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別館 第四幕 アフタースクール

 映画 『アフタースクール』 ブラボーでやんす!これ今年のベストワン。驚いた。

アフタースクールのポスター


 映画 『アフタースクール』 の例によって、Yahooの感想では、この映画に「騙された」とか、それが「快感だ」とかの感想があるのだけれど、すかす、わたすは、こゆ感想の人たちがまだ本当に騙されていることには全然気づいていないのではないかと、思ってしまう。

 映画はどんでん返しに次ぐどんでん返しで、ラストになって、ようやく、わたすたちは、そうゆうことだったのかと気づかされるのだけんど、この映画は、中学校の同級生が大人になって再会し、互いにどう変わったか(あるいはどう変わらなかったか)を確かめる映画でもあるのだが、この確かめるってことが実は本当はとってもあやふやなことだという、思いこみからくる誤解をシリアスに扱っている。

 シリアスとは、世の中は、自分がそう見るからそう見えるだけにすぎない。

 人はみなそれぞれに異なった世の中を(勘違いしながら)見ている、という大マジの真実・真理を、言及しているからなのだ。

 映画のラストのラスト、タイトルが終わった後に、テレビがニュースを報じている。

  わたすたちにそれまでの物語の結末がどうなったかを知らしめるためのニュースでもある。

 普段わたすたちはテレビからこのようなニュースを受け取っている。

 が、すかす、当事者でもないわたすたちはそのニュースの実体をほとんど知らない。
 
 が、それまでわたすたちがこの映画で語られていた事件に関連したニュースだから、わたすたちは、誰よりも、この同じニュースを見たどの他の人たちよりもよく事件の内容をよく知ってるはずだ。

 が、果たして、そうなのか?

 いんや、わたすたちは、実は、事件の内容をよく知りはしない。

 ただ、それまでの事情をある程度映画によって教えられてきたから、よく知っていると錯覚しているだけだ。

 なにも知りもしないのに、あたかも知っているかのように思ってる、わたすたち。

 この思いこみを知らしめるために、「アフタースクール」がある。

 それは、わたすたちが、テレビを見る「受け身」の姿勢では決して物事の真実は何も見えていないし、自分で勝手に想像で思いこんで、あいつは、こゆ人間だと間違って決め込んで、その実、実体はなにも知らない。

 知らないくせに知ったつもりでいる。


 ある意味、世界から「騙されている」ことを気づかせるための映画の騙し作戦にまんまと嵌ったことなのだった。

 
 この知的映画に乾杯!



投稿者: 今井 政幸 


『アフタースクール』 公式サイト




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第五十二幕 チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

びっくり仰天現代史     映画『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』


映画『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』 ポスター 国内版&海外版
映画『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』 ポスター 国内版&海外版


 ラスベガスで混浴を楽しんでたテキサス州選出の下院議員チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)がふとテレビを見ると、ソ連軍に侵攻されたアフガニスタンからのレポートで、ソ連軍と戦うムジャヒディンにインタビューしているものが映しだされていた。

 国防歳出小委員会のメンバーの一員でもあるチャーリーは、ワシントンに戻ると、事務方を呼びつけ、情勢を訊き、アフガニスタン支援の予算がたった500万ドルと知るや、すぐさま、自分の権限で予算の倍増を促した。

 チャーリーが指示した予算増額の件は、国家機密というに、チャーリーの選挙区の大富豪ジョアン(ジュリア・ロバーツ)の知るところとなり、反共主義者のジョアンはチャーリーをテキサスの自宅に呼びつけ、アフガニスタンに侵攻したソ連を撤退さすよう、すでに自分がセッティングずみの、パキスタン大統領との会談をチャーリーに促す。

 選挙区の大物後ろ盾であり、恋仲でもあるジョアンの申し出をチャーリーは断られず、しぶしぶ大統領(オーム・プリー)との会談に臨むが、将軍たちも交えた大統領との会談の場で、チャーリーは、現状に対するアメリカの無理解さをなじられ、よりいっそうの武器と資金の提供を要求される。

 大統領が用意したヘリに乗り込まされ、国境の難民キャンプでチャーリーが見たものは、母国から命さながら逃げて来た大量の人々があらそって食料を求める姿であり、ソ連が、とりわけ子供たちを狙ってばらまいた、おもちゃに似せた爆弾を拾って両手を失った少女の姿だった。

 すっかり打ちのめされたチャーリーは、帰国する機上の中で、CIAの担当役職を呼ぶよう、彼の美人秘書ボニー(エイミー・アダムス)に指示するが、翌日、チャーリーのもとにやってきたのは、問題児のため、局内でほされていたガスト・アブラコトス(フィリップ・シーモア・ホフマン)だった。

 下っ端CIAでは役に立たないと怒るチャーリーに、ガストは持参した上等ワインでチャーリーをなだめる。

 折しも、チャーリーの身辺に、先日のラスベガスで犯した、麻薬吸引嫌疑がかかってるとの極秘の報が届く。

 刑事事件の報に慌てた、チャーリーは、ガストを部屋からおいだすが、ガストは、とある方法で、そのチャーリーの慌てぶりの原因の一部始終を熟知するのだった。

 ガストの異能さを知った、チャーリーは、さっそくガストと組み、かくしてソ連軍撃退作戦の火ぶたが切っておとされました。

 この映画の物語は、事実に基づいていて、以後、映画が描く、チャーリーの果たした外交手腕、アメリカの介入をおくびにもださないで、アフガニスタンに武器を供給する方法は、国際「裏」舞台での仕組みを見事に暴きます。

 ソ連は、被害増大の結果、1989年にアフガニスタンから完全撤退し、ソ連が崩壊したのは1991年、アフガニスタン撤退から3年後のことでした。

 冗談みたいだけど史実の、ソ連を壊滅させた(かもしれない)、チャーリーとジョアンとガストの物語は、ガストが一生懸命チャーリーに言いたがる、塞翁が馬のエピソードが、結果、9.11でアメリカが手痛いしっぺ返しを受けたその後の史実を辿ると、決して看過できない、重みをもってわたしたちに迫ります。



 トム・ハンクスの誠実さとお気楽ぶりに目を奪われると足下をすくわれる、この映画は、わたしたちに世界戦略の裏の駆け引きを存分に教えてくれる一作でもあります。




投稿者: 今井 政幸


『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』 公式サイト



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第五十一幕 ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

見事に掘り出した人間の業    映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』

映画 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 ポスター 海外版&国内版
映画 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 ポスター 海外版&国内版

 ひとり地中から金を見いだしていた山師ダニエル・プレンビュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、やがて仲間たちと石油の採掘をはじめます。
 
 そんなダニエルに、金欲しさから、ポール・サンデー(ポール・ダノ)が、故郷の、有力な油田情報を持ち込んできます。

 半信半疑ながらも、情報を買ったダニエルが、さっそく教えられたサンデー牧場をリサーチすると、そこには、地震の影響もあってか、地表に石油が滲み出ていました。

 プレンビューは、すぐさま一帯を安値で買い占め、村人との採掘交渉もまとめ、アメリカ西部の小さな町リトル・タウンでの石油掘削が本格的に始まりました。

 リトル・タウンには教会があり、ポールの弟、イーライ・サンデー(ポール・ダノ:二役)が牧師で熱心に布教活動をしていました。

 イーライは、当初、息子H.W.(ディロン・フレイジャー)の健康保養のためとしたプレンビューの土地買い占め理由の嘘を見破り、教会への5,000ドルへの寄付を条件につけました。

 しっくりいかない、プレンビューとイーライとの間は、息子H.W.の治癒の件をめぐってや、海までのパイプライン延伸に必要な土地の所有者がイーライの信者であったことから、延伸許可の取得のため、不信心者のプレンビューにとって、屈辱的な教団入会受け入れなど、ことあるごとに対立します。

 この対立はやがて思わぬ形で噴出するのでした、・・・。

 映画は、地下に眠る金や石油を掘り当てるプレンビューの姿を子細に描くことで、プレンビューの持つ野心、強欲、不信心、人間不信、荒げた暴力、非人間性といった、人間の隠し持つ業の深さを丹念に掘り起こしていきます。

 計算され尽くした音楽が、登場人物の心情の内面を代弁するかのように見る者のイメージを掻き立て、映画に奥行きを与えます。

 がっしり組まれた緻密な骨格を持ったこの映画は、人間の奥深くに潜む業を見事に引き出し、善悪を超越したその業の圧倒的な凄まじさを前にしてわたしたちは思わず息を止めます。


 凄まじい力量を持つ映画「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」を堪能あれ。




投稿者: 今井 政幸


『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 公式サイト



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第五十幕 フィクサー

良心のめざめ      映画 『フィクサー』

映画 『フィクサー』 海外公開時のポスター



 冒頭、画面にかぶるナレーションは、弁護士アーサー(トム・ウィルキンソン)が、同僚マイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)に宛てた、彼のとった奇妙な行為の説明であり、心情吐露であり、信念の告白だった。


 農薬会社U・ノース社は、農民たちから訴えられた集団農薬訴訟の和解へと慌ただしく動いていた。

 新しく担当責任者となった法務部本部長カレン(ティルダ・スウィントン)は、テレビのインタビューへ受けるが、彼女のテレビインタビューのありさまと共に画面は、カレンが自宅でするインタビューへの念入りな下準備の様子までも映しだす。

 カレンが、首尾良く農民たちからの集団訴訟を乗り切ろうとしていた時、アーサーの、訴訟の大詰めの場でとった奇行がU・ノース社に伝えられる。

 アーサーは、雇われの立場でありながら、農薬会社の非を認め、農民たちに自分が彼らの側に立つことと、自分の清廉さを信用してもらうためにと、詰めの場で、衣服を脱ぎ、裸になったのだった。

 この唐突なアーサーの奇行は、事後処理係のマイケルを困惑させたし、アーサーのいいわけをすべて信じることも出来なかった。

 が、アーサーは死んだ。警察はアーサーの死を自殺と判断する。

 アーサーの死を不信に思ったマイケルは実弟の刑事に頼みこみ、独自に、違法な、アーサーの自宅を捜査する。

 マイケルに事件への疑念が沸いてきた時、マイケルはいきなり被害にあう。彼もまた狙われていたのだった。


 製作総指揮にジョージ・クルーニー。製作にシドニー・ポラックが名を連ねるこの映画は、一見社会派の様相をとりながら、しかし、映画が克明に描くのは、マイケルが対決するカレンの、緊張時にトイレに駆け込み、脇下の汗を気にする様子は、動揺を隠せない心の緊迫感の表れであり、罪悪感の表れです。

 カレンの、念入りな、テレビインタビューへの練習の様子。

 衣服を念入りにチェックし、人から自分がどのように見えるか気をくばるカレン。

 これらは、カレンの、内心、犯した罪悪におびえる気の小ささであり、アーサーが職務を放棄して、農民側の正しさを認めた良心のめざめにも通じます。

 カレンの脇下に滲み出た汗と共に重要な、詩的な、三頭の馬がのどかに放牧されているシーンは、東方の三賢人、東方の三博士をも連想させて、映画は、ありきたりな、社会派告発劇と一線を画して、誘惑に負けない、崇高な、人としてのあり方を主張します。

 
 飲んだくれで、マイケルの財産を食いつぶした、もう一人の、ろくでなしの弟に、最後は助けてもらうマイケルの複雑な心情をも的確に描写した映画「フィクサー」は渋さ満点!



投稿者: 今井 政幸


『フィクサー』 公式サイト



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第四十九幕 ブラックサイト

リアルな、インターネット社会への警鐘  映画『ブラックサイト』


『ブラックサイト』 ポスター


 捕まえてきた猫に仕掛けをほどこし、猫の様子をカメラで捉え、ネットで配信する。
 
 一見どこにもありそうなこのサイトが他と違うのは、アクセス数が増えたら、その分、罠が早く働き、ついには、猫を死に至らしめる仕掛けが施されていることだった。

 サイト名は、「killwithme.com」。

 アクセス数の増加によって、猫が死に至らしめられたこのサイトが次に映しだした標的は男性だった。

 縛られ、口をふさがれ、体を固定され身動き出来ない男性の胸は、killwithmeと切り刻まれている。そこには、サイトへのアクセス数の増加に比例して、抗凝血剤液の投与量が増す仕掛けが施されていた。

 事件発覚後、当局の無神経な発表もあって、サイトへのアクセス数はいっきに増加し、やがて、男性は、その一部始終を全世界から見守られ、死をむかえる。

 原題を、Untraceable(追跡不能)とするこの映画は、 インターネットが持つさまざまな利便性を逆手に取り、インターネットがたやすく犯罪に利用されることの危険性を描く共に、ネットの持つ、犯人の追跡不能性、そして、わたし達のネットの閲覧行為が、共犯行為となって、犯罪を促進するという、ネットの悪魔的仕掛けの実体を明かしてくれている。

 killwithme.com の開設者、オーウェンの犯行動機は、ネットの犯罪性を糾弾することであった。

 ネットの犯罪性とは、テレビクルーが偶然見かけカメラに収めた、とある人物の自殺を報じたテレビ画像が、ネットで貼り付けられたことで、自殺者の関係者たるオーウェンの心は深く傷いたのだが、そのオーウェンの傷の痛みを逆撫でするかのように、画像のコピーと貼り付けがあちこちのサイトで繰り返し行われ、いともたやすくに他人の不幸を広く世間に煽るネットの機能、そして、自殺画像を、まるで、楽しむかのように繰り返しサイトにアクセスする無神経な者のアクセス行為だった。

 オーウェンが仕掛けた、アクセス数の増加によって死が早まる、という装置は、実は、ネットの機能の持つ犯罪性と、興味本位の好奇心とか、殺人に荷担したいがためとか、理由はどうあれ、結果的に、killwithme.comにアクセスすることで、人を死に至らしめているネット閲覧者の持つ犯罪性を厳しく諫める装置でもあった。

 しかし、物語は、中途、オーウェンのこの復讐劇、復讐理念から外れ、殺人者オーウェンを追うFBIネット捜査班へ向けられたオーウェンの犯行へと変わる。

 映画は、ネット犯罪を監視するFBIサイバー捜査官ジェニファーを軸に語られている。オーウェンの逸脱した復讐心は、ジェニファーの同僚グリフィンを襲い、やがてジェニファーをも襲う。

 この作品のあちこちに散りばめられた異様な猟奇性がネットの異常さを的確に浮き上がらせてもいるが、復讐心に燃えたオーウェンの癒しがたい心の傷が、FBIサイバー捜査官に向いた本末転倒さから、映画は、B級アクション映画の枠内をついぞ抜け出せなかった。

 ジェニファーが誇らしく、ネット閲覧者に掲げたFBIバッチに、制作者の、閲覧者は物事を正しく判断せよとの願いとメッセージが込められてはいるが、この映画の醍醐味は、繰り返し、繰り返し、オーウェンが標的としたジェニファーの家を、あたかもねめ舐めるかように、カメラが静かにゆっくりパンするシーンにある。

 音も立てず、無言で、ただじっと、繰り返し、ジェニファー家を幾度も写し撮るカメラ。

 これが、オーウェンが、なによりも糾弾せずにはいられなかった、ネット閲覧者が内心に持つ犯罪共犯者の犯罪性の正体そのものであり、映画は、唐突に、音量がアップするシーンを巧みに挿入することで、音も立てず覗き見てる閲覧者を、諫めてもいるのだった。



投稿者: 今井 政幸


『ブラックサイト』 公式サイト



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第四十八幕 つぐない

罪と贖罪       映画 『つぐない』



映画 『つぐない』ポスター



 創作力・想像力が共に旺盛な、タリス家の13歳の少女、ブライオニー(シアーシャ・ローナン)は、じき友達ポール・マーシャル(ベネディクト・カンバーバッチ)を連れて家に帰ってくる兄リーオン(パトリック・ケネディ)に演劇を見せようと、戯曲を執筆中です。

 ブライオニーがふと手を休め、窓の外をみやると、姉のセシーリア(キーラ・ナイトレイ)が、タリス家の使用人の息子ロビー・ターナー(ジェームズ・マカヴォイ)の前で、下着姿になって、噴水に飛び込む様子を見てしまいます。咄嗟に、見てはいけないものを見てしまったとブライオニーは慌てて身を隠します。

 使用人の息子ながら、ロビーは、タリス家から奨学金を出してもらい、セシーリアと同窓のケンブリッジに学びました。将来は医学の道をめざしています。

 そんなロビーは、母が磨いていた銀食器が用意されたタレス家の晩餐会に招待されています。

 昼の、セシーリアとのふとしたいさかいの詫びに、ロビーは詫びの手紙を書き、直接セシーリアに手渡せない後ろめたさから、途中であったブライオニーに手紙を託します。

 その手紙の中身は、詫びの文面のとは別に、ロビーが戯れに書いた、セシーリアへの熱烈な性的思いが綴られていたものでした。これを、ブライオニーは、すぐさま、盗み読みしてしまうのでした。

 セシーリアはロビーを好いていて、昼の二人のいさかいも、ロビーのつれない様子に苛立つセシーリアの思いからでした。屋敷で出会った二人は、すぐさま、図書室で、求め合います。

 そんな姉のロビーへの熱い思いを知らないブライオニーは、ロビーがセシーリアと体を重ねている姿を目撃してしまうのでした。

 事件は、そんな中で起きました。

 ライオニー達の従兄弟たち、ローラ・クィンシー(ジュノー・テンプル)や双子の弟たちが、親の離婚が元で、タリス家に引き取られていました。

 タリス家での泊まりも飽きた双子は、両親の元をめざしタリス家から逃げ出します。

 一同が慌てて晩餐を打ち切り、双子を捜索するという騒動のさなか、ローラが何者かによって襲われたのでした。

 偶然、その現場を目撃したブライオニーは、警察に、犯人の名を告げます。ブライオニーが警察に告げた名は、ロビーでした。

 状況証拠に、ロビーの卑猥な手紙も警察に差し出されます。

 ロビーが、ようやく、双子の弟たちを見つけて帰って来たとき、ロビーを待ちかまえていたのは警察でした。

 ブライオニーの偽証によって(後に、ブライオニーは、その場で見た犯人の顔を思い起こすのですが)、ロビーとセシーリアは裂かれました。

 牢獄に送られたロビーは、刑期短縮のため、おりしも始まっていた第二次大戦の戦場の最前線に志願して行ったからです。


 映画は、多感で、想像力たくましいブライオニーの誤解を、同じ場面を、視点を変えて、二度繰り返すことで、ブライオニーの内面の様子をも描くことで説明しています。

 幾度か同じ場面が繰り返えされる技法は、映画全体にも及び、最後の最後、わたすたちは、制作者による、心憎い、ブライオニーの気持ちを代弁する、ロビーとセシーリアへのつぐないを目にします。

 それは、後に作家となったブライオニーがようやく本当に自身で自覚出来た、自分が犯した、取り返しのつかないあやまちへの、せめてものつぐないでもありました。

 噴水に飛び込むセシーリア。川辺で犯されるローラ。ダンケルクで船を待つロビー。ロビーの気を惹こうと川の中に飛び込むブライオニー。海辺の家で戯れるロビーとセシーリア。


 水が、死のイメージを連ねてもいて、贖えきれない罪の重さを暗示する、映画「つぐない」は、味わい深い作品です。



投稿者: 今井 政幸


『つぐない』 公式サイト



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別館 第三幕 映画 『クロサギ』の評判が悪いにゃ

 たすかに、クロサギのシロサギを騙す痛快さを求めて映画館に行った観客にとってはブルータスごっこ、シーザーごっこは、引くもんな。

 わたすも引いたひとりなのだが。

 知人の分析によると、映画「クロサギ」は、文学なのねん。 人がどう生きるべきかをテーマとした作品。

 若造のまんだ人生の何かをも知らない山下智久が、百戦錬磨の山崎努、竹中直人に挑む物語。

 人生には、裏切りと、裏切りによって向かえる死がある。 人はなぜ生きてきて、どう死んでいくか。

 シロサギの竹中直人は、さんざん、人を騙したあげく稼いだ大金をカリブで豪遊するために使う。

 大金は、豪遊のために使うべきものなのか?

 なんとみみっちい、しみったれたことなのやら。

 そのシロサギを決して許さないクロサギ山下智久が竹中直人を欺しにかかる。

 他人を欺くシロサギは欺されて当然という思想だ。

 すかす、シロサギとクロサギとの欺しあいは、一歩間違えたらクロサギの命取りとなる真剣勝負だ。

 だから、裏切りのブルータスと、裏切られるシーザーだ。

 裏切られたシーザーに待ち受けてるのは、死。 シロサギを落とせないクロサギには死が待ちかまえている。

 素人芝居の舞台セットに設えられた棺桶の中に横たわって、山崎努は、待ちかまえている「死」を山下に教える。

 山崎がセットの棺桶をネタに、棺桶に横たわったり、出たりしてるのは、死と生を暗喩する象徴のシーン。

 山崎はむろんしたたかさを十分に持ちながらも、生と死を遊んでいる。

 山下の失敗の前には死が待ちかまえているのだが、詐欺師シロサギをどうしても許せないクロサギは果敢に竹中を追い落としにかかる。

 山下はせいいっぱい、クロサギ家業に専念することでしか、人生を生きていけない。

 山下がせいいっぱい力の及ぶ範囲で生きて行くことは、豪遊三昧にあこがれるシロサギの人生を否定することだ。少なくとも。

 人がその人生をどうせいいっぱい生きていくかの生き方はひとそれぞれ違うだろ。

 クロサギ山下が選んだ人生は、シロサギ竹中を追い落とすことだったということ。

 むろん、山下が失敗したら、そこに待ちかまえているのは、ブルータスに裏切られたシーザーが入った棺桶だ。

 生と死との狭間に立たされたクロサギの生き様を、文学的に、暗示した映画なのだが、ま、山下に魅力がもうひとつ足らなかったかね。



投稿者: 今井 政幸


映画 『クロサギ』 公式サイト

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第四十七幕 マイ・ブルーベリー・ナイツ

ポップスと映像美のコラボが魅せる   映画 『マイ・ブルーベリー・ナイツ』


マイ・ブルーベリー・ナイツ ポスター



 失恋したエリザベス(ノラ・ジョーンズ)が、彼が立ち寄ったカフェのオーナー、ジェレミー(ジュード・ロウ)に、不要になった彼のアパートの鍵を託そうとしたことから、二人の会話が始まりました。

 いつしか瓶の中に溜まってた数多くの鍵の、一つ一つにある別れの物語を、ジェレミーはエリザベスに語り聞かせます。

 失恋に傷ついたエリザベスは、「すべての出来事には理由がある」として、自分の責めます。が、ジェレミーは、いつも売れ残るブルーベルー・パイをたとえに、結果は、偶然でしかないと諭します。

 道一本隔てた向こう側に渡る勇気がないため、エリザベスは、遠回りして、向こう側にいくことに決めました。

 車を買うお金を稼ぎながらの、エリザベスのアメリカ横断の旅が始まりました。

 メンフェス、エリ、ラスヴェガス、ヴェニス・ピーチ。

 アメリカ横断の旅は、エリザベスの傷心旅行であり、自分探しの旅でもありした。

 旅先で出会った人たちから、エリザベスは、他人を通して自分の姿を見いだします。

 そんな自分の気持ちや旅の印象を、エリザベスは、手紙に書き綴ってジェレミーに送ります。

 飲んだくれの交通警官のアーニー(デヴィッド・ストラザーン)と、別れた彼の妻スー・リン(レイチェル・ワイズ)との凄絶な愛情。

 他人の言葉を信じない、カード賭博のレスリー(ナタリー・ポートマン)から伝授される人の心の読み方。

 出会った人たちから触発されたエリザベスは、やがて自分自身を取り戻し、ニューヨークで、渡れなかった向こう側へも行ける自信がつくのでした。

 ノラ・ジョーンズ「ザ・ストーリー」、キャット・パワー「リヴィング・ブルーフ」、ライ・クーダー「エリ・ネヴァダ」、オーティス・レデイング「トライ・ア・リトル・テンダネス」、ルース・ブラウン「ルッキング・バック」、ライ・クーダー「ロング・ライド」、メイヴィス・ステイブルズ「アイズ・オン・ザ・プライズ」、続木力「夢二のテーマ」(ハーモニカ・ヴァージョン、梅林茂作曲)、エイモス・リー「スキッピング・ストーン」、ライ・クーダー「バスライド」、カサンドラ・ウィルソン「ハーヴェスト・ムーン」、ハロー・ストレンジャー「ザ・デヴィルズ・ハイウェイ」、グスタヴォ・サンタオラージャ「パハロス」、キャット・パワー「ザ・グレイテスト」。

 ウィン・カーウァイが、数多くの中から選んだ曲が、斬新で、絵画的で、シュールな映像にうまくマッチするこの映画は、写実で客観的なフィルム画面と、心情的な音楽を掛け合わせて、奥深い、内容のある会話で、現実の痛手を負った失恋から、新たな一歩を踏み出す女性が、偶然出会った新たな恋物語です。


 カウンター越しの、奇妙な、ぎこちないキスシーンが、勇気と希望を与える、映画「マイ・ブルーベリー・ナイツ」はお洒落な映画です。



投稿者: 今井 政幸


『マイ・ブルーベリー・ナイツ』 公式サイト






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第四十六幕 アメリカを売った男

スリリングな心理劇   映画 『アメリカを売った男』


『アメリカを売った男』米国上映時のポスター  『アメリカを売った男』国内上映時のポスター
米国上映時のポスター                       国内上映時のポスター


 2001年2月18日、FBI特別捜査官ロバート・ハンセンがスパイ容疑で逮捕された事実を元に、その逮捕に至った経緯が克明に描かれたこの映画は、終始、スリリングな緊迫感に満ちています。

 ロバート・ハンセン(クリス・クーパー)を追い詰めた、ライアン・フィリップが演じるFBI捜査官のエリック・オニールが、この映画の原案者です。

 内情をすべて知る当事者が映画製作に加わったことから、映画は全編、相手の胸の内を互いが互いを探りあうリアルな心理劇になりました。画面には緊迫感がみなぎります。

 エリックが、ロバート逮捕のために選ばれたのは、コンピューターの専門知識があることや、積極的に上部に企画立案を提出する野心さが買われてのことでした。

 冒頭、映画は、配属前のエリックの仕事ぶりを描きます。

 次に、家庭でのエリックが妻と二人で、戯れている姿が描かれます。

 妻のジュリアナ(カロリン・ダバーナ)の頭を撫でるエリックの、たわいもないくつろぎのひとときです。

 そんなところに電話が鳴ります。

  妻はエリックに、「出ないで」と頼むのですが、エリックは受話器を取ります。

 これが、ロバート逮捕に向けてエリックを専任する呼び出しの電話でした。

 この、冒頭、わずか数ショットのシーンが、映画のエッセンスをみな凝縮しています。

 この映画は、ロバート逮捕に至る些細なFBIの活躍の描写とはうらはらに、ロバート逮捕のためにエリックの家庭が壊されていく過程を詳細に描いた物語でもありました。

 信心深いロバートは、気の乗らないジュリアナをも日曜ミサに誘い込み、エリックの身辺調査のため、妻ボニー(キャスリーン・クインラン)と同行で、エリックの家に押しかけます。

 食事時間に遅刻のエリックがとっさのついた嘘を聞き逃さないジュリアナは、ロバートに振り回されるそんな有様に爆発して、エリックに、与えられた使命がなにかを問い詰めるのでした。

 映画の中で、ロバートがスパイとなった動機やいきさつが細かく語られることはないので、史実マニアにはもの足らなくもありますが、事件を通して、エリックが最終的に出した、家庭の平和とやすらぎのための結論は、互いの腹の中をさぐりあうスパイ行為の無意味さを突いて秀逸です。

 人智が到達する前途に明るい希望を見いだす、映画 『アメリカを売った男』 は見事です。



投稿者: 今井 政幸


『アメリカを売った男』 公式サイト






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第四十五幕 ワンピース THE MOVIE エピソード オブ チョッパー + 冬に咲く、奇跡の桜

泣くな、おまえはひとりじゃない  映画 『ワンピース THE MOVIE エピソード オブ チョッパー + 冬に咲く、奇跡の桜』

 仲間はずれの、赤い鼻のトナカイならぬ、青い鼻のトナカイのチョッパーの物語です。

 航海士ナミが原因不明の高熱で倒れてしまい、医者を求めてルフィ海賊団が辿り着いたのは、年中雪が降るドラム島でした。

 海賊を拒絶するこの島に、なんとかようやく上陸を許してもらったものの、この島にいる医師はただ一人だけでした。

 Dr.くれはは、ドラムロッキーの頂上にある、かつてのワポル国王の居城に住んでいて、気が向いた時にだけ町に降りてきては人々の病を直しますが、莫大な治療費を要求するため人々からは魔女と呼ばれ、怖れられていました。

 ルフィはむろん、途中に待ちかまえる、どう猛なラパーンなどもものともせず、サンジと共にドラムロッキーをめざします。

 辿りついたドラムロッキーの居城に、Dr.くれはの助手として医者となるべく治療を学んでいたのが、チョッパーでした。

 今回の、あまりにも有名なエピソード オブ チョッパーは、国王ワポルによって、国中の医師が医師狩りにあったため医師不足に悩む島のありさまを通して、医療に生きる、Dr.くれはや、今は亡き、チョッパーの唯一の理解者だった、Dr.ヒルルクの信念が描かれています。

 それは、Dr.ヒルルクが体験した、かつて、美しい桜を見て自分の不治の病が完治したことから確信を抱いた、病の治癒には、まず心を癒すこと、というものでした。

 ルフィたちが、ナミを連れ、ドラムロッキーに辿り着いたとき、かつて、海賊の襲撃を受けた時、いちはやく国外に逃亡した国王ワポルが、兄ムッシュールと共に、島に戻ってきました。

 ムッシュールは、体内に毒性の胞子を育てていて、胞子爆弾を打ち上げることで、島中に猛毒をばらまこうと企んでいたのです。

 青鼻ゆえに仲間はずれの身から、ヒトヒトの実を食べ、人間の能力を身につけてしまったため、かえって、トナカイ仲間、人間の両方から気味悪がられ、孤独にいたトニー・トニー・チョッパーが、Dr.ヒルルク、Dr.くれはによって、医学の知識を得、海賊ルフィに、気に入られ、ついには、海賊団の仲間となったいきさつが綴られた映画 『ワンピース THE MOVIE エピソード オブ チョッパー + 冬に咲く、奇跡の桜』 は、涙なしでは見られない!



投稿者: 今井 政幸


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第四十四幕 ノーカントリー

映画 『ノーカントリー』 ポスター


アメリカの困惑と苦渋   映画 『ノーカントリー』

 
 狩りの帰途、モス(ジョシュ・ブローリン)が偶然見つけ、持ち帰ってきた大金は、いわくつきの金でした。

 現場の状況から事情を察したモスは、妻カーラ(ケリー・マクドナルド)を実家に追いやり、自分はすぐさま逃亡を図ります。

 殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)が、大金の回収の仕事を請け負ったことが、モスの災いの元でした。

 誰にもシガーを止めることが出来ません。

 シガーの依頼主でさえも。


 シガーを行く手を阻もうとする者は、容赦なくシガーによって抹殺されていく、これがこの映画が観客に仕掛けた罠です。

 シガーのあり方を、観客がどう形容しようが、シガーがひるむことはいっさいありません。

 究極の絶対さ、これがシガーの意味するところです。

 シガーは人であって人ではありません。彼は不死身です。

 シガーの異様さを承知して、ベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)はカーラに、牛の屠殺時の喩え話で身の危険への注意を促しますが、シガーの異常な拘り方は桁外れです。

 有無を言わさず、情け容赦なくシガーは殺人を重ねていきます。

 シガーによる死から逃れられる唯一のチャンスは、コイントスです。コインの表か裏か、運よく当たればシガーはなにも手出ししません。

 しかし、シガーから与えられたこのコイントスのチャンスでさえ、拒むことは出来ません。

 かかわる者はみなシガーに強要される、これがシガーと人々との関係のあり方です。

 シガーの過ぎ去った後に残る、ベル保安官の脱力感と絶望は、妻に、見た夢の隠喩として語られます。

 雪の森で父の姿を追う、ベル保安官(=アメリカ)に、希望が残されていることでしょうか。


 アメリカの困惑と苦渋を表出させた映画 『ノーカントリー』 見事です。



投稿者: 今井 政幸


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第四十三幕 バンテージ・ポイント

交差する視点が織りなす綾  映画「バンテージ・ポイント」

 スペイン・サマランカ、マヨール広場。午前11時59分。

 米大統領の演説のTV中継のため、女性プロデューサーのレックス(シガーニー・ウィーヴァー)が、幾つものモニター画面を見ながら、各現場からの映像を切り替えています。

 台本通りに読み上げないレポーター、不必要にデモをとり続けるカメラマン。さっそく本社から飛んでくるクレーム。

 それらにすばやく応対しながら中継を続けるレックスは、ステージに向かう大統領を警護するシークレットサービスの中に、バーンズ(デニス・クエイド)の姿を見つけました。

 「1年前、大統領を護って撃たれたのに、もう現場復帰とは・・・」。

 レックスは、すぐさまスタッフにバーンズが狙撃された当時の映像を準備させ、モニターに映し出し、確認します。

 マヨール広場では、サマランカ市長による米大統領の紹介がすみ、大統領の演説が始まりました。

 すると、大統領に銃弾が2発。

 撃たれた大統領は、ステージに倒れ込みます。

 騒然となる中継車内、レックスは、慌ててレポーターを呼び出しますが、レポーターはショックで声も出ず、中継になりません。

 アンカーマンに切り替え中継をやりくりすると、広場の外から、爆弾音が。

 騒然となった広場から人々がいっせいに逃げ出すと、ステージが大爆発し、映し出されたカメラには、死んだレポーターの姿がありました。

 レックスが呆然と立ちつくし、やむなく、その映像をモニターから消すと、スクリーンの画面は、ビデオの巻き戻しのように逆回転し、時間が戻り、午前11時59分、シークレットサービスのバーンズは、同僚のテイラー(マシュー・フォックス)と共に、大統領の警護につくところでした。

 <「羅生門」の子供たち> と呼ばれるこの映画は、こんな風に、大統領暗殺現場に立ち会った8人の視点から見た大統領銃撃の様子が、繰り返しその都度巻き戻され、少しずつ、事件の全貌が明らかにされていきます。

 TV中継車の中のいくつものモニター画面のように、それぞれに異なる位置から映し出された事実の映像が、やがて一つの真実を明らかにしていきます。

 が、A級映画 『羅生門』 と違って、「バンテージ・ポイント」はB級娯楽映画ですから、それぞれの人たちによる、それぞれの視点からの食い違い、錯綜した現実の不可解さが描写されているわけではありません。

 幾分しつこくも感じられる、巻き戻しの繰り返しは、着実に、事件の全貌を明らかにしていきます。

 観光で偶然広場に居合わせたアメリカ人旅行者ハワード(フォレスト・ウィッテカー)の撮ってるビデオカメラに映し出された人たち。

 サマランカ市警察官エンリケ(エドゥアルド・ノリエガ)とその恋人ベロニカ(アイレット・ゾラー)、ベロニカが接触するハビエル(エドガー・ラミレス)。

 映画は、中継車の中にあるモニターによって表象されるいくつもの視点と、撮影行為者ハワードによって結びつけられる人たち(ハワードのビデオカメラに収められた人物群と、撮影行為者ハワードと接触する人たち、サムと名乗るスアレス(サイード・タグマウイ)と少女アナ)を基軸に、偶然が織りなす綾を巧みに構成していきます。

 ハワードを介しての人々の偶然の結びつきがなかったら、映画の結末は違ったものになったやもしれません。


 映画「バンテージ・ポイント」、B級映画のクリーン・ヒットです。



投稿者: 今井 政幸


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第四十二幕 デイ・ウォッチ

パンクがはじけ飛ぶ   映画 『デイ・ウォッチ』

 前作『ナイト・ウォッチ』の続編です。


 やはりアントン(コンスタンチン・ハベンスキー)同様異種で、いまは、光の側のナイト・ウォッチとなったスヴェトラーナ(マリア・ポロシナ)の実習教育で、二人が街のパトロール中、本部から、被害報告が届きます。

 二人が現場に急行すると、犯人は、しこたま老婆から、生き血を吸ってる最中でした。

 仕事熱心なスヴェトラーナは、犯人を追います。犯人は、いくつもの薄闇の段階を容易に通り抜け逃げ去ります。

 負けじとスヴェトラーナが追います。スヴェトラーナはすでに、アントン以上の能力を持ち、アントンが入り込めない薄闇の段階をらくらく乗り越えていくのでした。

 追いついたスヴェトラーナが犯人の覆面の帽子を剥いだとき、犯人はイゴール(ディマ・マルティノフ)でした。

 が、スヴェトラーナはイゴールが誰かを知りません。イゴールはアントンの実の子でした。

 慌てて、アントンがスヴェトラーナを制止したことで、イゴールは逃げていきます。証拠の帽子を残して。

 証拠の帽子が残ったことで、イゴールは協定違反の罪で抹殺されてしまいます。

 進退窮まったアントンは、闇の側のガリーナ(イリーナ・ヤコヴレヴァ)から、証拠の帽子を奪うようそそのかされ決行するのですが、何者かの手によって、ガリーナは殺されるでした。

 アントンに嫌疑がかけられたことから、アントンは、ゲッサー(ウラジミール・メニショフ)が指図するままに、オリガ(ガリーナ・チューニナ)と体を入れ替えます。

 が、スヴェトラーナとの外食中、アントンはさらに事件に巻き込まれ、絶体絶命の窮地に立たされます。

 そんな中、アントンの頭の中に浮かんだのは、思いをかなえるという「運命のチョーク」でした。

 中世、ウズベキスタン東部サマルカンドにある迷路のような城の中にあった運命のチョークは、名将ティムールによって、奪われました。

 以後、チョークはひそかにこの世のいずこかに存在していました。

 チョークを追ったアントンは、推理をめぐらし、そのありかを突きとめます。

 イゴールを想うアントンは「イゴール」と書きます。すると、イゴールは現れるのですが、・・・・。

 前作、『ナイト・ウォッチ』の鮮烈な映像で、ファンを熱狂させたティムール・ベクマンベトフが、再び放つ「デイ・ウォッチ」は、前作以上にパワーアップした映像で、光と闇との衝突による破壊力の凄まじさをわたしたちに見せつけます。

 アントンが妻との復縁を願い女魔術師の訪れた年、1992年は、ソ連邦が崩壊した1991年12月25日の翌年を意味します。

 映画には出てきませんが、この映画の共同脚本も担当したセルゲイ・ルキヤネンコの原作『ナイト・ウォッチ』には、闇の特徴を利己的、自由を求める、としてて、光の側が持つ利他的性格と対比させています。 (3つのエピソードからなる原作の最初のエピソード1が映画『ナイト・ウォッチ』で描かれていて、今回の 『デイ・ウォッチ』はエピソード2の話を元に、エピソード3に出てくる、運命のチョークの部分を取り入れています。が、原作は、アントンとイゴールとは親子ではありませんし、アントンが女魔術師に妻の復縁を依頼する設定はありません。)

 『ナイト・ウォッチ』と共に、 『デイ・ウォッチ』もまた、1992年を軸に物語は展開しています。

 ソ連邦崩壊によってロシアを襲った、彼らのアイデンティティの確認。 これが、原作と映画のモチーフです。

 善でも悪でもない。そのありようによって、ただ、光と闇として言葉に置き換えるだけの、別々な世界のあり方の対立とその衝突がもたらす破滅。

 この後に控える『トワイライト・ウォッチ』によって、3部作の映画は完結します。

 が、すでに原作からはみ出した3部作映画の結末は、セルゲイ・ルキヤネンコの原作『ナイト・ウォッチ』をなぞらないことでしょう。

 原作にはない、闇の側のザヴロン(ヴィクトル・ヴェルズビッキー)の愛人アリサ(ジャンナ・フリスケ)がコースチャ(アクレセイ・チャドフ)に寄せる熱情は、イゴールとスヴェトラーナとの間で引き裂かれるようになったアントンが、ようやく見いだした最終的な解決策の後、スヴェトラーナに振り返ったアントンの中にも、通じたものがあったことでしょう。

 はちゃめちゃはじけたポップ映像でパンクを爆発させた映画 『デイ・ウォッチ』、異才の手による映画です。



投稿者: 今井 政幸


『デイ・ウォッチ』 公式サイト




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別館 第二幕 ナイト・ウォッチ

 現在公開中の映画 『デイ・ウォッチ』 を紹介する前に、前作にあたる『ナイト・ウォッチ』のあらすじをざっと、おさらいしましょう。

 1992年のモスクワ。男と駆け落ちした妻との復縁を願うアントンは、女魔術師のもとを訪れます。

 女魔術師はアントンの願いを聞き入れますが、妻のお腹には赤ちゃんがいました。

 お腹の赤ちゃんはどうするのか、女魔術師はアントンに問うと、赤ちゃん(イゴール)が自分の子供ではないことから、アントンは、赤ちゃんを殺すよう依頼します。

 しかし、良心の呵責を覚えたアントンは、魔術のさなか、魔術を止めるのでした。

 術をいきなり止めさせられた女魔術師が狼狽してるところに、ナイト・ウォッチが踏み込んできます。

 人間界に生きる異種。魔術師、バンパイアなど超能力を持つ者は、光と闇とに分かれ、数世紀にわたる戦争を続けてきました。

 このまま戦い続けたら、滅亡すると悟った両者の代表、光の側のゲッサーと闇の側のザヴロンは休戦協定を結びます。

 以後、平和を守るため夜の番人(ナイト・ウォッチ)は闇の者を、昼の番人(デイ・ウォッチ)は光の者の協定違反を監視することで、均衡は保たれ、この世の平和は守られて来ました。

 女魔術師の違反行為を咎めるため、ナイト・ウォッチが部屋に飛び込んで来た時、アントンには、人間なら見ることの出来ない、女魔術師を取り押さえるナイト・ウォッチたちの姿が見えました。

 アントンもまた異種でした。

 12年後、光の側のゲッサーによりナイト・ウォッチとなったアントンは、仕事に駆り出されます。

 アントンは、指示された少年(実は殺されずにすんだイゴール)を注視するなか、地下鉄の中で、呪われたスヴェトラーナに出会います。

 アントンは、応急処置で、スヴェトラーナにかけられた呪いを解こうとしますが、呪いは強力で、解けません。

 「災いを招く乙女」。スヴェトラーナは、彼女が世に現れたとき、「偉大なる異種」が誕生すると予言された伝説の女性でした。

 かくして、光と闇との均衡を破る「偉大なる異種」が誕生する、というのが、「ナイト・ウォッチ」の物語でした。



投稿者: 今井 政幸


→ 『ナイト・ウォッチ』公式サイト



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第四十一幕 潜水服は蝶の夢を見る

エロスとタナトス    映画「潜水服は蝶の夢を見る」

 脳梗塞で、全身マヒとなった男性の物語です。

 彼の名はジャン=ドミニク・ボビー。仏ファッション雑誌『ELLE』の編集長でした。

 映画に脚色はありますが、実話です。

 ジャン(マチュー・アマリック)が意識を取り戻した時、病室に医師がかけつけ、彼の容態を確認します。

 目にライトを当て、瞳孔の様子をみ、眼球の動きを確かめ、瞬きさせ、質問します。

 ジャンは答えます。

 が、医師には聞こえません。

 ロックト・インシンドローム。

 ジャンの脳と末梢神経をつないでる脳幹に脳血管発作が起こったため、全身の骨格筋が麻痺したのでした。

 耳は聞こえ、目も見え、意識は鮮明ですが、体はいっさい動きません。声もでません。

 かろうじて、左目のまぶたを動かすことだけは出来ました。

 医師は、さらに、ジャンの体の不具合を見つけます。

 ジャンの右目のまぶたは、閉じたり開いたりしませんでした。

 係が呼ばれ、角膜潰瘍防止のため、ジャンの右目は縫われ、閉じられていきます。

 そんな状態のジャンに、美女があらわれると医師は確約して帰ります。

 やって来た、そそる美女、アンリエット(マリ=ジョゼ・クローズ)は、言語療法士でした。

 ジャンが唯一自在に動かせる左目のまばたきを使って、ジャンとのコミュケーションの手段を見いだします。

「はい」は、瞬き一回。

「いいえ」は、二回。

 次に、「E、S、R、I、N、・・・」といった、使用頻度の多い順に並べられた変わったアルファベットを順に読みあげ、ジャンが瞬きをすることで文字を選び、単語が完了したら瞬きを二回。

 これで、ジャンは文章を作り、アンリエットとの会話が出来るようになります。

 試しに、促されて、ジャンが綴った言葉は、「死にたい」でした。

 相手役が一方的にカメラに向かって話しかけるというユニークな撮影方法が、身動きとれないジャンの不自由さと、しかし、しっかり冴えてる意識とのギャップに苦しみ、自らの閉じこめられた状態を「潜水服」と譬える自虐的なジャンの心理を伝えます。

 希望のまったく見えない病状の中で、アンリエットがジャンにもたらした伝達手段は、ジャンの意識を変えます。

 記憶と想像力。

 これが、ロックト・インシンドロームのジャンに残った、瞬きの他に、ジャンの思うように自在となるものでした。

 ジャンの精神は、記憶と想像力と瞬きで、文字を綴ることで、蝶のように、自由に、潜水服から抜けだし、宙を舞います。

 映画は、実在のジャンが、20万回の瞬きで書き上げた『潜水服は蝶の夢を見る』(原題は『潜水服と蝶』)を元に、ジャンの病状や、自伝風なジャンの姿を描くのですが、監督が仕掛けた生(エロス)の女神たち、言語療法士アンリエット、理学療法士マリー(オラツ・ロペス・ヘルメンデイア)、ジャンの想像力で画面に登場する、ジャンが収容された北フランス、ベルグの病院の命名者、ナポレオン三世の皇妃ウジェニー(エマ・ド・コーヌ)によって昂揚していくジャンの気持ちと、海の上にしつらえられた台の上で、一人、車椅子に取り残され、身動きとれない、ジャンの現状を暗喩したシーンが、生きながらのジャンの死(タナトス)を暗示させ、深みさを帯びます。

 決して愉快さを喚起させないシリアスなジャンのリアルな病状を描くこの映画が、それでも、わたしたちの目を惹きつけるのは、のっぴきならない現実の潜水服の中から、誰もが、蝶のように自由にはばたきたいと思う、生への切なる願いが、静かに感動を呼ぶからかもしれません。

 
 わたしたちに、生の存在意義を問う「潜水服は蝶の夢を見る」、不思議な映画です。



投稿者: 今井 政幸


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第四十幕 エリザベス ゴールデン・エイジ

意志と運命の狭間に  映画『エリザベス ゴールデン・エイジ』

 前作に続く二作目『エリザベス ゴールデン・エイジ』が描くのは、大国スペインがイングランドに襲いかかったアルマダ海戦の危機です。

 大国スペインのフェリペ2世(ジョルディ・モリャ)は、信奉するカトリック教をヨーロッパ全土に広めようと、各地で圧力をかけていました。

 異教プロテスタントの国、イングランドもまた、虎視眈々とフェリペ2世に狙われていました。

 バージン・クィーンのエリザベス(ケイト・ブランシェット)には、各国からの縁談話が舞い込みますが、直裁なエリザベスに気に入る相手はおりません。

 そんな中、教会に向かうエリザベスの前に出て、突然マントを敷いた男性がウォーター・ローリー(クライヴ・オーエン)でした。

 ローリーに興味を持ったエリザベスは側近のベス(アビー・コーニッシュ)をローリーに近づけさせます。

 新大陸に戻りたいローリーも、エリザベスに、新大陸から持ち帰った品々を披露してエリザベスへの接近をはかります。

 エリザベスが女王の座にあるとはいえ、軟禁状態にあるスコットランド女王メアリー・スチュアート(サマンサ・モートン)は自分こそがイングランド女王であると主張しましたし、国内には、半数のカトリック信者がおり、メアリーと通じエリザベス暗殺を企てる動きがありました。

 そして、エリザベスに銃口が向けられます。

 エリザベスの前に立ちはだかる運命の嵐は、人並みの男性への恋にあこがれるエリザベスの意志をたやすく打ち砕き、大国スペインの大軍を擁しての参戦は、エリザベスの自信を挫けさせます。

 そんなエリザベスが命運のよりどころと頼る占星術師の謎めいた助言がエリザベスを奮い立たせます。

 嵐に遭うとある人は逃げる。が、ある人は、嵐を利用して、より高く舞い上がり、嵐に向かって行く。

 占いがぼんやりながらも教え示すようにすでに命運が定められているとして、その先に自身の破滅が待ちかまえてるやもしれぬそんな時、どうエリザベスは意を決し、なにを国民に叫んだのか、歴史がいまのわたしたちに教えてくれるものに限りはありません。


 意志と運命の狭間の中で、賢明な指導者が見せた幸運を堪能あれ。



投稿者: 今井 政幸


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第三十九幕 ラスト、コーション

スリリングな男女関係 映画「ラスト、コーション」

 戦時下の中国が舞台です。

 日中戦争が始まり戦火が各地で広がり、女子学生ワン・チワチー(タン・ウェイ)は香港に逃げ伸びてきます。

 ワンは、親友に誘われたことがきっかけで、転入先の香港大学の演劇部に入部します。

 ワンがヒロインとして舞台に立った反日愛国劇は、好評を博します。

 演劇部を率いるクァン・ユイミン(ワン・リーホン)は、反日劇による愛国心昂揚だけではもの足りず、実際の行動を起こしたがっていました。

 当時、中国には、日本との和平を拒否する重慶の蒋介石の国民党政府の他に、国民党政府内で、副主席の汪兆銘が蒋介石と対立していることに日本が目をつけ、汪兆銘をトップに据えて仕立てた、日本の傀儡政府が上海にありました。

 偶然、クァンが、香港で再会した幼なじみが、日本の傀儡政権のスパイのトップ、イー(トニー・レオン)の元で働いていることから、クァンはイーの暗殺を思いつきます。

 クァンは、ワンを貿易商人の夫人、マイ夫人に仕立て、イーへの接近を試みます。

 ワンが化けたマイ夫人の機知に富んだ聡明さは、イー夫人の信頼を勝ち取り、マイ夫人の美貌は、やがてイーを魅了していくのです。

 暗殺すべくイーに近づいたマイ夫人の正体が、イーに見破られるようなことがあれば、ワンの命はありません。

 イーに自分の正体が悟れないよう、しかも、がっちりガードされている、イー暗殺のチャンスを窺えるよう。
 ワンをものにしたいイーとの男女の駆け引きは、幾層も複雑に交錯し、ワンのイーへの思いも複雑に、しかも微妙に変化していきます。

 それは、唐突なイーによる誘いから始まった幾回かの逢瀬の濃密なベッドシーンに表現されています。

 イーによってリードされていたワンは、いつしか自分がリードする立場に変わりもします。

 非常時に、ふとしたきかっけで出会った二人が交わした情愛は皮相な状況の中で結実していきます。

 終映後、なにも映っていないスクリーンの中に、とめどもない寂寞感を覚えたら、あなたは、アン・リー監督の仕掛けた一級のロマンスに浸ったのでしょう。

 スリリングな、映画「ラスト、コーション」、体に毒な映画です。



投稿者: 今井 政幸


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休憩 その2 「キネマ旬報ベスト・テン 表彰式を見てきたよ」の巻

 2月5日、有楽町朝日ホールで、キネマ旬報の「第81回キネマ旬報ベスト・テン 第1位映画鑑賞会と表彰式」があっただす。

 応募はがきを出して、招待券をしっかとゲット。パチ、パチ、パチ。

 表彰式は、一位となった作品賞に、監督賞や脚本賞、主演男女優賞とかの個人賞の表彰をやるのでがんす。

 式は6時半から。仕事を終えて、地下鉄の銀座駅にば。

 数寄屋橋方面から地上に出て、マリオンに。11階に上がったところに、有楽町朝日ホールがありまする。わたす、これで、4回目。

 いつもは、休日に表彰式をやってたのさ。

 で、表彰式と併せてやってくれる一位映画の鑑賞会の、文化映画がわたすのお楽しみ。

 ところが、今回は、平日に式をやるから、『ひめゆり』が見られない。ぐそー。なんてことするんだ、文化映画が楽しみだったのにぃ。


 「もうすぐ映画が終わりますから(日本映画一位の「それでもボクはやってない」をやってたのだ)ロビーでお待ちください」と言われたので、ホール右手の通路に腰をかけてたら、スタッフに案内されて、加瀬亮・三浦友和の両人が、目の前を通り過ぎて行きますた。

 前の方に偶然空いてた席をみつけますた。見やすい位置ですた。

 司会は、フジテレビの笠井信輔アナウンサー。わたすが、表彰式を見だしてから、ずっと、この人が司会だす。

 去年見た150本の中で自己の一位は『トランスフォーマー』、と宣言して式は始まりますた。

 最初は、日本映画作品賞。『それでもボクはやってない』。製作のアルタミラピクチャーズの人がトロフィーを受け取ります。

 当初、企画段階で、劇場公開が可能かどうか、めどが立たないところに、フジテレビが企画にのってくれてようやく劇場公開にこぎつけたと言ってますた。

 次に、外国映画作品賞。『長江哀歌(エレジー)』だす。配給のビターズ・エンドの人が、ジャ・ジャンクー監督のメッセージを代読します。

 「私は思うのです。映画は今もなお、私たちが自由を捜し求め、またお互いを知り、認め合う最良の方法なのではないか、と」

 で、文化映画作品賞は『ひめゆり』。 ロシアから式に間に合って帰ってきた、ジーンズ姿の柴田昌平監督がトロフィーを手にします。

 企画会議もなにもなく、ただ撮りたくて、13年間フィルムを回した成果が認められて嬉しい。DVD化はしないで、ホールでの上映活動で上映していく、と言ってますた。

 個人賞のトップは、周防正行。監督賞、脚本賞、読者選出日本映画監督賞を受賞しますた。

 『それでもボクはやってない』は当初、社会派作品と言われ、そう呼ばれることで、特定の人だけが見に来る、敷居の高い作品と思われるやもと危惧していたら、中途から、エンターテイナーの作品と呼ばれ始めた。

 自分のどこにエンターテイナーの才能があるのか分かっていれば、ヒット作をいくつも作れるのに。今度、いつ、次回作が作れるか分からないけど、職業は監督だと思ってる、と日本映画界の現状をちくりと刺していますた。

 主演女優賞は、『サイドカーに犬』『クローズド・ノート』『ミッドナイトイーグル』により竹内結子。

 白のドレスが鮮やかです。スタッフに謝意を述べますた。

 主演男優賞は、『それでもボクはやってない』『オリヲン座からの招待状』により、加瀬亮。

 作品に支えられた受賞と思うので、今度は、自分の力で受賞したい、とコメントしますた。

 助演女優賞は、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』により、永作博美。

 気持ち短めのドレスは、黒だす。『腑抜けども、悲しみの愛を見せろで』の演技が評価されたことが、今後の参考になると言ってますた。
 
 助演男優賞は、『転々』『松ヶ根乱射事件』『ALWAYS 続・三丁目の夕日』により、三浦友和。

 去年、出た映画は6本あって、それらの合わせ技でこの賞を受賞できたと思ってる。まだ、俳優をやっていけるということなのだろう、としぶーい口調で語りますた。『転々』の友和はいい!

 新人女優賞は、『転校生 さよならあなた』『バッテリー』により、蓮佛美沙子。スタッフ・監督・事務所に謝意を述べますた。

 新人男優賞は、『バッテリー』により、林遣都。一語一語、噛みしめるように、スタッフに謝意を述べますた。

 この受賞対象の『バッテリー』は、15億3千万円も稼いだヒット作だわさ。わたすは、キャッチャー役の山田健太くんがサプライズで登場して欲しかったなぁ。

 読者選出外国映画監督賞は、『善き人のためのソナタ』により、フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。

 配給のアルバトロス・フィルムが代わりに受け取りますた。監督のメッセージはいま発売の決算特別号に掲載されているから、割愛して、カンヌ映画祭で、『善き人のためのソナタ』と出会って、この作品をなんとか日本で公開したいと思ったことが今回の受賞に繋がり嬉しい。これからも良い作品を日本に配給したいと喜びの言葉を語りますた。

 ちなみに、フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督のコメントは、「私は日本映画、美術、デザインから大きな影響を受けました。この映画の成功によって得た特典のひとつは、東京で1週間過ごす機会を得たことでした。森タワーの最上階からの眺めは今まで見た中で最も美しい風景でした。この美しさ、すべての構成や秩序、輝き、光が人の手で作られたことを考えて、自然に涙を流しました。観る人にこの畏敬の念を感じさせるものを、微力ながら創り出すことが、私の映画を作る理由なのです。文化の中心としての東京は、私を謙虚な気持ちにさせてくれます。ありがとうございました。」

 
 今年も、面白い映画にいっぱい出会えるかもかも。



投稿者: 今井 政幸






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第三十八幕 母べえ

責任のあり方  映画「母べえ」

 太平洋戦争前夜。思想犯として検挙された夫をもった妻と子供達の物語です。

 映画はラスト、場面は現代に変わって、母べえの臨終のシーンで終わります。

 場違いとも思える、現代場面の挿入。これが、映画の要点です。


 いつまでもいっこうに解決出来ない泥沼化した日中戦争は、次第に、人々の気持ちを、中国の後ろ盾にいる米英との直接対決への道も当然とする方向に誘導します。

 そんな時勢の中で、日中戦争を聖戦どころか失敗策とする野上滋(板東三津五郎)は、治安維持法違反で逮捕され、投獄されるのでした。

 父を逮捕された一家(野上佳代:吉永小百合、初子:志田未来、照美:佐藤未来)に、父のかつての教え子山崎徹(浅野忠信)が駆けつけ、以後、一家の精神的な支えとなっていきます。

 しかし、国賊、非国民として扱われる父を、犯罪者と思いもしない家族は、周囲とのギャップや一家に無理解な佳代の父(中村梅之助)に悩まされ、やがて、片耳が聞こえないため兵役を免れていた山崎にも赤紙が届きます。

 そんな忌まわしい過去がすべて精算ずみであるかような現代。

 静かに、佳代に死期が迫っていました。

 病院からの知らせで、照美(戸田恵子)が病院に駆けつけます。すでに虫の息の母に、照美が声をかけ、佳代が、答えます。

 近くにいる初子(倍賞千恵子)には聞き取れません。照美が佳代に代わって、佳代の返事を初子に伝えます。

 そのシーンに、滋の詩の朗読が重なって映画は幕を閉じます。

 佳代を苦しめる者は、いったい、誰だ、という詩です。

 ほとんど誰もが戦争に傾斜し、傾倒し、戦争反対者を、国賊、非国民とののしった時代は敗戦で終わりました。

 そんな、国をあげての戦争突入を容認した人たちが、戦争反対者を牢獄に送った責任を、物静かに、しかし、鋭く、この映画は糾弾しています。

 「母べえ」をこんなにも苦しめたのは、誰だ。

 わたしたち観客の誰もが、滋に答えなければならない一番重要な「現在」の意味かもしれません。



投稿者: 今井 政幸


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第三十七幕 やわらかい手

壁と穴  映画『やわらかい手』

 孫の渡航手術費用に大金が必要となったおばあちゃん、マギー(マリアンヌ・フェイスフル)は、職業案内所で高齢のため斡旋を断られます。

 途方に暮れたマギーが、ふと見ると、シャッターに「接客係募集 高給」の張り紙が。すぐに、マギーは地下の店に入っていきます。

 店のオーナーのミキ(ミキ・マノイロヴィッチ)が応対します。

 「知っているのか?うちの商売を。接客係がどんな仕事か」

 「お茶を入れたり、テーブルを片づけたり、そういうことです」

 「うちでの‘接客係’は婉曲表現だ」

 ミキはマギーに、接客係が売春婦を表す遠回しな言い方であることを教え、マギーに、マギーがどんな売春婦かを問い糾します。

 ごく普通の? 変態専門? 特別なワザは?

 むろん、ミキはマギーがごく普通の主婦であることを見抜いています。

 ‘ファック’という言葉すら言えない、年もいってる、ミキが、マギー不採用の理由をあげていったとき、ミキは、マギーの、きれいではないが、なめらかな、すべすべした掌に目をとめました。

 性風俗店‘セクシー・ワールド’。

 ミキの店は、ミキが東京で見た日本式の ラッキー・ホール* の仕掛けをいち早くロンドンで取り入れた店でした。

 壁越しの穴から、男性のなにがなにして、こちら側でマギーが手でなにをする(詳しい説明は省きます)あのラッキー・ホールです。

 ミキから説明を聞いたマギーはそうそうに店を退散します。

 が、孫の命がかかっていました。

 次の日、意を決したマギーはミキの店を訪れたのでした。壁にある小さな穴を通してのマギーの仕事。

 このラッキー・ホールの仕掛けが、映画のポイントです。

 映画 『パリ・テキサス』(1984年 ヴィム・ヴェンダース監督作品。独・仏 合作)での半透明の仕掛け。男の側からは相手の女性が見えて、女性側からは男性が見えないあの仕掛けのように。

 壁は、人間同士の意志の疎通を拒む障壁の謂いでしょう。

 穴は、人間同士の気持ちが互いにうまく通じ合う意味合いです。

 子供のはかない命を按じて落胆していたマギーの息子トムは、渡航費用の大金を工面した母が、工面先を固く口閉ざすことをいぶかります。

 母と妻サラとの中に入って、なにかと二人の間を調整していたトムに、母への不信感がめばえ、やがて、トムが母の勤め先を知ったとき、トムは怒りを爆発させるのでした。

 肉親の間で生まれた不信感の壁。

 映画は、マギーと嫁、マギーと友達、マギーと仕事仲間、マギーと息子、といった、マギーといろんな相手との間にある壁と穴との関係を、交互に幾度も繰り返し見せてくれます。

 その交互の繰り返しの中で、最後の最後にマギーが自分で見いだした、見事な意志の疎通。


 寒々とした冬の季節に暖かい心が通いあう、映画「やわらかい手」。
見事です。


*編集部・注:参考記事 → 『ラッキーホール/Anthony's PENTHOUSE 07.06.03』 <R-13>



投稿者: 今井 政幸


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