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挑戦隊チャレンジャー・完全版 第二話「謎の戦神現る」 その1 (小説)

黒烏龍が大きな湯飲み茶碗になみなみと注がれた凍頂烏龍茶をすすりながら、悔しそうに言った。


 「茶飲み話といっても、負けちまった後だからなあ。愉快な話にはならんよな」


 「龍さんは特にコテンパンでしたからね。得意とする卑怯な闇討ちが全然通用しませんでしたし」
 
 玉露を煎れるための湯冷ましをしている最中の緑玉郎が辛辣な台詞を吐く。










投稿者:クロノイチ


「卑怯な闇討ちって言うな! あれは『ストリートファイト』という競技の中では一番スタンダードな戦法なんだよ。隠れ身、待ち伏せ、罠、環境利用、心理戦──ルールに反しない限り勝利を得るためのあらゆる手段が認められてる。まったくあいつが──コーヒー党副総裁・マンデリーンっていったか?──そいつの目に赤外線探知機能やらエックス線透視装置なんかが付いてやがるから……」
「卑怯な闇討ちがことごとくバレてしまったんですよね」
「卑怯じゃねえと言ってるだろがっ!」
「まあまあ、黒烏先輩」
 鴨見季彩がカモミールティーの入ったティーカップをテーブルに置き、仲裁に入った。


「ここは堪えてください。緑先輩も悪気があったわけですし」
「あったんかい!」
「せっかく好物のお茶を飲んでいるのに、なんかみんな暗いなあ」
 そんな感想を漏らしつつ、桃高びすかは特大のマグカップに入ったローズヒップティーをがぶ飲みした。元々彼女は、ローブヒップティーが他のどんなお茶よりも好きである。チャレンジスーツの名称が「ピンクハイビスカス」なのは、「ピンクローズヒップ」を名乗ると、何となく季彩にいちゃもんを付けられそうな気がしたからだ。


「ところで玉郎、一つ聞きたいが、何でいつもいつも大苦戦なんだ? 毎回必殺技は破られるし、通常技だと敵に傷一つ付けられない。明らかにチャレンジスーツの性能不足じゃないか。お前も天才を自認するなら、ちゃんとした仕事をしろ」
 今度は龍が玉郎に対して攻勢に出た。




「チャレンジスーツには、私の科学の粋を結集しているのですが、あの極薄のスーツに今以上の性能を乗せるのはかなり厳しいですね。これまでの戦いのように、運用面で工夫していくしかないでしょう」
「運用面って、ってあれか」
 龍はこれまでの戦いにおける必殺技の変遷を思い浮かべた。


 まずはコーヒー党幹事長代行・コスタリーカ戦。勝利を決めたのはスーパーチャレンジアタックに回転の力を加えた「スーパーチャレンジアタック・ファイヤートルネード」。
 次いでコーヒー党政調会長・グアテマーラ戦。いきなりスーパーチャレンジアタック・ファイヤートルネードを破られる。勝利を決めたのは、挑戦隊全員が学校の屋上に上り、そこから技を放つという「スーパーチャレンジアタック・ファイヤートルネード・超高空ダイビングボンバー」。
 その次は、スーパーチャレンジアタック・ファイヤートルネード・超高空ダイビングボンバーが全く通用しないコーヒー党総務会長・ジャマイーカとの戦いだった。全員の協力で火の玉の回転数を三倍に増やした「スーパーチャレンジアタック・インテンシブファイヤートルネード・超高空ダイビングボンバースペシャル」で辛くも勝利。しかし、そこへコーヒー党副総裁・マンデリーンが現れ、挑戦隊は手も足も出ずに敗走したのである。


「要するに、土壇場の機転に頼るわけか。限界が来てるぞ」
 龍が渋い顔で玉郎を見た。玉郎の眼鏡がキラリと光る。


「わかってます。おそらく全てのメカ怪人は、個々が得た情報を常に共有するような仕組みになっているのでしょう。勿論、我々の技の情報も。だからこそ、せっかく編み出した新必殺技が即座に分析され、攻略され、防御されてしまう。──ですが、これまでの戦闘データを解析した結果、メカ怪人の一体一体の性能は、まだ本格的に戦っていないキリマンジャロはさておき、コスタリーカからマンデリーンまで特に差がないことがわかりました。しっかり当たりさえすれば、スーパーチャレンジアタック・ファイヤートルネードの威力で充分マンデリーンを倒せるはずです」
「工夫の方向性を変えればまだ望みはあるってことか。必殺技の威力を高めることより、まず攻撃を当てることを優先する……」
 龍が、闇の中に一筋の光明を見たような表情を浮かべた。


「あのう、で、結局どうしたらいいんでしょうか。火の玉の中にいたんじゃ、わたしたちにできることなんて、そうないと思うんですけど」
 季彩が首を傾げながら疑問を呈する。


「うーん。楽しい茶話会のはずが、いつの間にか作戦会議みたいになっちゃったな」
 蚊帳の外のびすかは、つまらなそうにマグカップを置いた。ま、いっか、などと言いながらカバンからスマートフォンを取り出し、いじり始める。それを横目に見つつ、玉郎がしたり顔でこう答えた。


「安心してください。一つ、手を打ってあります。ただ、それが機能するかどうかは、紅さんが帰って来てからでないと何とも言えませんね。紅さんの動物的な勘に基づく作戦も捨て難いものがありますし、こっちの策が絶対的に有効だとは言い切れない面もあります」
「なるほど。一応、紅茶郎には実績があるからな。どこまでも自分勝手でムカつく野郎だが、絶体絶命の時には不思議と頼りになる」
「案外物事を冷静に見て、最適な判断ができる人なんですよね。一緒に戦っているとよくわかります」
 季彩は、紅茶郎には一目置いているようである。だが、龍は即座に首を横に振った。


「そんなふうに見えるだけだ」
「え?」
「あいつはいつも、自分が目立つことばかり考えてる。目立つためにとことん努力し、目立つために知恵を振り絞る野郎だ。普段はそれが見事に空回りしているんだが、挑戦隊のピンチの時にはちょうどいい感じに歯車が合う。目立つための思考が、挑戦隊全体が助かるための機転や判断に繋がっているわけだ」
「そうなんですか?」
「ああ」
「龍さんも似たようなものですがね。暴走しがちの分、結果が伴いませんが」
 玉郎が龍の短気と思慮の浅さをからかう。


「玉郎! てめえは弱いくせに、口ばっかり達者だな!」
「いえ。皆さんの足を引っ張る力も相当なものです」
 真面目な顔で玉郎は冗談を言った。


「足、引っ張るなよ!」
「すみません。幾ら体力は増幅されても、運動音痴はいかんともしがたく……。バリスタ相手ならまだしも、メカ怪人相手となると、敵の動きに反応が追いつきません」
 冗談を冗談と気付けなかった龍が怒りの形相を見せたため、玉郎は頭を下げ素直に謝った。そのしおらしい態度に龍の表情が和らぐ。


「そういや、玉郎はメカ怪人が相手だとほとんど棒立ちだったな」
「棒立ち……」
 スマートフォンの画面に見入っていたびすかが、無意識に反応した。


「びすか! 女の子が『棒立ち』なんていやらしい言葉使っちゃいけないわ!」
「え? あたし、今、何か言った?」
 突如として季彩の制止を受けたびすかが、わけもわからずあたふたと視線を彷徨わせる。


「だから、『棒立ち』って」
「ん? ──それって、何がいやらしいの?」
「えっ? 『棒が立つ』っていやらしくない?」
「全然。──季彩っていやらしくもなんともない普通の言葉を、勝手にヤらしく解釈するよね。それ、季彩がそういう言葉に敏感だからじゃないの? もしかして、ムッツリなの? エロ・カモミールなの? 人生エロエロなの?」
「違いますぅー!」
 季彩は手足をジタバタさせて必死に否定した。


「わたしは、びすかが下品な言葉に無頓着過ぎるから、少しくどめに注意しているだけです」
「行き過ぎよ! やり過ぎ! そう何度も何度もねちっこく責められたら、もう、あたし、おかしくなっちゃいそう」
「わー、びすか、そんなこと言っちゃ駄目!」
「は? どこが?」
「まあまあ、落ち着いてください」
 玉郎が見かねた様子で仲裁に入ってきた。


「桃高さん。ここは堪えてください。鴨見さんにも悪気はあったわけですし」
「ありません!」
「──というのは勿論冗談ですが、さて、鴨見さん。僕が思うに、あなたは、下品な言葉に対して少々独特なセンサーを持っているようですね。ですが、自分の感覚を桃高さんに押し付け過ぎるのはいかがなものかと。センサーの感度は人それぞれ、異なっていて当然なんですから。これを『センサー万別』といいます」
「いいません!」
 
忠告するような素振りで場を茶化すだけの玉郎に、季彩は冷やかな視線を浴びせた。


続く


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[ 2019/04/05 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

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