ。うーん、紫外線が気持ちいい。頭の湿り気も取れるし日光消毒もできるし、言うことなしだね、テッパンマン」

「タンパンマン! そんなこと思ってるのは、あなただけですよ。僕達には寒過ぎます。ねえ、フライパンマン」

「おおよ。やっぱせめてガスコンロの炎くらい、熱く(暑く)ないとな。目玉焼きもできやしない」











投稿者:クロノイチ


「そんなに暑かったら僕、燃えちゃうよ。化学繊維だから、あっという間にボーッだよ。黒こげになってポリ製のゴミバケツに捨てられちゃう。『ポリへ捨てる(ポリエステル)』なんちゃって」
「つまらないですね」 

 一人で盛り上がるタンパンマンに向かってテッパンマンが冷やかに言った。

「いっぺん、炒めたろか」

 フライパンマンも面白くなかったらしい。

「そもそも『ポリ製』って言葉は、ほぼ『ポリエチレン製』のことを指します。ポリエステル製なんかじゃないですよ。それに、幾らポリ製でもゴミバケツのことを『ポリ』とは呼びません」
「そう真面目に反論しなくたって……」
「とにかく炒めたろ!」
「わあー、ま、待って!」.

 タンパンマン達の友情に亀裂が生じかけた、その時である。突然、真下の森の中から女の子の声が響いてきた。

「オーイ。助けてえ。オーイ」
「行ってみよう」

 タンパンマンがすぐさま後の二人に呼び掛ける。

「おう!」

 皆、大いに乗り気である。メチャクチャ張り切っているといってもいい。もしも響いてきたのが男の声であれば、「何か聞こえたっけ?」「鳥の声だろ」「先を急ぎましょう」の完全無視モードだったのだが。

 三人は直ちに森へ急降下し、慌てて声の主を探し始めた。実は三人とも目下、恋人募集中なのである。まあ、皆、特徴的過ぎる顔だけにこれまでの戦果はさんざんなものだったが、タンパンマンは自分の顔の柔らかい手触りに密かな自信を持っていたし、フライパンマンとテッパンマンは、最近、知り合いの女性が「石鍋」という姓の男と結婚したのを知り、「石鍋が結婚できるなら、俺達だって」と内心、ハチャメチャな闘志を燃やしていた。

「こ、これは!」
「す、すごい」
「オオーッ!」
「キャア! 見ないで!」

 森の中を駆けずり回った末、ようやく声の主とおぼしき可愛らしい女の子を見つけた三人は、その姿を見て思わず唾を飲んだ。彼女は上半身こそ、普通のセーラー服を身につけていたが、下半身はなんと下着一枚きりだったのである。──なお蛇足ではあるが、その下着はフンドシでもトランクスでもない。ああ、本当に蛇足だった。

「うわあっ!」
「あ、タンパンマン、鼻血出しやがった。きったねえ!」

 顔を真っ赤に染めたタンパンマンがいきなりヘロヘロになった。
「うーん。顔が汚れて力が出ない……」


 だが、フライパンマンとテッパンマンは、既にタンパンマンなど見向きもしていない。下着姿の女の子に夢中である。

「み、見ないで!あっち向いてよ」
「呼ばれたからわざわざ出向いてあげたんですが……」
「俺達の親切心を足蹴にしやがって。いっぺん焦げ目つけたろか」

 恩着せがましいことを言っているが、二人の本心はそのエロい目つきで明らかだ。

 そんな時、タンパンマンがフラリと立ち上がった。

「そうだ……。そんなに恥ずかしいんなら僕の顔を履くといいよ。ちょっと鼻血で湿ってるけど……」

 タンパンマンは自分の頭をスポッと取り外すと、女の子に差し出した。さすがは我らのヒーロー・タンパンマン。どんな時でも自己犠牲の精神を忘れない。ただ、ほとんどの場合、ありがた迷惑である。

「そ、そんな……悪いわ……」
と、口では言っているが、女の子が内心、嫌がっているのは言うまでもない。目と鼻と口がついた鼻血まみれの短パンを履くのなんて、誰だって願い下げだ。

「遠慮しないで……。困ってる人に履いてもらうのも、僕の使命なんだから。顔はまた、ジャージおじさんに縫ってもらえばいいし……」
「お嬢さん……。人の厚意は素直に受けるものですよ」

 テッパンマンが本心を押し隠しつつ、上っ面だけの紳士的な口調で忠告する。

「そ、そうだ。あなた達、飛べるんでしょ。どこかでサーッとスカート調達してきてもらえないかしら。お金ならあるのよ」
「お金は……おっかねえ……。──うぐっ!」

 どこから出しているのかわからないキテレツな声でダジャレを飛ばした首無しのタンパンマンは、フライパンマンに蹴りを入れられ、あっけなく気絶してしまった。

「へへ。お嬢様。そういうことは先におっしゃっていただきたいもんですなあ。ちと手数料は高うござんすが、よござんすか?」
 
 フライパンマンが文字通りの鉄面皮に結構無理して下卑た笑みを浮かべながら、揉み手で女の子に近づいていく。

「『ふっふっふ、大黒屋、お主もワルよのう』ですね」

 片やテッパンマンはどす黒い顔を僅かに歪めてふてぶてしく笑いつつ、語尾だけは丁寧にしてアイデンティティを保った。

「ちょっとぉ、足元見てくれるわねえ」

 女の子が涙目で抗議する。

「足元なんて見てねえぜ。見てるのはパンツ」
「そうですよ」
「キャアッ! もうイヤあ!」
「ああっ! 鼻血まみれの短パン、慌てて履きやがった」

 一瞬、ザマミロという表情をみせた女の子だったが、すぐさまベソかき顔になった。

「ああん、カピカピになってるぅ」
「鼻血、乾いてしまったみたいですね」

 その時、我らがタンパンマンが喜びの叫びとともに復活した。

「──うおおおお! 密着っ!」

 ただし、復活したのは顏のみ。顔に当たる心地いい温もりと感触が、タンパンマンの意識を蘇らせたのだ。
だが、幸せはそう長くは続かない。

「自分ばっかりいい目みるなんて、ずるいですよ」
「いっぺん焼き色つけたる!」
「ギャア──ッ!」

 テッパンマンとフライパンマンがよってたかってタンパンマンの脛毛を抜くと、離れた顔面にまで痛みが伝わったらしく、哀れ、彼はまたしても気絶してしまった。


 三十分後、女の子と極悪トリオは無事和解し……。
「誰が極悪じゃい!」
「誰がですか!」
「君達だよ。君達。僕までいっしょくたにされて、いい迷惑だよ。──グエッ」
 タンパンマンは意識を取り戻し……たと思ったら、つい今しがた冥土に旅立ち……。
「旅立ってない!」
 そして、女の子は念願の新品のスカートを手に入れた。その際、タンパンマンの頭は、ポリ製のゴミバケツに捨てられたが、それは彼としても本望であったろう。


「そっかあ、君の名前はナンノさんっていうのか」
「うん。そうナンノよ」
「あはは、君って面白いね」
「よく言われるわ」

 なぜかいきなり女の子と首無しタンパンマンの会話が弾んでいる。

「──おい、今の一連の台詞、なんか、唐突過ぎないか?」

 フライパンマンが怪訝そうにタンパンマンに問うた。

「いいんだ。そろそろドラマを進めないとね。ちょっと話の展開がスローリーよ。──ああっ! ストーリーとスローリーを掛けようと思ったのに、うまくいかなかった」
「てめえが話の展開遅らせてるんじゃねえか」
「嘆かないで、タンパンマン。あなたのギャグはいつだってうまくいってない」

 フライパンマンがタンパンマンをどつき、テッパンマンがけなす。見かねてナンノが間に割って入った。

「内輪もめはやめなさいな。お金、あげたでしょ」
「スカート、買ってきてやったじゃないか。偉そうに言うな」
「ふん。ケチ」

 その時,ナンノの腹がグーッと鳴った。

「あら、スカート履いて安心したら、急にひもじいのを思い出しちゃった。あたし、神殿を抜け出して三日三晩、何も食べてないのよ」

 ナンノは恥ずかしそうに早口で言い訳をした。

「じゃあ、スカート脱ぎゃいい。空腹を忘れる」
「そんな言い方ってないでしょ」

 フライパンマンの乱暴な物言いに、ほっぺたを膨らませてナンノがむくれる。

「ちょっと待って。今、神殿って言ったね。ナンノさんはもしかして、この先にあるドッコイ神殿にいる人?」
「ああん。そんなの後回し。お腹空いたあ。我慢できなあい」

 タンパンマンの問いを無視し、ナンノは手足をバタバタさせて、駄々をこねた。

「わがままだなあ。でも、僕達、食べ物持ってないよ」
「フライパンマンがお金持ってるわ。スカート代と手数料ってことで、さっき全財産渡したの」
「手数料は買い物帰りにパチンコでスッた。もう一銭もない」
「そんなあ。じゃ、何か作ってよ。あんた達、鉄板とフライパンなんだから料理はお手のもんでしょ」
「材料がなきゃなあ。──フライパン……齧るか?」
「鉄板、齧りますか?」
「くすん。お腹減ったよう」

 ナンノは両手で胃の辺りを押さえてうずくまった。

「そうだ。僕の友達の友達に、頭が食べ物の奴がいるんだ。テレパシーで呼んであげようか?」
「えっ?それって、もしかして、アンパンマン?」

 タンバンマンの申し出に、ナンノの目が輝いた。

「いや、ザンパンマン、っていうんだけど」
「げっ!」

 輝いた目が一瞬にしてブラックホールと化す。

「──念のために聞くけど、どんな頭なの?」
「薄汚れたポリパケツの中に干からびた御飯が詰まってて尾頭付きの魚の骨が突き刺さってて、タクアンの尻尾やら刺し身のツマやらパセリやらがごまんとトッピングされてて、とどめに各種汁物が絶妙にブレンドされた特製スープがぶっかけられてる、栄養満点、ピタミン豊富、カルシウムもたっぷりの究極の頭さ。今すぐ呼んであげるからね」
「悪いけど、遠慮するわ。そんなの食べるくらいなら、ほら、そこに大量に生えてる正体不明のキノコを食べてやる。食用か毒キノコか、二つに一つ! 人生はギャンブルよ!」
「物がキノコだけに、これがホントの『いキノコりゲーム』だな。うわっはっは!」

 フライパンマンが会話に割り込んで大笑いする。

「あはははは」

 フライパンマンに迎合するように、テッパンマンも笑った。

「──くだらない」

 会話に水を差されたタンパンマンが不貞腐れた声で言う。

「くだらないだと!」
「くだらないだって!」
「じゃあ、何か? タンパンマンは、そこのキノコを食べても、命に別状がないばかりか、腹も下らないと主張するわけだな」

 フライパンマンがタンパンマンに詰め寄った。どうにもこうにもムチャクチャな言いがかりである。

「そ、そんなこと言ってないよ。僕は、ギャグとしてはちょっとありきたりかなと……」
「いいや、言った」
「言ったと思います」

 しどろもどろになるタンパンマンに、テッパンマンが追い打ちを掛けた。

「それほど自信があるんなら、さっそく毒味をしてもらおう」
「僕、今、頭がないんだけど……」

 フライパンマンが虚を突かれたような顔をした。
「うーむ。確かにそれじゃ何も食えんわな。役立たずめ。頭がないだけに、これがホントの『能無し(脳無し)』だな」
「フライパンマンもだんだんタンパンマンみたいになってきましたね」

 テッパンマンは誰にも聞こえないような声でそう呟くと、チッと舌打ちをした。

 そうこうしているうちに、謎の少女ナンノはひもじさのあまり、とうとう倒れてしまった。

「ありゃりゃ」

 慌ててタンパンマンが介抱する。
 フライパンマンとテッパンマンが、やれやれといった調子で肩をすくめた。

「チェッ仕方ないな。一文の得にもならないが、ちょっくら家まで戻って、食いもんでも探してくるか」
「じゃ、僕は、ジャージおじさんの所へ行って、タンパンマンの新しい頭をもらってきてあげますよ」
「みんな……ありがとう。何だかんだいっても、やっぱり君達はやさしいんだね」
「今頃気づきましたか」
「友達甲斐のない奴だぜ」
などとテッパンマンとフライパンマンは言っているが、本音はこうであった。
(俺も腹減ったな。早く家に帰ってなんか食おう)
(首無しのタンパンマンなんて、薄気味悪くてこれ以上見てられませんよ)

 気を失ったナンノと動けないタンパンマンを残し、テッパンマンとフライパンマンは去っていった。その時である。大地を揺るがす大きな地響きとともに、巨大な鉄の魔神が出現し、不気味な唸り声を発した。

「な、なんだ? ──お、おいナンノさん! しっかりして! 気絶してる場合じゃないよ」
「う、ううーん。あれ、あたしったら、今まで何を……? ──ところで、御飯は?」
「それどころじゃない! あれ見てよ、あれ!」
「あっ! あれは、まさしくドッコイ神殿の守護神『ドッコイ・ダイサーク』!」
「ドッコイ・ダイサークだって?」
「ドッコイ神殿の神々を守護するために造られたスーパーロボットよ。今は悪い奴らに操られてるの」
「侵入者を拘束スル……。侵入者を拘束スル……。ドッコイ、ドッコイ」

 ドッコイ・ダイサークは抑揚のない機械的な声を発しつつ、二人に向かって大きな腕を伸ばした。

「逃げるわよ」
「と、言われても……力が出なくて……」
「ドッコイ! ドッコイ!」
「キャア、タンパンマン助けて!」
「うわあぁ! ──ナンノさん、僕を盾にするなんて……ひどいや……。ガクッ」

 ナンノに後ろから羽がい絞めにされたタンパンマンは、ドッコイ・ダイサークの腕の直撃を受けてあえなく気を失った。そして、そのまま魔神につまみ上げられ、いずこへともなく連れ去られてしまったのである。

「待っててタンパンマン。あなたが自分の身を犠牲にしてあたしを守ってくれた恩、決して忘れないわ。きっとテッパンマン達と一緒に助けに行くからね」
と、棒読み口調で言うだけ言って、一目散に逃げていくナンノであった。

続く
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[ 2015/07/14 23:45 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

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