特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その12 (小説)

モニターにはちょうど準決勝第一試合のハイライトシーンが映し出されていた。

 
 窮地に立たされた楓が、大逆転の一本勝ちをもぎ取るまでの一連の場面だ。


「よく勝てたもんだわ。やっとやっとだったわね」

「お互い大苦戦だったな」

「二人とも決勝に出られて本当によかった。これであたしの願いが三分の一ほど叶ったわ」

 楓が感慨深げに覇斗を見る。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/08/26 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その11 (小説)

ブザーが鳴った瞬間、楓は落胆と怒りが入り混じった複雑な表情でモニターを見つめていた。


 そして、微かにホッとした顏をしたかと思うと、次の瞬間、もう不機嫌そうに眉を顰めている。目の前の現実をどうにも受け入れ難い様子だった。


「よう、もう喋っていいか?」

 松之進が律儀にお伺いを立てる。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/08/23 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その10 (小説)

覇斗の反則を示すホイッスルが鳴り響いた瞬間、楓は悲痛な叫び声を上げ、足をドンと踏みならした。


「何やってんのよ、もう!」

 
観客席から自分がどう見えるかなど、楓は全然気にしていない。キースが隣にいれば少しはおとなしくしたかもしれないが、彼は現在、観客席でのんびり観戦モードである。

「よう」

 不意に声を掛けられてびっくりした楓が振り向くと、スポーツドリンクを持った松之進が立っていた。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/08/20 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その9 (小説)

モニターを見つめる楓の目が潤んでいた。


 試合時間は残すところあと一分。観客の目には、覇斗がずっと先手先手と攻め続けているため、優勢のように映っているに違いない。


 だが、楓は気付いていた。覇斗の繰り出す技が一切通用していないことに。

(丹念に攻めれば押さえ込むまではそんなに難しくない。体格差はあるけど、覇斗君のスピードと技術ならできる。だけど、押さえ続けるのは無理かも。クール・サムライディングを事前に知られたのが致命的。あたしならテン・タップレットで技ありまでは持っていけそうだけど、覇斗君は 『諦めた』 って言ってたっけ。これって、打つ手なしってことじゃない)












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/08/17 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その8 (小説)

大画面モニターに試合のリプレイ映像が映し出されている。


 覇斗は、試合終了間際の攻防を大画面で食い入るように見つめていた。

 (やはり早口カウントを完成させてきたな。それにあのテンポの小気味良さは……) 

 
 高速思考を駆使してモニターを見つめる覇斗には、その間の画面の動きがスローになって認識される。

「いち・にっ・さん・し・ご・ろく・なな・はち・く・じゅっ」

 覇斗の記憶にある楓のカウントの声が、映像にシンクロする形でゆっくりと再生された。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/08/14 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その7 (小説)

ピィッ、と短くホイッスルが鳴った。審判によるポイント認定の合図である。


 同時に白旗が水平に上げられ、キースの技ありであることが示された。無論、試合は中断することなく続いているため、楓達が旗に目を向けることはない。


 だが旗の上がる気配で、一瞬キースの気が削がれた。

 ようやく技ありを取り、楓に先行したことで微かに安心したのかもしれない。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/08/11 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その6 (小説)

技の名は 「サムズアップ・ボンバー」。

 
 キースはまだ、大会においてこの技を一度も使用していない。予選も可能な限り泥仕合を演じている。全ては自分の実力を低く見せて、楓を油断させるためだった。


「レディ! ──ファイト!」

 審判の声とともに試合が開始される。楓は予選とは打って変わって様子見から入った。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/08/08 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その5 (小説)

選手の集合、大会の開催宣言、市長の挨拶、ルールの確認などを経て、各選手は自分が属するブロックへと散っていった。


 楓と覇斗が視線を交わし、互いの健闘を祈り合う。

 
 時を置かずして予選が始まった。会場を揺るがす歓声と溜息。時折吹き鳴らされるホイッスル。

 場内アナウンスが勝利者名を告げるたびに、観客席の一角は大いに盛り上がった。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/08/05 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その4 (小説)

開会三十分前。覇斗と楓は控え室を出て大会会場である大体育室に入った。


 スタンドの応援席の一角に、宮城家の人々の姿が見える。結構な人数だった。


 いつもの家族の他に覇斗が見たこともない人物も混じっている。楓に尋ねると 「東馬伯父さん」 だという。

 毎年、お盆休みを利用して帰省しているのだそうだ。今日は、東京から直接この大会会場にやってきた模様である。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/08/02 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その3 (小説)

「おっ、高柳ぃ、ここにおったんかぁ」

 
 唐突にドアがガララララッと開け放たれた。乱暴な声とともに現れたのは山のような大男である。


 虎縞の覆面。鍛え上げられた筋肉の塊のような身体。筆文字で 「巨魂!」 と書かれた白いTシャツ。黒いレスラーパンツに赤いリングシューズ。

 誰が見ても覆面レスラーそのものだった。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/07/31 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その2 (小説)

八月十日(日)

 
 遂に運命の日が訪れた。

 
 日の出とともに気温が三十度を越える猛暑。アスファルトに陽炎が立つ国道。雲一つない青空とそびえ立つ濃い緑の山々。

 そこかしこの休耕田に大輪のヒマワリが咲き誇り、アブラゼミのけたたましい鳴き声が雑木林に響き渡る。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/07/26 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第三章 マケナイデ、ゼッタイカッテ  その1 (小説)

八月九日(土) 

 
 月日は瞬く間に流れ、指相撲大会の前夜となった。宮城楓は自室の照明を灯したままベッドで仰向けになり、白い天井をただ見上げている。


 思うは明日のこと。そして高柳覇斗のこと。

 楓と覇斗の仲はこの二ヶ月近く、全く進展していない。楓が覇斗に恋心を抱く以前の友好的な師弟関係がそのまま持続している。

 とはいえ、楓が冷めてしまったわけでも諦めたわけでもない。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/07/22 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その18 (小説)

ふと、覇斗の脳裏に中学時代の苦々しい思いが蘇った。


 かつてクラスメイトの少女が彼への告白寸前に漂わせていた艶かしい雰囲気を、楓も唐突に身に纏い出したからである。


 顔を見ると、はにかんでいるようでもあり当惑しているようでもあり、熱に浮かされてボーッとなっているような感じでもあった。

 そして、その変化は仕草にも及んでいる。背筋を僅かに丸め、両手の指を胸の前で絡ませたりほどいたりを繰り返して、明らかに落ち着かない様子を見せていた。













投稿者:クロノイチ





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[ 2016/07/18 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その17 (小説)

「元々は 『諦めのいい自分』 を 『いざという時絶対に諦めない自分』 に塗り替えることを目指していたんだ。本来諦めるべきでないことでも、すんなりと諦めてしまえる── そんな自分に恐怖を抱いていたから。なのに、マイナーな競技を極めることばかり考えているうちに、最初の目的を見失ってしまってた」

「この景色を見て原点を思い出したのね」

「うん。本当の原点に立ち返ることができた」











投稿者:クロノイチ





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[ 2016/07/15 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その16 (小説)

六月十五日(土)

 
 この日、楓は普段よりずっと早く目を覚ました。午前五時。既に日は昇り始めている。


 外はまだ静かで、遠くでキジバトの鳴き声がする程度だ。窓から差し込む柔らかな日差しを浴びて、楓は大きく背伸びをした。

「ああ、気持ちいい」

 思わずそんな声が漏れてしまう。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/07/10 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その15 (小説)

六月十三日(木)

 
 たった今、日付が変わった。


 美晴子はベッドの中でなかなか寝つけないでいる。彼女は姉にハッパを掛けられたと感じていた。


 千春子にとって自分はかなりじれったい存在なんだろうな、と思う。傷つくことを恐れ、一歩前になかなか踏み出せない。取り立てて他人に誇るべきものを持たない彼女には、光城高校の女子の気持ちがよくわかる。

 美点の塊である覇斗に対して、どうしても引け目を感じてしまうのだ。

 自分と覇斗が肩を並べて歩く情景がまるで想像できない。このまま覇斗の一ファンとして、見守り応援していく方が自分には相応しいのではないかと思えてくる。












投稿者:クロノイチ






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[ 2016/07/05 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その14 (小説)

同じ頃、美晴子の部屋。パジャマに着替え中だった美晴子があっけに取られて硬直していた。


 千春子が、不意にノックもなく転がるように上がり込んできたからである。


「ええと、千春子、税務署の予告なしのガサ入れみたいにいきなり何かな?」

 いそいそと七分丈のパンツをずり上げながら、美晴子が訊ねる。

「聞いて聞いて。一大事やよ」

「何が一大事なのよ」

「さっき、いきなりピンときたんやちゃ」

「だから、何?」












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/06/30 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その13 (小説)

 旅館時代のカラオケラウンジを改装した地下一階の音楽室には、かつてのバーラウンジにあった国産のグランドピアノが半ばオブジェとして設置されていた。


 定期的な調律こそしっかり行われているものの、元々それほど高価な品ではなく、音色も響きもどこか浅い感じがする代物である。


 少なくとも覇斗が以前に軽い気持ちで弾いてみた時にはそんな印象だった。しかし今、そのピアノは、本来のポテンシャルを遥かに上回る重厚な音を響かせている。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/06/24 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その12 (小説)

「『ライトニング』 が好きなの?」

 
 検索したらこれもいっぱいヒットするだろうな、と思いつつ、楓はちょっとだけ皮肉っぽく尋ねた。


「だって速そうな感じがするだろ。事実速いんだ」

「どんなふうに速いの?」

「相手からしたら、『押さえつけたかと思ったら逆に押さえつけられていて、何が起こったか全然わかんない』 ってくらい」

「ムチャクチャ凄いじゃないの、それ」












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/06/18 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(2)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その11 (小説)

再び覇斗の部屋である。楓は中に入ってくるなり、深呼吸をし始めた。


 覇斗が理由を聞くと、「さっきびっくりしてまだ心臓がドキドキしてるから、落ち着きたい」とのことである。


「だったら、気分が落ち着くハーブティーでも飲むかい? 市販のブレンド品だけどね」

「いただくわ」

 ティータイムの間、二人は自分の好きな音楽について雑談していたが、そのうち覇斗が楓の相談を受ける形になった。













投稿者:クロノイチ





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[ 2016/06/12 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その10 (小説)

六月十二日(水)

 
 この日は楓が珍しく第二便のバスで帰ってきた。いつもより宿題が多いからという微妙な理由でピアノの自主練習を早めに切り上げてきたらしい。 しかし、あながち嘘でもないようで、午後六時に覇斗の部屋にやってきた彼女は、数学の問題集と筆記用具を持参していた。


「覇斗君。わからない問題があるんだけど、教えてくれる?」

 そう言って楓が開いたページに載っていた問題は、意外にも覇斗にとってそう難しくないものばかりだった。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/06/06 23:25 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その9 (小説)

午後十時。覇斗の部屋には既に速彦の姿はなく、替わって楓がやって来ていた。


 今日は楓が最終便のバスで帰ってきたため、指相撲に勤しむ時間はあまりない。ただ、昨夜の二人の間の取り決めで、たとえ数分しかできないとしても、練習は必ず毎日行うことになっている。


「ごめんね、遅くなって。その代わり、注文の曲はキチンと明日聴かせてあげるから」

「待ち遠しいな」

「先生のお墨付きよ。きっと凄いんだからね」

 楓はあたかも別人が演奏するかのような口ぶりで言った。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/06/02 02:14 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(2)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その8 (小説)

それは春休みに遡る。速彦と詩織は、朝食後のひとときを速彦の部屋でのんびりと過ごしていた。


 テレビのニュースがそろそろ終わりを告げようとしている。画面に市場の相場表が現れた。


「それでは、為替 の値動きです」

 その言葉を聞いて、速彦はちょっとした冗談を思い付いた。少し下ネタ風味であり、言い出すべきか一瞬迷う。だが、迷っているうちに、奥手な姉が恥ずかしがる様子をを見てみたい気持ちが頭をもたげてきてしまった。思い切って言ってみることにする。












投稿者:クロノイチ






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[ 2016/05/30 19:55 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(2)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その7 (小説)

午後六時。

 
 南花の部屋は予想に反して明るい純和室だった。覇斗は、もっと占い師の部屋っぽい、おどろおどろしいものを想像して戦々恐々としていたのである。


「バカやね。そんな部屋やったら、なーん、くつろげんやないけ」

 ガハハと豪快に笑いながら、真っ赤なムームー姿の南花は言った。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/05/01 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(2)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その6 (小説)

午後五時。

 
 宮城家の和風庭園は、旅館の庭園だったこともあり壮観である。


 池を中心として、岩を積み上げて造られた滝、様々な大きさや形の庭石、四季折々に異なる表情を見せる多彩な木々、地元の清流に住む岩魚やカジカが放流されている川── それらがダイナミックに配置された池泉式庭園で、あと三週間もすればアジサイが見頃を迎える。

 七瀬千春子と美晴子の姉妹が部活動をせず、第一便のバスで帰るのは、この庭園の管理をするために他ならない。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/04/21 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その5 (小説)

その頃、宮城楓は鳳凰台高校から徒歩一分の距離にある 「キースピアノ研究所」 という物々しい名前のピアノ教室に来ていた。


 今日は週に一度のレッスンの日である。


 教室の主宰者であるキース・リチャードソンは、楓の素質に惚れ込み、彼女を特待生として遇している。

 キースは現在四十五歳。ショートカットの金髪と青い瞳、モヤシのようにひょろりとした長身と、年がら年中着用している黒いカンフースーツが外見上の主な特徴である。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/04/18 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その4 (小説)

しばらくして生徒会室に現実の松之進が入ってきた。

 
 松之進は会計である。 「平野家は宮城家の一員であり、宮城家は金持ちであるから、会計を任せても、金に目が眩んで使い込むようなことはしないだろう。これぞ適任」 という学校側の考えによって推薦された。


 その考えはある意味確かに合っている。松之進は決して使い込みはしない。

 乱暴な口調とは裏腹に、純朴で真面目な男である。











投稿者:クロノイチ





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[ 2016/04/15 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その3 (小説)

朝礼のチャイムが鳴り、教室に担任が入ってきた。


 担任の名は宮城リツコ。言わずと知れた楓の母親である。


 同じクラスに松之進がいることを考えても、たまたまそうなったとは考えにくい。覇斗をサポートしようとする学校側の意図が見て取れる。

 リツコは、全身UVカット加工の衣類で指の先まで完全防備し、顔面も紫外線対策のファンデーションをゴテゴテに塗りたくっていた。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/04/10 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その2 (小説)

午前七時半、覇斗は平野松之進と連れ立って自転車で光城高校を目指す。


 二人の男子中学生も同じく自転車通学だ。

 
 マイクロバスは既に出発していた。三往復もする夕方と異なり、朝は一便のみの運行だ。

 バスに乗らない者は、家族や居候の自家用車に分乗し、各自の目的地に向かう。

 覇斗と松之進が一年一組の教室に入ると、友人の渡辺健司(わたなべ・けんじ)が早速 「よっ」 と言って擦り寄ってきた。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/04/08 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)

特大家族 第二章 リセットスイッチ その1 (小説)

六月十一日(火)

 
 宮城家の朝は午前五時より始まる。三階の仏間に家族全員が集合し、お参りするのだ。


 つまり各自の起床はそれより前ということである。

 
 この仏間は、かつて 「あかりや荘」 が法事の団体客を呼ぶために、旧大宴会場の隣に作ったものだ。

 どの宗派の法事にも対応できるよう、仏壇を置いておらず、大きな台の上に燭台と花瓶と香炉を置き、後は宗派ごとに大きく異なる本尊や仏具をその時々で交換して設置する造りになっていた。

 宮城家は代々阿弥陀如来を本尊とする宗教を信仰していたが、ミヤシロ電機の創業者である先々代の当主が一風変わった思想の持ち主で、その代から信仰の対象である本尊が別のものに置き換わっている。












投稿者:クロノイチ





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[ 2016/04/04 23:00 ] Menu:16 Anthony's CAFE 文化部 | TB(0) | CM(0)