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特大家族 第二章 リセットスイッチ その14 (小説)

同じ頃、美晴子の部屋。パジャマに着替え中だった美晴子があっけに取られて硬直していた。


 千春子が、不意にノックもなく転がるように上がり込んできたからである。


「ええと、千春子、税務署の予告なしのガサ入れみたいにいきなり何かな?」

 いそいそと七分丈のパンツをずり上げながら、美晴子が訊ねる。

「聞いて聞いて。一大事やよ」

「何が一大事なのよ」

「さっき、いきなりピンときたんやちゃ」

「だから、何?」












投稿者:クロノイチ


 一向に要領を得ない千春子の応答に、美晴子がしびれを切らしそうになる。

「まあ、座られま」

 促されるがままに美晴子が長椅子に腰掛けると、すぐさまその隣に千春子が座った。誰が部屋の主なのかわからない。

「りかちゃん(※茉莉花のこと)が食堂で言ってたこと、本当かもしれんよ」

「えええ!」

 美晴子が派手に椅子からずり落ちかけた。

「りかちゃん、冗談の形でわたし達にヒントをくれたんかも。だって、りかちゃんの占い、バカスカ当たるっていっても結局は占いやろ。予知やないから、外れてる可能性だってあるわけやちゃ。占いの内容が重大であればあるほど、ズバリ断言してしまうんはためらわれるがやない?」

「なら、マジでハト君に告ったもん勝ちってこと? それって、千春子の考え過ぎじゃないのぉ?」

「そうかもしれんけど、かえちゃんや光城の女子に先越されたら、泣くに泣けんよ」

 千春子は、美晴子の心の奥底に、覇斗に対する淡い恋愛感情があることを見透かしていた。覇斗のファンに甘んじつつ、その実、このまま甘んじ続けたくはない── そんな美晴子の気持ちを汲み取って、千春子は彼女なりに妹を応援している。

 逆に美晴子も、自分の気持ちが姉に見抜かれていることを理解していた。だから、唐突な話題を振られても、美晴子は動揺せずに応じることができるのだ。

「あ、矛盾見っけ。光城の女子ってみんな、頭の中身からお尻までヘリウムガスの詰まった風船みたいに軽いって話じゃない? なのに今まで、ハト君が誰にもつかまってないってことは、結局……」

「みぃちゃんの言いたいことはわかるちゃ。やけど、それが正解とは限らんよ」

「なんで?」

 美晴子が唇を前に突き出す。

「ここにくる前、しんちゃん(※松之進のこと)に電話でリサーチをかけてみたらね、光城の女子の大半は、ハトちゃんのこと、ムリゲーと思っとって、初めから諦めとるがいと。やっぱ、いろんなところでレベルが違い過ぎて、気後れするがかね。一応、抜け駆け告白禁止協定みたいなんもあるみたいやけど、それ以前の問題やわ。──やからハトちゃん、今のところ誰からも言い寄られとらんがやないがかな」

「え、そうなのぉ?」

「少なくとも、りかちゃんの言葉の真偽はまだ確定しとらんちゃ。──ねえ、みぃちゃん、今の状況に甘えてのんびり構えとったらあかんよ。いつかダメ元で突撃してくる本気の子に、あっさりかっさらわれるかもしれんちゃ」

「マジ? ホントにそんな感じする?」

 うん! と千春子が大きくゆっくりと力を込めて頷く。

「── ハトちゃん優しいから、相手の真剣さによっちゃ 『まずはお友達から』 っでOK出しそうな気ぃせん?」

「あっ!」

 美晴子がと胸を突かれた表情を見せた。確かに、相思相愛でなければ付き合ってはならない、という法はない。千春子の想定は、覇斗ならば充分にありうることのように美晴子には思われた。

「泣いても笑っても先着一名様限定。それが的中するかどうかは置いとくとして、とにかく危機感は持ってた方がいいちゃ。かえちゃんだって、今はアレに夢中で安全牌みたいなもんやけど、いつまでもそうとは限らんよ。だって、ハトちゃんとはしょっちゅうハードなスキンシップやっとる仲やろ。それに根がシンプルやから、ふとしたきっかけでコロッといくことだって、考えられんわけじゃないちゃ」

「そっかぁ……。なかなか侮れないわね、それは……」

 美晴子は思わず天井を見上げた。楓のことも予想外の指摘だったのである。

 勿論、美晴子としても、楓と覇斗の関係は普段から大いに気になるところではあった。とはいえ、楓の普段の言動があまりにあんまりなので、滅多なことはあるまいと、ちょっと高をくくってもいたのだ。

「スプーンも落としとったしね」

「千春子はどうなのよぉ。スプーンならあんたも落としてたじゃない」

「あ、あれは気にせんといて。そりゃ、わたしだってね、正直ハトちゃんのこと、いいな、って思わんわけじゃないがよ。ちゅうても、さすがに『恋』ってとこまでは行っとらんちゃ。スプーン落としたんも、『あんなハイスペックで素敵な彼氏が大した苦労もなく手に入るんなら、取り敢えずキープしといて損はないかな』って、ほんの一瞬夢見たせいやから」

「あー、そのちゃっかりしたとこ、とっても千春子らしいわぁ」

「あかんけ?」

 千春子は愛嬌たっぷりの顔を僅かにしかめて、微妙に心外そうな顔を作ってみせた。

「──今のところ、たまたま出会った時にちょっぴりお喋りしたり、必要な時にスマホで連絡を取り合ったりはしとるよ。でもね、その程度でいきなり、大好きスキスキになるわけないやん。逆に聞くがいけど、みぃちゃんは、ハトちゃんのどこが気に入ったんけ? なんで教えてくれんが? 一目惚れけ? みぃちゃん、面食いやったっけ?」

「それは秘密」

 美晴子が、体育の前の手首の運動のように両手を激しく振りながら、はにかんだ笑顔でごまかそうとする。

「あーあ。こっちはかわいい妹の力になりたいだけなんに、何回訊いても回答拒否とは情けないちゃ」

 千春子が演技っぽくベソをかく仕草を見せた。

「ごめん。でも、無理なのよぉ。言葉にしてしまったら途端に色褪せてしまうことってあるでしょ」

「へえ、なんか、わたしの知らん大事な思い出があるんやね。──なら、いいちゃ。教えてもらえんでも、ちゃんとフォローはしてあげっちゃ」

「千春子……」

「そん代わり、せめてハトちゃんの目をしっかり見ながら普通に話せるように頑張らにゃ。そんぐらいできんと、慌てて告白して一旦はお情けで付き合ってもらえたとしたって、先は見えとるわよ」

「告白、って、あたしまだ……」

 千春子にシビアな視線を浴びせられて、美晴子がうろたえる。

「真剣に好きなんなら、はよ覚悟せんと。結局は告白するしかないがいよ。しんちゃんが言っとったわ。ハトちゃんが自分の方から誰かに交際を申し込むことはないんやと」

「なんでそんなこと、松之進が言い切れるのよぉ」

「何か理由を知っとるみたいやったわね。陰謀の香りがするちゃ」

「松之進め、人のいいハト君に余計なことを吹き込んだに違いないわぁ。あいつ、とっちめてやらなきゃ」

「待って美晴子。今は自分が変わることを考えなさい。さっきまではわたしもじっくり構えて事を進めるつもりだったけど、なんか状況がそれを許さないみたいだわ。いつまで経っても進展が見込めないようなら、ハトちゃんにアタックする権利、お姉ちゃんが貰うから。いいわね」

 千春子の突然の爆弾宣言と本気を窺わせる強い眼差しに、美晴子はたちまち気圧されてしまう。

「ちょっと、どうしてそうなるのよぉ」

 狼狽する美晴子に千春子は真顔でこう言った。

「嫌なら、不戦敗だけは避けること。わかった?」


続く

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[ 2016/06/30 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

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