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特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その11 (小説)

ブザーが鳴った瞬間、楓は落胆と怒りが入り混じった複雑な表情でモニターを見つめていた。


 そして、微かにホッとした顏をしたかと思うと、次の瞬間、もう不機嫌そうに眉を顰めている。目の前の現実をどうにも受け入れ難い様子だった。


「よう、もう喋っていいか?」

 松之進が律儀にお伺いを立てる。












投稿者:クロノイチ


「何よ。なんで、あんなゆっくりカウントするのよ! さっきの技あり、本気で数えたら一本取れたじゃない」

 楓は松之進の方を向きつつ、覇斗への不満をぶちまけた。

「俺はハトじゃねえからなんとも言えんが、恐らく、技ありを絶対確実にするためだと思うぞ。審判にちゃんと聞き取ってもらって、カウントを認定してもらわにゃ、そこで負け確定だからな」

「でも、今負けなかったってだけで、結局、二分の一の確率で決勝には出られないのよ。だったら、ちょっとぐらいリスクを冒しても突き進むべきじゃない?」

「あれ? お前、ハトから何も聞いてないのか?」

 松之進は不思議そうに楓の膨れっ面を見た。

「何をよ!」

「ハトは、途中から完全に引き分け狙いだったぜ。相手に主導権を奪われまいとして、とにかく攻めまくってはいたけど、絶対に決めてやろうって感じじゃなかっただろ。あんなズルイ手でビハインドを背負っちまった時は、結構泡を食ってたみたいだけどな。ま、最後は無事に帳尻が合ってよかったじゃねえか」

「ちっともよくないわよ。ジャンケンで負けちゃったら、それで終わりなのよ。消極的過ぎるわ」

「ホントに聞いてないみたいだな。いいか、よく聞けよ。ハトはジャンケンじゃ絶対に負けねえ。だから引き分けで良しとした。敢えて冒険する必要なんてなかったんだ」

「ジャンケンに負けない?」

 楓の口が半開きになる。

「ああ。ハトはとことんスゲー奴だ。今のあいつは、ジャンケンに関しては、間違いなく世界で一番強い。百万回やったら百万回勝つ。黙ってモニターを見てな。ハトが三連勝するぜ」

「そんな……」

 信じられないといった表情で、楓はモニターに目をやった。今まさに勝ち残りを決めるジャンケンが始まろうとしている。先に三本取った者が勝者となるルールだ。

 松之進の言葉が見事に的中する。覇斗はパーを三回連続出して、あっさりと三連勝。決勝進出を決めた。

「ホントだ。凄い……」

 もはや楓もただただ感嘆するしかない。

「偶然じゃないぜ。ま、あいこにすらならないっていうのは、出来過ぎだけどな」

 覇斗の勝利を断言していた松之進さえ半ばあきれ気味である。

「原理はなんなの?」

 楓が問い掛けると、松之進はしたり顔で、

「なんでも、心を無にして全身の感覚を研ぎ澄ませることで、相手の気配を読めるようになるんだそうだ。どんな手を出してくるのか、パッと頭に浮かぶんだってよ」

 と、でたらめを言った。後出しジャンケンをバラしてしまうと、覇斗の印象が悪くなりかねないと思い、とっさに庇ったのである。

「何それ。予知? テレパシー? 段々と覇斗君、非常識な存在になってない?」

 楓は疑う素振りすらなくコロッと信じ込んでしまった。相変わらずガキみたいに純真な奴だな、と松之進は少し羨ましく思う。


 さて、なんの見せ場も作れずに三連敗してしまったグレート・クマゴローは 「ウオオぉぉおおオオー!」 と叫びながら、悔しそうに試合台を拳で何度も殴りつけていた。相手の裏をかくつもりで、三連続のグー。結果としてバカみたいな負け方をしてしまった。今は、自分の出した手を後悔することしきりである。勿論、何を出そうとあいこが関の山で、どのみち勝ち目はなかったということを、当人は知るよしもない。

 ひとしきり悔しがった後、グレート・クマゴローは意外にサバサバとした様子で、覇斗と紳士的な握手を交わした。

「試合中の乱暴な言葉や手荒な行い、どうかご容赦ください。決勝頑張ってくださいね。健闘をお祈りします。── では」

そう言ってから、右の拳を頭上高く突き出す。

「北陸プロレス、サイコーーーーーー!」

 大声で会社の宣伝をして、グレート・クマゴローはダッシュで会場から去った。後から盛大な歓声と拍手が追いかけていく。

 プロだなあ、と感心しながら、覇斗は楓と松之進のいる選手控え席に戻ってきた。

「よお。なんとかなったな」

 いの一番に松之進が声を掛ける。

「辛うじてね」

 覇斗は苦笑いで応じた。

「楓にゃ、あれこれ説明しといたから、お前の方から言い訳する必要はないぞ」

「そりゃ、助かる」

「むぅ」

 楓はまたも膨れっ面をしていた。

「おい、楓さん、なんか怒ってるぞ。まっつん、なんか説明ミスってないか」

「いや、そんなはずは。── もしかして、俺が先にお前と喋ったからじゃないか」

「ち、違うわよ。そ、そんなんじゃないから」

 楓が慌てて否定する。わかりやすっ、と松之進は内心で叫んだ。

「── そ、そうだわ。あんた、なんでジャンケンのことあたしに言わなかったのよ。あんたが負けたらどうしよう、ってハラハラして損したわ」

「いや、だって、組み合わせによっては、楓さんと決勝以外で対戦することも考えられたわけで、そしたら引き分け狙いも有効な戦略になるだろ。要するに新しい技の一つということで内緒にしてたんだ」

「う。納得できたけど、納得したくない。グダグダと引き分けてジャンケンであんたに負けたんじゃ、不完全燃焼もいいとこよ。あー、決勝戦で当たってよかった。引き分けがなくてよかった」

「そうだね。僕らの戦いは一本勝ちの完全決着こそが相応しいよな」

 覇斗がそう言うと、楓も、うん、うん、と無駄に力を込めて同意した。

「会場の皆様」

 突然の場内アナウンスである。

「── 決勝戦の前に、選手のお色直しの時間を十分間いただきます。その間、モニターで今大会のハイライトをお楽しみください」

 覇斗と楓は思わず、自分の右手の親指を見た。激戦により、かなり絵が掠れてきている。スタッフが画材を運んでくると、部外者の松之進はサッとその場を離れた。

「恐らく、連戦になる僕に体力回復の時間をくれたんだな。ま、絵は原形を留めていないってほどじゃないけど、せっかくだから一回消して全部描き直すか」

 覇斗が左手を楓にさりげなく差し出す。掌を上にして。そこに楓が「お願いね」と囁きつつ、自分の右手を乗せた。
 
 観客席の方から一斉に 「おおぅ」 「やるぅ」 「なんてこった」 といった感じのどよめきが起こる。

「うわあ、衆人環視の中だってこと忘れてたな。こりゃ、恥ずかしいや」

「家族全員に見られてるあたしの方が恥ずかしいんだから。早く済ませて」

「う、うん。急いで描くよ」

 二人に好奇の視線が降り注ぐ中、覇斗が驚異的な画才を発揮する。楓の親指をキャンパスとして、瞬く間に豊かな黒髪の童人形が描かれていった。時間を掛けない分、今度は若干マンガチックにデフォルメされ、ちまちまと可愛い感じになっている。

「ありがと。じゃあ、今度はあたしね。うう。緊張する……」

「さっきみたいのでいいんだ。ファイト!」

 覇斗に励まされ、楓は頑張ってジョーズを描いた。皆に見られている恥ずかしさが先に立って、つい完成を焦ってしまう。その結果、少し失敗して前よりヤクザっぽい三白眼になった。

「うん。上手上手」

 覇斗の口から出たのはお約束のダジャレである。


続く

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[ 2016/08/23 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

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