上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。

















スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




人気ブログランキングへ にほんブログ村 その他趣味ブログ 多趣味へ ←クリック投票に協力して下さいませっ!

[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その12 (小説)

「『ライトニング』 が好きなの?」

 
 検索したらこれもいっぱいヒットするだろうな、と思いつつ、楓はちょっとだけ皮肉っぽく尋ねた。


「だって速そうな感じがするだろ。事実速いんだ」

「どんなふうに速いの?」

「相手からしたら、『押さえつけたかと思ったら逆に押さえつけられていて、何が起こったか全然わかんない』 ってくらい」

「ムチャクチャ凄いじゃないの、それ」












投稿者:クロノイチ


「だけど、特殊なカウンター技だから、使用できるタイミングは恐ろしくシビアなんだ。今の練習不足の僕じゃ、君相手にお手本さえ見せられない。んでも、まあ、一応試しにやってはみるか」

 覇斗が試合台の上に右手を載せる。楓はなんの躊躇もなくその手を握った。

「真上から押さえにきて。軽く本気で」

そう言いながら、覇斗が親指を前に倒す。あからさまなカウンター狙いの態勢だ。

「じゃ、行くわよ」

 言い終わると同時に、楓の親指が覇斗の親指にピタリと重なった。一瞬の出来事である。

「あれ、普通に押さえ込めちゃったけど、これでいいの?」

「いや、僕がやり損なっただけだ。やっぱり今の僕じゃ実力不足だったな」

 覇斗は淡々としていた。最初から失敗を覚悟の上でやっていたからだろう。

「── 仕方ない。楓さん、スピードを落としてやってみよう。それで原理だけでもわかるはずだ。ゆっくり押さえにきてくれるかい?」

「わかった。ゆっくり、ね」

 覇斗は親指を平らに寝かせた。それを目掛けて楓がピンと立てた親指を徐々に倒していく。そして二本の親指がまさに触れ合おうとした瞬間、覇斗は自分の親指を四十五度度右に傾けた。

「あっ」

「止まらないで。そのまま上から強く押さえつけてごらん」

 覇斗に促されるまま、楓が自分の親指に力を込めた。全ての力が真下の指に向けられる。だが、押さえ込めない。覇斗の親指の傾きに沿って、楓の親指がずり落ちてしまう。それと同時に覇斗の親指が左にポンと弾き飛ばされた。

わかりやすく譬えるなら 「枝豆の鞘を上からギュッと押さえたら、脇から豆が飛び出した」 状態である。覇斗が直ちに親指を引き戻すと、ちょうどそこには勢い余って倒れ伏した楓の親指があり、押さえつけてくれと言わんばかりになっていた。

「はい、ライトニング・カウンター、完成。── こいつをね、今みたいなわざとらしいカウンター狙いじゃなく、実戦の動きの中でやるんだ」

 完全にシステム化されたカウンター技だった。覇斗の意識の上では、彼はなんの防御も攻撃もしていない。ただ、相手に押さえ込まれる寸前に親指を傾け、その後、勝手に弾かれた親指を元の位置に戻しただけなのだ。

「凄い……。でもこれは……」

「恐ろしく難易度が高いだろ」

「うん。一歩間違ったら、ただの自爆じゃない」

 楓は両手を大きく広げて肩をすくめた。

「自分で考案しといてこう言うのもなんだけど、狙って使う技じゃないと思うよ。本当にやられそうになった時、一か八かで使ってみるぐらいじゃないかな。だから『最後の技』なんだ。逆転が決まったら最高に気持ちいいだろうね」

「なんでカウンター狙いは駄目なの? 今やったようにして相手の攻撃を待ち構える方が、指を傾けるタイミングは取りやすくなるはずよ」

 楓が心に浮かんだ疑問をパッと口に出すと、覇斗は「うーん」と唸りながら、首を横に振った。

「自分の親指を囮にして誘いを掛けると、相手は必ず罠を警戒する。きっと罠を回避しようとして変則的な攻撃を仕掛けてくるはずだ。でも、指を傾けることが意味を持つのは、相手が正攻法で真上から押さえつけてくる場合に限られる。横から来られるとこっちはお手上げだ。だから、相手に正攻法をためらわせるような戦法は使わない方がいいと思う」

「そっか。── となると、この技、リスクも大きいし、あんまり出番がないわね」


「だけど、君が僕と試合をする時には、君はこの技を警戒せざるをえなくなるだろ。これは、君が正面からの強引な押さえ込みという攻手(せめて)を失ったってことだ。そういう意味では、割と役に立つ技といえないかな?」

「あ、確かに……」

 楓は二人の勝負の場面を思い描きつつ、覇斗の言葉の意味を理解した。ライトニング・カウンターは、なんらかの形で技の存在を相手に知らしめることさえできれば、それが充分牽制の役割を果たすのである。

「だから、お互い様ってことにしたかったら、君も取り敢えず形だけでもライトニング・カウンターを習得しなきゃならないよ」

「そうね。一瞬でも『無駄な技かも』と思った自分が馬鹿だったわ。さすがは覇斗君ね」

「いや、実はね、結構使えない技も作ってるんだよ。例えばライトニング・カウンターにも没バージョンがあってね……」

「せっかく褒めたんだから、その辺、言わない方がカッコいいのに」

「そう? じゃ、内容には触れないでおく」

「どうせ聞くなら使える技の方がいいわ」

「まだ大会まで日があるから、何か開発してみるかな。楓さんも技を思いついたら僕を相手になんでも試してみるといい。僕に知られるのが嫌なら、内緒にしててもいいよ」

「ありがと。頑張ってみるわ。── そうそう、ほんの思いつきなんだけどね、覇斗君、こういうのって 『技』として認められる?」

「どんなの? 言ってみて」

「思いっきり早口の練習をして、カウントを速くするの。名付けて 『必殺! マシンガントーク』。── 駄目かな?」

 覇斗は面食らったような表情を浮かべ、次いで嬉しそうに、幾分愉快そうに微笑んだ。

「なんで笑うの?」

「いや、なんというか、気が合うなあと思ってさ。アレに勝つことを真剣に突き詰めたら、絶対そこに思い至るよね。僕は諦めたけど、君ならうまくやれると思うよ」
「あんたは諦めたの?」

「うん。いろんな意味で無理だった。でも恐らく君は、その技との相性がとてもいい。カウントって、審判がちゃんと聞き取れるってことが大前提だろ。楓さんの声は大きいし、歯切れが良くて軽やかだから、早口には向いてる。今から訓練を積めば相当の時間短縮が可能じゃないかな」

「よかった。挑戦してみる価値はあるってことね」

 楓はほっと胸をなで下ろした。

「── じゃ、そろそろ、音楽室の方へ行く?」

「行こっか。音楽室、使えるか確認するよ」

 覇斗が部屋の固定電話から音楽室に内線を掛ける。

「誰も出ないよ。空いてる」

「ラッキー! 追い出す手間が省けたわ」

 すぐさま二人は、グランドピアノの置いてある音楽室へ直行した。


続く


 短い割に説明が多いため、少々退屈な回だったかもしれませんが、実はこの回に重要な伏線が張ってあるのです。

 第三章を読み終えた後に、もう一度ここを読んでいただけたらと思います。

関連記事




人気ブログランキングへ にほんブログ村 その他趣味ブログ 多趣味へ ←クリック投票に協力して下さいませっ!

[ 2016/06/18 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(2)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する



父の墓を買うことにしました
父は生前、合葬が良い、と言ってたのですが、遺された家族で話し合い、墓を建てることとなりました
小さいお墓です
[ 2016/06/30 22:37 ] [ 編集 ]

山口ジジイ さん、

墓の無い人生は、儚いもんだすから。。。

[ 2016/07/07 01:25 ] [ 編集 ]

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://anthony3b.blog108.fc2.com/tb.php/5997-5383091a