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急かされてダイエット (ショート・ストーリー)

 いちいち書くのも面倒なのですが、基本的にこのブログ内のネタやショート・ストーリーに出てくる人物は、たとえ 「俺」 と書かれていようと 「僕」 と書かれていようと、全て架空の人物です。

 決して自分をモデルには、しておりません。 妻や子どもが出てきましても同様です。
 
 
 そう念を押したところで、以下をどうぞ。




最近とみに腹が出てきた。

 やはり四十歳を越えると、代謝が悪くなって脂肪をため込みやすくなってくるようだ。


 もう太鼓腹もいいところである。当然若い頃の服は着られない。

 自業自得とはいえ、上着から下着までみんな買い換えなければならなくなった。小遣いが乏しいので、この出費は結構きつい。
 
 それでも俺は、痩せたいとはこれっぽっちも思っていなかった。


 だって、根っからの運動嫌いだし。食事制限もつらいし。












投稿者:クロノイチ


 痩せるための我慢をするくらいなら、俺は生活の上で幾らでも痩せ我慢をしてみせる。

 そう誓っていたはずだった。なのに気付かぬ間に俺は、どうやら致命的な失言をしてしまっていたらしい。


 俺が会社から帰宅するやいなや、妻が俺に紙袋を差し出してきた。

「何だい、これは?」

「トレーニングウエアですわ。代金はあなたの来月のお小遣いから引いておきます」

「え? 俺頼んでないんだけど」

「運動するなら当然必要と判断しましたわ。── さあ、しっかり運動して脂肪を燃焼させましょう」

「ちょっと待って。どこからそんな話になった?」

 慌てて俺が妻に問いただすと、妻はふうっと溜息を吐いて残念そうに首を横に振った。

「あなたはまたそうやって、面倒なことから逃げようとする」

「いや、逃げるも何も……」

 まるで心当たりがない。

 とはいえ、「火のないところに煙は立たぬ」 ともいう。振り返って考えてみると、俺は結構、誤解されやすい言葉を意図せずに使ってしまう傾向がある。

 今回もどこかでうっかりダイエットを匂わせるようなセリフを言ってしまったのかもしれない。


「大丈夫。今回は私も協力しますわ。まずは痩せるためのプログラムを作って差し上げます。それを毎日きちんとやってくださいな」

「もしかして、君の『協力』というのは、ただ単に俺に運動を勧めるだけか?」

「それも芸がありませんわね。言い出した手前、ちゃんと 『協力』 しますわよ。─ ─さ、何はともあれすぐに着替えてください。思い立ったが吉日ですわ」

「やれやれ、いきなりだな」

 妻は言い出したら聞かないので、俺は不承不承トレーニングウエアに着替えることにした。紙袋の中にあったのは、ついぞお目にかかったこともない明るい茶色の上下。ダサい。ダサ過ぎる。これでジョギングに行けと? 


「俺が着たら、茶毛の豚っぼく見えないか?」

「全然見えませんわ。どちらかといえば牛ですわね」

「牛?」

「ジャージー牛」

「それが言いたかっただけか!」

 前フリが長過ぎる。しかもひねりがない。

「あら、あなたにはキチンと痩せていただきますわよ」

 妻は真顔で言った。

「── こんな感じでどうかしら。一つ。『あなたは私のプログラムに従って、毎日無理のない範囲で運動する』」

 ああ、もう反論は無意味だ。聞き入れるしかない。

「ノルマは低めにな」

「一つ。『目標を達成できなかった場合、夕食のご飯を茶碗半分とし、おかずを二品抜く』」

「おい」

「そういうことにすれば、どう転んでもあなたは痩せられます。引き締まった身体で痩せるか、不健康に痩せるかの違いはありますけど」

「むむ」

「そして、一つ。『あなたの食事を減らすことで浮いたお金で、私はおいしいランチを食べに行く』」

「何でそうなる?」

「あなたに頑張っていただくためですわ。私一人いい目に遭うのは、あなたも嫌でしょうから。意地でも運動して痩せてやろうって気になりませんか」

「う、まあな」

「全部、あなたのためを思って言っているんですからね」

 果たしてそうだろうか。

「あ、今、疑いの目── 『うたがアイ』 で私を見ましたね」

  わざわざ、そんな妙な言い直しをしなくてもいいのに。

「── いいですか。まず、あなたは痩せることによって、見た目が改善されるのみならず、お金のかかる冬服を買わずに済むという経済的メリットが得られます。そして私は昔のようなかっこいい旦那様を取り戻すことができる。よしんばそれがうまく行かなかったとしても、リッチな食事をさせてもらうことで、多少の満足感は得られるわけです。── つまり、どちらにとってもいいことずくめ。ウインウインですわ」

 ウインウイン? ── ああ、win-win ね。「波動砲エネルギー充填百二十パーセント 」の音かと思った。

「わかったよ。やってやろうじゃないか」

 俺は覚悟を決めて言った。

「でしたら、今日は軽いジョギングですわね。あなたは運動不足だから無理は禁物。徐々に運動量を増やしていきましょう」

「わかった。そうする」

「走りながら、たまにスキップを混ぜるといいですわよ。── 『スキップスキップ run run run』 ってね」

「できるかっ!」



 というわけで、俺は苦手な運動を毎日続けることになった。今のところ順調に俺はやつれ、妻は少々ふっくらとしてきている。

 ホント、ノルマが思いの外キツくてね。「無理のない範囲」 っていうのは 「倒れない程度」 って意味だったらしい。

 そうそう、思い出した。そもそもの切っ掛けは、あれだったのだ。「口は災いの元」とはよく言ったものである。


 あの日。

 ピチピチのカッターシャツのボタンを頑張って留めている俺を情けなさそうな顔で見つめながら、妻がこう言ってきた。

「あなた、だいぶお腹が出てきましたわね。ご近所で 『ハート様』 と呼ばれているの、知ってましたか?」

「何だよ 『ハート様』 って?」

 どうせデブキャラに決まっているけどな。ま、『ハート様』 ってくらいだから、性格はいいのかもしれないが。

「それはともかく、少しは痩せたらいかがですか? 肥満は大病の元ですわよ。いい加減手を打たないといけませんわ。そうでしょう?」



 強い口調で同意を求められた俺は、一瞬どう返そうか迷った。

 そして、話をはぐらかそうとして、とっさにこう言ってしまったのだ。


うん、どう しようかな」




おしまい

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[ 2016/12/14 23:46 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

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